活動報告

第15回あいち経営フォーラム(分科会)

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第6分科会 | 第7分科会 | 第8分科会 | 第9分科会 | 第10分科会
第11分科会 | 第12分科会 | 第13分科会 | 第14分科会

第1分科会

魅力ある経営者とは?

~経営姿勢の確立で全社的実践
山口 雅樹氏  (株)中部テクノ(名古屋第2青同)

山口 雅樹氏

2代目として社業に邁進していた山口氏。入社当時は金さえ稼げれば良し、社員にも給料を与えておけば良しの考えで経営していました。

同友会入会後もその考えは変わらず、会員の仲間から「そんな考えでは社員はついてこない。私ならそんな会社で働きたくない」とまで言われるものの、理解できなかったそうです。

ある日、将来を期待していた社員に辞めたいと言われ、給料を上げて引き留めようとしましたが、「金ではない」と言われました。その後、ある会員企業の会議の様子を見て、社員に対する考え方が変わったといいます。

魅力ある会社には魅力ある経営者が大前提であり、経営者に魅力がなければ魅力ある会社にはなりません。

報告と討論の中で、自社での経営者としての魅力とは何かを学べた分科会となりました。

(有)鶴星機械  加藤 雅三

第2分科会

承継出来る、承継したい企業づくりとは

~事業承継は理念の継承
徳升 忍氏  (株)ドライバーサービス(刈谷地区)

徳升 忍氏

報告者の徳升氏は、大学卒業後に起業。その後、分社を経て現在の会社形態に至り、2014年に他人承継しました。

起業初期は、利益が出ていても社員の定着率が悪いことに悩みます。これは、同友会の労使見解にある「社員が将来を託せる会社」ではないからだと気づいて、経営指針の実践を始め、社員と共に承継したくなる会社づくりに取り組みました。

グループ討論では、事業承継をする側とされる側の双方から、お互いの課題と求められるものについて討議をしました。発表の際には、「双方が企業を継続・発展させるビジョンと熱意が重要」「承継の準備期間が必要」「経営指針が大切」等の意見が多く出されました。

座長の杉浦昭男氏からは、「経営者には、いかなる環境にあっても企業を継続する社会的責任がある。事業承継はその意味でも重要で、経営者となったその瞬間から考えて取り組むこと」とまとめがあり、閉会となりました。

 (株)野田スクリーン  堀尾 貞夫

第3分科会

「経営者保証の要らない融資」への挑戦

~ガイドラインを基に、財務体質の強化へ
三宅 一男氏  (株)エピックホームズ(東京同友会)

三宅 一男氏

報告者の三宅一男氏は、過去に金融機関からの「貸し渋り・貸しはがし」を体験しました。その際の、「人間を借金のカタに取るのはおかしい」という思いもあり、金融機関との付き合いを見直します。

金融アセスメント法制定運動が、包括根保証の廃止や、第三者保証を原則求めないことなどの成果を出したこと、また同友会運動を通して自社や東京同友会の仲間とともに財務体質の強化に取り組んできた事例などを報告いただきました。

経営者保証が不要となる条件に、会社と経営者個人との明確な分離、財務体質の強化、経営の透明性の確保が挙げられます。その中でも「同族企業でないこと」は、ハードルが高いという声があるものの、必須ではありません。他の基準も含め、経営者保証が外されるかどうかは総合的に判断されるものです。

それは経営指針の成文化や経営の透明性の確保など、「良い会社、良い経営者」になる上では当然のことで、その先に良い経営環境づくりがあるのだと感じました。

安藤不動産  安藤 寿

第4分科会

歴史認識を持ち 経営の舵を切る

~現象に流されない経営に取り組もう

浅井 勇詞氏  (株)浅井合板工場(海部・津島地区)
松井 清充氏  中小企業家同友会全国協議会 専務幹事

松井清充氏と、浅井勇詞氏

第4分科会はお2人の報告をいただきました。

浅井氏からは、1920年の材木商としての創業から、戦後の合板の製造販売、そして合板製造の中止から加工業への転換と、時代の変遷とともに業態を変えながら、もうすぐ100年という企業の歴史と今後の展望を報告。その都度の決断の重さを実感しました。

続いて、松井氏は、中小企業が置かれる環境を、世界や日本の現実と方向性から解説。自社をつかむには、業界分析・地域分析・時代認識・歴史認識が必要と強調しました。

最後に、憲章・条例運動は、地域の特性を生かして新しい仕事をつくり、雇用を生み出し、地域を良くしていくという、同友会の3つの目的の総合実践であると締めくくりました。

 重機商工(株)  城所 真男

第5分科会

経営指針で会社は良くなる?

~社員の共感を土台に実践
磯村 太郎氏  (有)サン樹脂加工(愛北地区)

磯村 太郎氏

入社して、借金があり、高齢化という現実を初めて知った磯村氏。「こんな会社は俺しか継げない。あとを継ぎたいと思える会社にしよう」とその時に思いました。

それからは、借金返済と社員の若返りを自分の責務として動いていきました。新規採用をして、新工場を建てるも、社員は辞めてしまいます。理由を聞くと、「この会社で働くのが嫌だ」「専務(当時)は金のことしか言わない」と言われてしまいます。

「理念は全て金に行きつく。本当にこれでいいのか」と悩んでいた時に参加した共育講座で、社員は社員の立場で会社を想っていることを知りました。社員の声を聞かない自分が悪いと、経営者としての姿勢を見直します。言行一致を心掛け、社員をパートナーと考え、全社一丸で社員の納得と共感が得られる指針書ができました。

明確な将来像や課題を毎年の指針書に盛り込み、「悩んだ時には全てそこに立ち返ります」と磯村氏は締めくくりました。

 (株)びーばー  河原 博幸

第6分科会

明快なビジョンの共有こそ戦略の基礎

浅井 章博氏  アルファフードスタッフ(株)(中区北地区)

浅井 章博氏

専業だった薄利多売の砂糖問屋からどう脱却するか。販売先の見直し、御用聞きから営業マンへの変革、新規開拓等を進める中、「子どものアレルギーをきっかけに、食べ物の大切さを痛感した」と報告者の浅井氏は語ります。安心・安全にこだわった原材料を増やしながら、業界でも早期にISO認証を取得。オーガニックの製菓・製パン用原材料では日本一を目指し、社員とともに会社を成長させてきました。

浅井氏は、近未来の戦略的な目標をビジョンとして社内外で共有しながら成果を上げてきました。「アルファにしかできないこと」を追求したように、我々中小企業は自社の存在価値を見出し、ビジョンとして社内外へと発信し続けることが必要です。

最後に、座長の水戸勤夢氏は人間とチンパンジーの違いを例に挙げながら、「人間らしく生きるとは夢を持つことであり、会社の夢はビジョンとして示そう」と、分科会を締めくくりました。

 (有)小坂井衛生社  松山 吉伸

第7分科会

人を生かすってどういうこと?

~「できる」を見つけませんか

青木 邦子氏  社会福祉法人 親愛の里
服部 勝之氏  (有)服部造園 (稲沢地区)

実際の現場を見学

第7分科会では、精神や発達に障害がある人たちのことを理解し、共に働くことについて考えました。

午前中は、親愛の里が運営する就労支援施設で、当事者の方がどう就労を目指して頑張っているのか見学しました。作業中の皆さんが「働くことが楽しい」と仰っていたことや、当事者の2人からの体験を聞き、働くことの意味に改めて気づかされました。

報告者の青木氏と服部氏からは、実際に障害者を就労につなげるまでのステップや、その後のフォローについて報告いただきました。

親愛の里では、就労への各段階で、手厚くフォローされており、離職率が低いといいます。また、服部氏の「障害者を雇用することは、会社の意識を変えること」という考えにも、これからのヒントを頂きました。

報告の後は、自社では何ができるかを討論し、一人ひとりが具体的な行動について考えることができました。

つつじが丘法律事務所  齋藤 尚

第8分科会

人を生かす三位一体でめざす企業像へ

~人が育つ風土作り、組織作り、しくみ作り
丹羽 昭夫氏  (有)宝製作所(尾北地区)

丹羽 昭夫氏

報告者の丹羽氏は、社長就任からの15年を振り返り、「新入社員が入社し、若手が育つと、上の社員も自ずと育つ。そんな会社にするためには、社員にも誇りを持たせ、社員を経営者が誇りに思うことが大切だ」と語りました。この言葉に耳の痛かった参加者も多かったのではないか、と思います。

社員の愚痴を言っていては、労使見解に基づく経営を通した「同友会らしい黒字企業」になれるはずがありません。「社員を誇りに思い、社員に誇りを持たせる経営者になる」という丹羽氏の言葉に感謝したいと思います。そして私も、そんな経営者を目標にしたいと思います。

グループ討論では、「三位一体経営をするためには、経営者1人の力ではなく、経営を理解し協力できる幹部社員などを育てなければならない」ということを学ぶことができました。

 (有)ヤングライフプロポーサル  井上 崇

第9分科会

モノづくりの原点は人育て

~グローバル化の波にのまれない未来を
豊田 弘氏  知立機工(株)(刈谷地区)

工場を案内する豊田氏(右)

第9分科会では知立機工に到着後、豊田氏の報告に先立ち工場見学をさせていただきました。参加者は3班に分かれ、社員の提案や改革を含めて説明を伺いました。

「経営環境が変わってどんなに会社が苦しくても、絶対に社員や家族の生活を守る決意で経営しています。大切なのは公私混同を絶対にしないこと、社長が社員に背中を見せられるかどうかです」。これは、報告の中で私の心が鷲掴みにされた言葉です。

豊田氏は28歳のときに過労から闘病生活を送るものの、会社からは電報1本で解雇され、不屈の精神で知立機工を立ち上げました。仕事が無いことはつらい。その経験から社員にも「生きること」「働くこと」を考えさせようと思い立ち、社員教育に取り組みました。

当時の社員は様々な厄介事を抱えていましたが、彼らを教育できない自分に問題があると気づきました。そして時間をかけて自主性を育て、自分で考える習慣を身につけさせたことで、成長した社員から、「自分たちも社員教育に関わらせてほしい」と言われるまでになりました。

「社長はまず自分が育ち、それを見て社員は育つ」という言葉に、今日から私たちの成長をスタートさせようと、参加者一人ひとりが決意を新たにしました。

 (有)板倉水道工業所  板倉 邦光

第10分科会

経営戦略としてのダイバーシティ

~女性の活躍で会社を変える!市場が変わる!
加藤 明彦氏  エイベックス(株)(天白地区)

加藤 明彦氏

ダイバーシティ経営とは、多様な人材を生かし、能力が最大限発揮できる機会を提供することでイノベーションを生み出し、価値創造に繋げる企業経営のことです。これは、同友会の人を生かす経営の実践そのものです。

今回は「女性の活躍推進」について考えました。男性中心の企業が多いなか、新たに「女性の視点」を入れることで、企業発展へのヒントを見つけるということです。

しかし、女性を活用しようとしても、目的が曖昧では女性の利用に繋がりかねません。なぜ女性なのか、どうしたら女性が活躍できるのかを、明確にすることが重要なのです。女性の視点で企業を発展させるには、やはり地道に同友会で人を生かす経営を学ばなければ、上手くいかないのです。

経営者が社員の個性を適材適所で生かすことで、企業は発展します。女性に限らず、すべての人が生き方に自信と誇りを持てる企業づくりを推進していきます。

 (株)三井酢店  三井 哲司

第11分科会

将来を描ける評価制度

~理念に沿って自己成長するために
杉浦 敏夫氏  スギ製菓(株)(三河第1青同)

杉浦 敏夫氏

「社員も増え、そろそろ必要なのでは」との労務士のアドバイスから、報告者の杉浦氏は評価制度の導入に取り組み始めました。

当初の基本的な考えは、社員の成長・課題抽出、自分の存在価値を認めてもらう評価でした。しかし、社員への落とし込みもなく、自己評価が役員に提出され、給料の査定に使われるだけになっていました。

導入から3年後、社員に「将来像が描けない」と言われ、制度を見直します。個々の能力に応じた指導・教育・自分の将来設計が実現するよう作り直していきました。また、会社が200年存続するには、理念の共有が必要と気づきます。仕事をするのは人であり、人間的魅力を上げていく考えから、評価制度を理念型に見直していきます。

同じ目的(理念)と目標(ビジョン)を共有し、自分の考える自分と他人から見た自分のギャップを知り、自己成長・自己変革してもらうと杉浦氏。その為にも社内の意識調査をし、社長の評価もアンケートで取り全社員と面談をして共有しています。

「理念型にして少しずつ会社の雰囲気も変わってきた」といいます。「今回の報告で気づきもあり感謝しています」と締めくくりました。

(有)イガラシ金型製作所  五十嵐 寛

第12分科会

中小企業経営と介護問題

~「命綱」としての中小企業 その期待と役割
春日 キスヨ氏  臨床社会学者

春日 キスヨ氏

長年、実際の介護現場を中心に研究してこられた春日先生に、人口動態予測やその原因となっている価値観の変化など、データを用いて報告いただきました。

介護問題は、企業にも経営者個人にも大きな打撃を与えることが明白です。これをどのように乗り越えるのか、今からその策を練っておくことが大切で、それは経営者がするべきことではないかと問題提起されました。

グループ討論では「現状を認識しているか」「介護問題が多発することが予想される頃までに、自社・自分は何ができるのか」を話し合いました。参加者の多くが介護問題を現在の経営課題として捉えていなかったことがわかり、顕在化した時には遅いと危機感を持ちました。そして、今の自分たちが取り組めることとして、「社員ともっと話をする」「困ったら相談できる会社になる」「介護制度の知識を経営者が持っておく」といった意見が発表されました。

春日先生の報告やグループ討論を通じ、同友会の「人を生かす経営」を実践することが、どんな課題にも立ち向かう力になるのだと改めて感じました。

(有)サン樹脂加工  磯村 裕子

第13分科会

海外展開による新たな戦略の構築を目指して

~自社の強みを活かして、グローバルな事業展開にチャレンジ
高橋 弘茂氏  (株)TEKNIA(中川地区)

高橋 弘茂氏

この分科会では中小企業の海外展開について、高橋氏のタイ進出の事例から学びました。

高橋氏はリーマンショックを機に、それまで進めていたタイでの事業に本格的に取り組みます。現地では、社員のストライキやずさんな会計処理など数々の問題が発生。それらへの対応から、日本の常識を押しつけず、その国の生活習慣や文化の違いを認めることの大切さに気づき、よく話し合いながら良好な労使関係を築きました。

また、日本では当たり前でもタイにはない商品やサービスに着目し、市場開拓を行うなど、海外展開する際のポイントが説明されました。タイでの新事業や新分野への挑戦から、改めて経営理念からぶれない戦略を描き、国内での事業軸を確立していく報告に刺激を受けました。

グループ討論では、海外展開の目的や、次の一歩をどう踏み出すかをテーマに活発な意見交換が行われました。高橋氏の情熱あふれる姿勢に触発され、「海外へ足を運んでみる」「具体的な行動を起こす」など前向きな意見や決意表明も出て、参加者にとっての次の海外展開を考える良い起点となりました。

 (株)マイゾックス  溝口 博己

第14分科会

本業を磨けば市場創造へ繋がる

~新しい市場で活躍できる企業の条件
鳥越 豊氏  (株)鳥越樹脂工業(一宮地区)

鳥越 豊氏

この分科会では、10年、20年先にも企業が存続し発展していくために、激しい環境変化のなかで新しい事業分野をどう開拓するのかを考えました。

報告者の鳥越氏は、自動車部品の試作製造会社として1984年に起業。創業時に掲げた「挑む」の精神を忘れず、変化と多様化で新事業に挑戦し、企業を成長させてきました。そのために本業を磨く大切さや、自社の強みについてお話しいただきました。

グループ討論は、業種・規模を区別せず行いました。自社の強みや磨くべき本業、それらを踏まえたうえで、50年先の市場変化に対応できる企業を創造するためには何が必要で、何が足りないかを話し合いました。

激しい変化に対応し企業を長く存続させるには、本業の上に見据えた経営を創造することが大切です。鳥越樹脂工業の社訓である「意努夢(いどむ)」の精神が伝わる分科会になりました。

フラットインシュアランス(株)  内木 康博