活動報告

第17回 あいち経営フォーラム(第9~第16分科会)

第9分科会

幸せで笑顔あふれる会社を目指して
~障害者との関わりから得たもの

磯貝 賢一氏  (株)大磯屋製麺所(碧南・高浜地区)
成瀬 弘司氏  愛知県立安城特別支援学校
小島 誠司氏  社会福祉法人 碧南市社会福祉協議会

左から磯貝氏、小島氏、成瀬氏

はじめに、学校や福祉の現場から、障害者とはどういう人たちか、地域にはどのような支援機関があるのかなど基本的なことが解説されました。磯貝賢一氏からは、障害者雇用を通して社員との関わりも見つめ直し、会社発展に役立った事例が報告され、同友会での学びを多く実践している姿勢が印象的でした。

行政の方も参加されたグループ討論では、多面的な議論が交わされました。障害者雇用のうまくいっている事例や失敗事例のほか、障害者を送り出す側の体験談もあり、これから雇用する企業にとって有益な情報になりました。小規模企業では雇用のハードルが高いとの意見もありましたが、障害者を一括りにせず、その企業に合わせて検討できるとのことです。

分科会を通して、障害者雇用に関する知識をさらに広める必要性や、今後の自社の関わり方を幅広く考える機会となりました。

(株)メディアテック  高雄 康宏

第10分科会

働き方革命!WLBで業績は上がるか
~WLBで読み解く「人を生かす経営」

大越 賢治氏  (株)ウィルド

WLBを身近に感じる

「ワークライフバランス(WLB)推進」というと、「まだ先のこと」「弊社には不向き」などの言葉が多くの経営者から聞かれますが、経営環境や働く人の価値観は大きく変化しています。

大越賢治氏からは、その柔軟な発想と、WLBの実践について報告いただきました。大越氏は「おやつタイム」「プライベート予定公開」「ピンポン会議」といったユニークなアイデアを実践し、効果を測定し、最終的には利益を向上させ、さらに「伸びしろがある」とその可能性にまで言及します。それまで難しく考えていた多くの参加者にとって、WLBが身近に感じられたのではないでしょうか。

グループ討論では「生産性の向上」や「コミュニケーションの大切さ」「人生の満足度」などの重要なキーワードが飛び交い、充実した討論となりました。

実行委員の多くがWLB推進に取り組んでおり、水面下では確実に浸透していることを感じます。そうした風土を目指す姿勢は、まさに私たちが学ぶべき「人間尊重」であり「人を生かす経営」であると実感しました。

アイズコレクション(株)  舌古 洋一

第11分科会

女性の活躍で会社が変わる、地域が変わる
~強みを生かし未来へ繋がる企業へ

比嘉 ゑみ子  やんばる彩葉(沖縄同友会)

人間の不完全さと多様性を認めて、初めて人間尊重の入り口に立てる

女性の働き方における課題でもある子育てや介護には、視野を広げ視点を変える要素が多くあり、これらを経営に生かすことは、職場を成長させるカギともなります。職場や地域社会の課題は何事もプラス視点で捉え、男女問わず意見を出し合い従業員や地域の人々と積極的に関わることで「共に育つ」環境ができ、その過程に、地域社会から必要とされる企業として成長するための気づきがあります。比嘉ゑみ子氏は「人は皆不完全で、その不完全さと多様性とを認めることで初めて『人間尊重』の入口に立てる」と結びました。

女性の持つ感性や感覚を自社の強みに変え、地域から必要とされる企業として成長するには何が大切かを、女性経営者の視点から学びました。

報告を踏まえ、「自社の強みと弱みは何か」「地域活性化と女性が果たす役割の中で自社として何ができるか」をテーマにグループ討論を行い、活発な意見交換ができました。

ミライスタジオ  脇田 知子

第12分科会

インバウンドで市場創造
~新たな視点でビジネスチャンスを見つけよう

菊地 俊夫氏  首都大学東京都市環境学部教授
田尾 大介氏   (株)ツーリズムデザイナーズ

インバウンドがあらゆる分野で可能性を広げる

第12分科会では、外国人旅行者が日本に大勢やってくる世情を踏まえ、「インバウンド」をテーマとして、どんなビジネスが可能なのかを掘り下げました。

まずインバウンドについては、「爆買い」のみが認識されがちで、誤解されていないかという懸念を解消するため、菊地俊夫氏からはインバウンドの定義と現状を報告いただきました。また田尾大介氏には、名古屋でのインバウンドの実践をお話しいただきました。

その後、参加者からの質問を踏まえながらインタビュー形式で内容を深めました。

参加者には意識の高い方が多く、外国人が観光で日本や愛知県を訪れる現状に対し、自社のビジネスをいかに活用できるかという視点で熱のこもった議論が交わされていました。

「インバウンドで市場創造を」と「観光」という入口から、運輸、製造、行政手続きとあらゆる分野にビジネスチャンスがあることを伝えられるよう務めました。

(有)プレジャー企画  安楽 雅志

第13分科会

「1T3D」で市場を創造
~価格競争に巻き込まれない企業づくり

鳥越 豊氏  (株)鳥越樹脂工業(一宮地区)

鳥越樹脂工業の工場を見学

市場創造をテーマにした第13分科会は見学分科会で、基調講演終了後、バスで一宮市の鳥越樹脂工業・千秋工場へと向かいました。車内では同社の会社紹介の動画が上映され、鳥越豊氏より会社概要が説明されました。

現地では工場内の塗装ライン、自動車・美容用品のアッセンブリーライン、成型工場を見学しました。同社は自動車部品の試作に始まり、自動車用品・健康器具・電子部品などの量産も手掛けています。自動車部品の生産で培った厳しいコスト管理・技術管理・生産管理などの強みを利用し、1T3D(ひとつの技術を3つの領域に活かす)を基本戦略とした「たての経営」で、常に新たな市場創造を行っています。

グループ討論では、自社の本業や強みについて討議しました。鳥越氏との質疑応答では、同社の提案営業の基にある「情報を取ることよりも情報を発信する大切さ」が市場創造に繋がるという気付きを得ることができ、製造業に限らず有意義な時間となりました。

ヘルメス(株)  亀井 則宏

第14分科会

エネルギーシフトで市場創造、企業づくり
~「よい資源循環」企業は、顧客から選ばれる

平沼 辰雄氏  (株)リバイブ(海部・津島地区)

エネルギーシフトが社会を変える原動力に

建築物解体と産廃処理を主な事業とするリバイブの平沼辰雄氏は、自社の課題に取り組むだけでなく、今のままでは地球がもたないと危機感を抱いたそうです。そこで「善循環型社会」を標榜し、「エネルギーシフト」「まごころ解体」「食農循環プロジェクト」など環境に良い事業を次々に立ち上げ、成果を上げてきました。

人間が人間らしく生きていくためには、すべての生命との共存が不可欠です。また、企業活動が生活者のライフスタイルを変えれば、巨大なビジネスチャンスにもなり得ます。持続可能な社会を構築するには再生可能エネルギーも含めたエネルギーシフトが必要であり、それが市場創造につながり、世の中全体が元気になるという力強い報告でした。

目先の利益だけではなく、10年、20年先を考えると地球環境問題の重要性が見えてきます。多くの企業がその気になれば大きな流れが生まれ、世の中を変える原動力になるものと思います。

野々部技術士事務所  野々部 顕治

第15分科会

中小企業のブランド化戦略
~業界の社会問題解決から市場創造へ

後藤 裕一氏  (株)大醐(北第1地区)

「ブランディング」と「社会性」という点を線で結んで報告

本分科会では、中小企業が独自性を高め競争力を強化するために、事業内容や商品サービスの提供の他に、業界の社会問題を解決するという観点から考えました。

報告者の後藤裕一氏は、商品の経済性を考えてから独自性を出し、社会性に繋げようと試みて失敗しました。それを機に自社商品や業界等を分析し、同友会会員の考えや実践等を自身に落とし込みます。単に商品を良くするのではなく、「世の中で役立つ商品という視点から社会性を見出し、それを自社商品の独自性として発信することで経済性に繋がった」という成功事例をもとに、「ブランディングの目的」「そもそもブランドとは社会から求められて成立する」「企業は社会貢献するために存在する」という点を線で結び、実践しました。

「ブランディング」と「社会性」とが2部構成で報告され、グループ討論もそれに沿ったテーマで行いました。一見、ブランディングと社会性とは相反する面があり、大企業だから可能だと思われるかもしれません。しかし、中小企業だからこそ継続・発展のために必要なことであると感じる内容の分科会でした。

(株)五島エレベーター  松田 隆宏

第16分科会

地域の仲間との関係づくりが新たな連携へ
~「できないこと」が「できること」に

大﨑 秀樹氏  (株)萬秀フルーツ(名古屋第1青同)
中山 幸彦氏  (有)日間賀観光ホテル(知多青同)
坂野 豊和氏  (株)まるは(知多青同)

共通の想いを持つ3氏(左から大﨑氏、中山氏、坂野氏)より実践報告が行われた

本分科会では「連携」を「地域」で実践している3氏から報告が行われました。

大﨑秀樹氏は、美浜町でグレープフルーツを中心とした果実類の生産・販売をしています。連携は価値の創造を目指すべきものとして、自社がどうなりたいかを明確にした上で、お客様や地域のニーズを収集し、連携相手の価値の向上をも考慮して取り組むことが重要であるとの気づきが報告されました。

中山幸彦氏は、日間賀島で旅館と売店を営んでいます。連携は1社ではできないことが可能になること、中長期で取り組む姿勢が重要だと述べ、想いを共有できる仲間を増やし、取り組んでいくことが最も大切と語りました。

坂野豊和氏は、南知多町豊浜を地盤に食堂・旅館を営んでいます。経営理念にも掲げる地域との関わりの大切さに触れ、自社だけでなく地域に関わる全ての人を尊重し合える関係づくりは同友会理念である「地域と共に歩む中小企業」の実践に繋がると述べ、「理念」と「地域」を併せて「強い社会」になると締めくくりました。

南星キャリックス(株)  市川 重人