活動報告

【連載10周年記念】金融アセスだより(第124回)

連載10周年を迎えて

「金融アセス法」制定を求める署名運動(2001年)

2006年10月の第1回「金融アセスだより」掲載から、10年が経ちました。

初回のテーマは、地域金融機関が情報発信のため発行するディスクロージャー誌の内容が、大きく変わったことを知らせるものでした。これは、2003年に金融庁が出した「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」により、地域経済への貢献について実績を報告することが求められた結果の変化であること、またその政策は、愛知同友会が火種となった「金融アセスメント法制定推進運動」の成果であることも紹介しました。

この10年間にはリーマン・ショック、東日本大震災等、未曾有の規模の経済危機が起こりました。その都度、様々な金融政策が出され、中小企業の金融環境も変わってきました。

政策面では「セーフティネット保証」、「金融円滑化法」、「金融検査マニュアル別冊の改定」等が、融資の形態では資本性融資である「劣後ローン」、動産を担保に融資を行う「ABL」が挙げられます。実務面では「経営者以外の第三者保証の原則禁止」や、最近では「経営者保証に関するガイドライン」等があります。

金融環境を改善する

これらに対し、都度、金融委員会では調査や情報発信に努めてきました。それを解りやすいように解説したり、委員会で学んだことなどを委員が交代で綴ったりした点が、本欄の特徴です。経験や知識も様々な会員が書いた記事を改めて読むと、この10年の中小企業向け金融の変遷が、生の声として感じられます。

愛知同友会の金融環境への取り組みは、1993年頃から本格化しました。当時は大手銀行や証券会社が破たんした金融不況の真っただ中で、金融機関は「貸し渋り」や「貸しはがし」という厳しく不適切な姿勢が目立ちました。

そのような状況に対して、中小企業にも日が当たるように国の政策を変えるべく、全国の中小企業家が立ち上がったのが金融アセスメント法制定推進運動です。まだまだ課題はありますが、これがきっかけとなって今日の中小企業の金融環境が整ってきたことは、伝え残しておきたいと思います。

愛知で13万、全国で100万超の署名が集まる

自らの襟を正す

金融検査も当初は経営の健全性評価が中心で、中小企業も大企業と同じ尺度で評価されていましたが、中小企業版の検査マニュアルが制定され、私たちの事情を考慮されるようになりました。最近の改定では金融機関に対し、中小企業との密度の高いコミュニケーションや積極的な働きかけの状況をも検査の対象とするようになってきています。

数字に表れない技術力や経営者の資質等、細かい調査で融資先を把握しているかも問われます。代表的なことでは、経営者以外の第三者保証を付けた融資が当たり前だったのが、経営者保証も外そうという政策が出てくるまでの大きな変化が起こったわけです。

こうした動きを歓迎する一方で、私たち自身も襟を正して経営に努め、適切な情報提供で金融機関と質の高いコミュニケーションをとることが必要になったといえます。

今回この10年を振り返って、改めて今の金融環境を学び、強靭な経営体質をつくるために何をなすべきかを個人的にも考え直す機会をいただいたことに感謝いたします。

赤津機械(株)  藤田 彰男