活動報告

労務労働委員会(2月14日)

「働き方改革関連法案要綱」と「同一労働同一賃金」問題

浅生 卯一氏

浅生 卯一氏  元愛知東邦大学教授

2月の労務労働委員会では「働き方改革関連法案要綱」と「同一労働同一賃金」問題をテーマに学習会を開催し、元愛知東邦大学教授の浅生卯一氏に解説していただきました。その概要を紹介します。

はじめに

「働き方改革関連法案要綱(以下、法案要綱)」は、2月14日現在の通常国会では提出されていませんが、政府により最重要課題と位置づけられています。主な内容は、(1)働き方改革の総合的かつ継続的な推進、(2)長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等、(3)雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保の3点で、関連する8つの法律を一括して改正するものです。

今回は、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」のうち、短時間・有期雇用労働者への不合理な待遇差の禁止と「同一労働同一賃金」問題を取り上げます。

法案要綱の主な内容

正規労働者と比べた場合の短時間・有期雇用労働者への不合理な待遇差の禁止にかかわる現行法は、「パートタイム労働法」と「労働契約法」で、政府はこの2つを次のように改正しようとしています。(7点のうち主な5点を紹介)

  1. 現行のパートタイム労働法を「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」に改める
  2. 短時間・有期雇用労働者への不合理な待遇の禁止(均衡待遇)の一部変更、併せて現行労働契約法第20条(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)の削除
  3. 短時間・有期雇用労働者への差別的取扱いの禁止(均等待遇)の一部変更
  4. 事業主による短時間・有期雇用労働者への説明義務の一部変更
  5. 紛争解決規定の一部変更(不合理な待遇の禁止に関する苦情及び紛争を追加)

改善点と問題点

まず改善点として、これまで2つに分かれていた短時間労働者と有期雇用労働者に関する待遇の規制が、同じ法律に改められることで分かりやすくなります。また、均衡待遇規定が現状より明確化されること、均等待遇や待遇差に関する事業主による説明義務を、パートタイム労働者だけでなく有期雇用労働者にも及ぼすことが主なものです。

一方で、問題点としては、同一労働同一賃金を実現するための改正案といわれながら、条文には「同一労働同一賃金」という規定(文言)がないことが挙げられます。

「職務の内容が同じまたは類似ならば同じ賃金を支払う」ことが、本来の同一労働同一賃金論ですが、改正案では「職務の内容」だけでなく、「職務の内容及び配置の変更の範囲」や「その他の事情を考慮」して合理的ならば賃金等に差を設けてもよいことになっており、これは同一労働同一賃金とはいえません。また、国際的(ILO第100号条約)には、「同一労働同一賃金」ではなく「同一価値労働同一賃金」(同一労働同一賃金を含む)であり、これにははるかに及びません。

働き方改革関連法案要綱の主な内容を学び、企業としての対応を考える

企業としての対応は

そういった背景を基に、企業としてどう対応すればいいのか、私の考えをお伝えしたいと思います。

まずは、賃金などに関する現行就業規則の点検と見直しです。「働き方改革関連法案要綱」に基づく法案の成立・不成立にかかわらず、すでに関連する裁判の判決(特に労働契約法第20条に関する裁判例)や「同一労働同一賃金ガイドライン案」(2016年12月20日)が出されており、それらも参考にしつつ、労使間の紛争を減らせるよう、正社員と非正社員の待遇差に関して説明できるようにしておくことが必要です。

次に、非正社員の正社員(「限定正社員」を含む)への転換あるいは登用制度の整備です。「限定正社員」とは、いわゆる正社員と同じように無期労働契約を締結していますが、労働時間や職務の範囲などが限定されている正社員をいいます(労働時間だけに着目した場合は、「短時間正社員」ともいわれます)。

非正社員の中から優秀な人材を見いだして正社員に転換・登用することは、当該社員の勤労意欲の向上にもつながり、企業経営にとっても有益です。特に、現在のような人手不足のもとでは優秀な社員を確保したり、定着させるうえでメリットが大きいと思います。