活動報告

金融委員会(5月8日)

融資審査は「職人根性」が必要

~「定型規格」と「定時退社」では事業性評価は実現できない

金融委員会で作成された金融用語集【キーワード用語編】のもくじ(PDFファイル)

金融機関の実情

「銀行って何? 金融マンの仕事」と題し、元大和銀行出身の由里宗之・中京大学教授に「駆け出し稟議方時代の回想」を交えながら「事業性評価」の真のあるべき姿について報告いただきました。

冒頭から「目利き」「コンサルティング機能の発揮」「事業性評価」について、ほとんどの関係者や当事者が本当にはわかっておらず、金融機関が強化する手立てや道筋がつけられない、そもそも過去の数字すら読み込めず将来性など評価できないのが現実ではないか、と厳しい問題提起がありました。

由里教授は1984年に入行。大阪・船場の繊維問屋街を中心に融資係稟議方(与信申請書作成担当者)として、業況不安定な客先を相手に「どぶ板訪問」と手作業の財務分析でバンカーとして鍛え上げられてきたと語ります。

求められる融資のプロ

当時はプラザ合意、円高不況、日銀金融緩和、金利規制自由化と続き、繊維アパレル業界は長期的に売上が下降していたのに加え業況跛行性が大きく、不良在庫や不良債権、季節運転資金や事業拡大資金などの見極めに真贋が問われました。優良先は金利引き下げ依頼をさばくのに忙しいだけで面白みがない一方、業況不安定先でも見込みがあり金利負担軽減で支援しながら当行収益も上げることに心が動き、融資先からの深謝に働きがいや誇りを感じていたといいます。

「地元の役に立ちたい」「産業や企業現場の課題を知りたい」という知的好奇心と、難しい稟議を通すやりがいに駆られ、複数年のBS、PLから資金運用表を作成・分析。月次資金変動で季節資金など詳細な把握と現場のヒアリングで実態・実情を掴み、夜を徹して稟議書を作成する充実した日々だったそうです。

当時は疑似資本として短コロが通常であり、半年毎に審査が必要な手間暇のかかる仕事でした。しかし、それが企業の実情把握や目利き育てにつながるのだと熱く語りました。

昨今の銀行マンは、ヒアリングシートを埋めることが事業性評価だとの勘違いや、売れる支援がないフェア出店など、形式的で踏み込みが弱いこと。「働き方改革」で定時退社、持ち出し厳禁、データ解析結果活用による効率性だけでは融資のプロは育たないと警鐘を鳴らし、締めくくりました。