活動報告

第18回 あいち経営フォーラム特集(第7分科会~第15分科会)

第7分科会

採用と共育と地域の三位一体
~企業・人・地域の育て合いと高め合い

田中 正志氏  義農味噌(株)(愛媛同友会)

社員と向き合う重要性を語る

義農味噌代表取締役の田中正志氏は、主力商品である味噌が7年間も値下がりする中、倒産への不安を抱えながら自らが商品開発をしてきました。しかし、価格決定権を得られないまま、会社の体力を消耗していきました。

そこで社員に任せることにし、進捗状況に苛立つことがあっても我慢しました。社員は店頭でマネキン販売をするなどし、商品は少しずつ売れ出します。自ら商品を開発し、販売できたことが、社員のやりがいに繋がっていきました。そして「愛媛の郷土文化の伝承」を理念に謳うことで、理念を軸に事業が広がり、大手が狙わないニッチな部分にこそチャンスがあると気づけたといいます。

採用では、興味のある学生には自社に来て自らの目で判断してもらい、入社後のミスマッチや離職率の低減に繋げています。社員一人ひとりといかに丁寧に向き合えるかが重要だと感じました。

グループ討論では、社員が誇りを持って働けるように経営者は理念に沿って社員と協力すること、地域に根付き、必要とされる会社になることを確認できました。

船橋鉄工所  船橋 勲

第8分科会

よい会社にするための就業規則
~経営指針と一致していますか

佐藤 邦男氏  アジアクリエイト(株)
(豊川・新城・蒲郡地区)

就業規則を通じて、経営者の思いを伝える

アジアクリエイトの佐藤邦男氏は、社労士からの「儲かる就業規則を作らないか」という言葉で就業規則の見直しに取り組みました。

「儲かる就業規則」とは何かを定義し、社員へのアンケート結果を基に、佐藤氏、社員、社労士を含めた推進メンバーで改訂を行います。新たな就業規則は経営指針とともに各社員に配布し、就業規則は共通の行動指針として社員が働きやすい職場環境を作るものであることを理解してもらい、就業規則を通じて経営者の思いを伝えたといいます。

それから10年以上が経過し、世代交代を見据えた就業規則の改訂が行われました。残業のカウント方法や管理職と管理監督者の役割・処遇の明確化など、新たな対応を行うとともに、企業の成長に社員の成長は不可欠と、立場によってやるべきことは何かを明らかにして、賞与の査定に用いるなどしています。

グループ討論では、社員との信頼関係を構築し、人を生かす就業規則をどのように作成していけばいいのかについて様々な意見が出ました。

愛知さくら法律事務所  矢田 啓悟

第9分科会

あなたの会社は誰もが活躍できますか
~人手不足の中でのワークライフバランス

村瀬 慎一氏  ムラセ印刷(株)(名西地区)

社員との信頼関係で高い定着率を維持

人材確保が大きな経営課題となっている今、「働き方改革」で形だけ整えたところで真の問題解決にはなりません。第9分科会では、市場規模が20年前の9兆円から5兆円にまで縮む印刷業界にあって、個性的な経営で成長を続け、社員の定着率を高く維持して人手不足や求人難を乗り越えているムラセ印刷の村瀬慎一氏に報告いただき、労働環境の整備について考える場としました。

自身の病をきっかけに、村瀬氏は社員の働き方についても真剣に考えるようになります。とことん社員のことを考え、一人ひとりが輝ける場所をつくる、無ければ新たに用意する、社員は家族であり、出来が悪くても決して見捨てることはしないという信念に感銘を受けました。

グループ討論では、ワークライフバランスを大事にしながら社員との信頼関係を深め、より風通しの良い職場をつくるには何が必要かということを中心に話し合いました。分科会を通して、必ずしもワークライフバランスと会社の成長は相反せず、働きやすい職場をつくることが生産性を高め、会社を成長させられるのだと感じました。

循環資源(株)  中西 耕策

第10分科会

障害者雇用から学んだ人を生かす経営
~障害者の能力を最大限に引き出す

大植 栄氏  (有)メタルワーク福山(広島同友会)

雇用に対する壁は自分がつくっている

私は入会1年未満のため、あいち経営フォーラムへの参加は今回が初めてで、第10分科会では障害者雇用について勉強しました。

障害者雇用と聞くと、なんとなく雇用の壁の高さを感じていましたが、大植栄氏の実践報告を聞き、特別に構える必要はないのだとわかりました。同じ会社で同じ仕事をする「仲間」として、いかに真摯に向き合うかが大事であるということが、一番の学びとなりました。

グループ討論では、各社とも深刻な人手不足であるなか、障害者だけでなく女性・高齢者・外国人など多様な人材の受け入れや、雇用形態に課題を持つ多くの参加者と意見を交わし、互いに気づきを得ることができました。

多様な人材の雇用に対する壁を、実は自分がつくっていることや、「愛」ある雇用に一歩でも踏み出す行動力の必要性等、同友会らしいと感じる討論が展開され、自社にとって学びの多い有意義な時間となりました。

(株)八百鮮  市原 敬久

第11分科会

女性活躍推進は成長の起爆剤
~なぜ女性管理職を増やすのか

関原 英里子氏  (有)京美容室(新潟同友会)

「社員を磨き輝かせることが経営者の仕事」

国が女性活躍推進を唱える中、女性が働くことや管理職に就くという意識がまだ男女ともに低く、ここ愛知でも女性の就業率は低いという現状があります。第11分科会では京美容室の関原英里子氏から、自社での取り組みを報告いただきました。

関原氏は、同友会の経営指針を作る会への参加をきっかけに、「会社は社員の大切な時間を使っている」ことを痛感。自身の経営姿勢を改め、離職率の高い美容業界において、女性が一生働ける仕組み作りに舵を切ります。出産・育児をしながらも安心して働ける職場環境の整備として、交換日記を通して社員の感情や意欲を汲み取り経営に活かしたり、パート職員を管理職に起用したりして、定着率を上げました。また、働くことは生きることであり、経営者の仕事は「人を磨き輝かせること」だと語りました。

グループ討論では、女性活躍の障壁について問題提起され、男女ともに意識改革が必要であることやコミュニケーションの大切さなど、経営者自身が率先して改革することの重要性について活発な討議がされました。

(株)H&カンパニー  石川 奈美

第12分科会

中小企業の発展と地域再生・振興は不離一体
~自社と地域の10年先を展望

杉原 五郎氏  (株)地域計画建築研究所
(大阪同友会)

大阪同友会の取り組み事例を紹介

大阪同友会副代表理事の杉原五郎氏の報告では、まず大阪府と愛知県、大阪市と名古屋市の比較から始まり、地域の特徴や強み、課題を考えることの重要性を理解しました。また大阪同友会が府や市と関わってきた背景や事例が紹介されました。私は同友会で名古屋市条例推進協議会に所属して学んでいますが行政と理解しあうには難問が山積しています。杉原氏の報告から、着実に進めれば無理なことではないと感じました。

大阪同友会が策定している「大阪経済発展計画」では、点・線・面による地域づくりの考え方が参考になります。各中小企業が「点」として、できることを考えて成長する。成長した企業が自治体、大学、支援機関などと繋がり「線」となる。そして、商店街などの地域全体を巻き込んでの「面」として成長するとのことでした。

グループ討論は「地域と共に歩む中小企業」をテーマとしました。中小企業が1社でできることは小さいですが、同友会という組織で動くことで大きな力になることを改めて確認できました。

宿澤経営情報事務所  宿澤 直正

第13分科会

柔軟な発想で市場創造
~自社の強みや顧客を正しく捉えているか

大橋 博行氏  (有)大橋量器(岐阜同友会)

まずはやってみること

大橋博行氏が大手IT企業から家業の枡づくりを継ぐ道を選択したのは、幼いころから先代の後ろ姿を見て育ったDNAがあったからだと思います。

日本酒から他のアルコール類へ市場が大きく変化し、枡の売上げが減少する中、自社の強みは「伝統的でより精度の高い枡づくり」だと確信を持ち、どうすれば売れるのか、お客様に喜んでもらえるのか、柔軟な発想をもとに四角にこだわらない様々な形状の枡を試作していきます。

この取り組みが地元の情報誌に取り上げられ、記事を見た女子大生が大手企業の内定を断り大橋量器に入社。これを機に毎年、大卒の採用ができるようになり、今では多くの若い社員が生き生きと働きがいを持ち、明るい職場づくりをしています。最近では枡を内装材としてアート的に活用し、海外の市場へと新たな挑戦が始まりました。

グループ討論では参加者の多くが自社の強みを確認し、課題に気づき、「今ある仕事はいずれなくなる」という健全な危機感を共有しました。

(株)鳥越樹脂工業  鳥越 豊

第14分科会

同友会理念は企業価値向上の道
~世界の人権と人間尊重経営

松岡 秀紀氏  (一財)アジア・太平洋人権情報センター・特任研究員

ビジネスと人権は喫緊の課題

第14分科会では、松岡秀紀氏(一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター・特任研究員)にビジネスと人権を巡る世界的潮流と、それを中小企業がいかに取り組むか、について報告いただきました。

企業の人権尊重とは、思いやりがあれば解決できるという曖昧な「思いやり論」ではなく、他者に「思いを致し」、「自分を大切する、だから他人も大切にする」視点から、人権が尊重されるやり方を、プロセスも含む仕事全体で実行することと指摘。そのため、経営者は人権感覚を持つべきだと強調されました。

セクハラ、パワハラ、取引関係、外国人労働者等、実は幅広く人権課題は存在しているものの、問題として表面化するまで自社の課題として気付きづらいなかで、グループ討論では、想像力を働かせた議論で盛り上がりました。

人権は、同友会の人間尊重の経営に通じるものであり、フォーラムの新たなテーマとして今後発展していく可能性を感じる分科会でした。

やろまい国際特許商標事務所  中村 繁元

第15分科会

エネルギーシフトによる企業づくり
~「10年先の明るい未来」を考える

加藤 昌之氏  (株)加藤設計(千種地区)

エネルギーシフトで環境建築に取り組む

同友会の中小企業家エネルギー宣言「エネルギーシフト」は、「生活・仕事・交通・住宅等に関わる熱源や電力・燃料などのエネルギー全般について、徹底した省エネに取り組み、地域暖房やコージェネレーションシステムで熱源を有効利用し、再生可能エネルギーによる地域内自給をめざすことで、中小企業の仕事と雇用を生み出し、持続可能で質の高い暮らしと仕事を地域全体で実現するもの」と定義しています。

このエネルギーシフトは「中小企業家の発想の転換」をキーワードとしています。エネルギーシフトを企業の目的に据え、社員と一緒に企業づくり・地域づくりに取り組み、企業の社会的価値を高めることが必要です。

報告者の加藤昌之氏は、経営理念「あんしん安全快適満喫空間の創造」の実践として、「ゼロエネルギー」「コストアップゼロ」「ローテク」をコンセプトに「ゼロエネルギービル(ZEB)」に取り組んできました。

このように、同友会理念を踏まえて、あるべき将来像から今に立ち戻って課題設定や問題解決を行う「バックキャスト思考」を実践していくこと。それが、私たち中小企業家の責務であり、「生きる・働く・暮らす」本質は同友会理念と同様だと改めて学びました。

(株)リバイブ  平沼 辰雄

「第18回あいち経営フォーラム」ハイライト

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