景況調査

第16号-1997年11月
景況感急速な悪化、見通しも弱気

【概況】
【業況判断】調査開始以来最悪の業況判断
【売上高】【経常利益】売上高、経常利益とも大幅な悪化。建設業と流通業の悪化目立つ
【在庫】再び「増加」超過に転じ、「過剰感」増す
【価格変動】【取引条件】価格低下、取引条件悪化の傾向続く。流通業での悪化目立つ
【資金繰り】「窮屈感」薄らぐも、「窮屈」を予想する企業大幅に増える
【施設稼働率】【設備過不足】 設備「不足」超過幅の縮小続く
【雇用】「不足」超過幅縮小
【経営上の力点など】「民間需要の停滞」再びトップに
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 133KB)

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景況調査報告(1997年11月)第16号(PDF:640KB)


【概況】

 業況が急速に厳しくなってきています。業況判断を「よい」と答える企業はついに全体の10%にまで落ち込み、「悪い」とする企業の割合は40%にまで達しました。前者から後者を差し引いた「業況判断」DIは今回△32を示し、本年2月以降4期連続で悪化する(11月4→2月△5→5月△10→8月△18→11月△32)結果になりました。DI値は調査開始(1994年2月)以来最悪です。
 こうした調査結果には消費需要の落ち込みが強く影響しているものと思われます。本年4月以降の税負担増大、7月以降の天候不順の影響などから個人消費は低迷を続けてきましたが、11月に入ってから4つの金融機関が破綻するという金融不安問題の影響もあって、その冷え込みはさらに深刻化しつつあります。また緊縮財政政策への転換による公的部門の需要減が見込まれ、官民両面から需要が縮小しつつある状況です。
 工事受注が8月以降マイナスを続けている建設業や、流通業などの分野では売上高・経常利益ともに深刻な状況が報告されており、「第一次オイルショック並みの厳しさ」を訴える業界もあります。他方で製造業のうち機械関連などからは「バブル期に匹敵するほど忙しい」という声も聞かれ、細かく見ていけば業況間にかなりの格差があることは事実ですが、そうした部門も一層の好転を予測できるほど強気にはなっていません。
 金融機関の破綻などを背景にした一時的なマインドの落ち込みという側面もありますが、少なくとも当面の景気状況は厳しさが続くものと推測せざるをえない状況です。

[調査要項]
 1.調査時  1997年11月27日~12月3日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
 3.調査方法 調査書をFAXで発送、自計記入、FAXで回収
 4.回答企業 616社より、179社の回答をえた(回収率29.1%)
       (建設業40社、製造業54社、流通・商業38社、サービス業47社)
 5.平均従業員 23.8人
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会情報ネットワーク委員会(委員長、村上琇樹・村上電気工業㈱社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学助教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
 調査開始以来最悪の業況判断

 「今月の状況」DIは調査開始以来最悪の記録となった。4期連続で「悪い」超過幅が拡大し、今回は前回調査時に比べ14ポイント悪化の△32となった。これは「よい」と答えた企業が10%に満たず、その一方で「悪い」と答えた企業が40%を超えたためである。業種別では製造業が23ポイント悪化(△2→△25)したのをはじめ、流通業は21ポイント(△28→△49)、建設業も12ポイント(△29→△41)とそれぞれ悪化を示した。唯一前回35ポイントと大幅な悪化を見せたサービス業だけが今回△21と5ポイント回復したものの、依然として「悪化」と答える企業が「よい」とする企業を超過する状態が続いている。前年同月比で見ても△45と前回に比べ31ポイント悪化した。とりわけ流通業は68%の企業が「悪化」と答え「よい」と答えた企業はわずか3%にとどまったため、前回調査に比べ42ポイントも悪化(△23→△65)した。また次期見通し(全業種)も△45と急速に悪化懸念が広まっている。とくに建設業と流通業においては△59と先行きに対する見方が深刻である。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
 売上高、経常利益とも大幅な悪化。建設業と流通業の悪化目立つ

 売上高DI(前年同月比)は△15と前回に比べ26ポイントの大幅な悪化を示した。「減少」とする企業が「増加」と答える企業を上回ったのは94年11月調査以来のことである。業種別に見ると建設業(18→△30)と流通業(0→△38)の悪化が突出している。また製造業も△2と「減少」超過に転じた。前回40ポイント悪化したサービス業だけが唯一△9→2と「増加」超過に転じた。また次期見通しでも「減少」と答えた企業が51%と半数を超え、先行きに対する懸念が深刻化している。
 経常利益DI(前年同月比)は△21とこれも調査開始以来最悪の結果となった。全業種で悪化超過となったが、とりわけ流通業(△13→△45)と建設業(3→△24)の悪化が深刻である。また今月の状況で見ても建設業(8→3)と流通業が悪化を示した。とりわけ流通業は14ポイント悪化の△3と4業種の中で唯一「赤字」と答える企業が「黒字」と答える企業を上回った。その一方で製造業(20→26)、サービス業(12→21)とそれぞれ改善を示した。また、これを反映してか次期見通しにおいても建設業と流通業は深刻さが増しており、業種間の格差が広がっていることが見て取れる。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
 再び「増加」超過に転じ、「過剰感」増す

 在庫DIは前年同月比で2と再び「増加」超過に転じた。これは在庫が「増加」したと答える企業が6%増える一方で「減少」したとする企業が2%減ったためである。業種別では、製造業が0→11と「増加」超過に転じたのに対し、流通業は逆に△3→△6と「減少」超過幅が拡大した。また、「在庫過剰感」も前回の7から今回10へと高まった。「次期見通し」のDI値は「過剰」超過の6であったものの、「適正」と見通す企業は87%に上った。

【価格変動】【取引条件】
 価格低下、取引条件悪化の傾向続く。流通業での悪化目立つ

 価格変動DI(前年同月比)は3期連続で「低下」超過幅が拡大し、全業種で△34→△42となった。4業種ともに「低下」と答える企業が前回調査よりも増加した。なかでも建設業と流通業は「低下」と答える企業が半数を超えており、流通業に関しては前回に比べ22ポイント「低下」超過幅が拡大した。また、全業種の取引条件DI(前年同月比)も「悪化」と答える企業が6%増えたのに対し、「好転」と答えた企業が横ばいであったため△16→△21へと「悪化」超過幅が拡大した。業種別で見るとサービス業を除く3業種で悪化を示したが、ここでも流通業は△11→△23とその悪化が際立っている。

【資金繰り】
 「窮屈感」薄らぐも、「窮屈」を予想する企業大幅に増える

 資金繰りDIは前回調査に比べ2ポイント改善し△27となった。業種別では建設業で8ポイント(△34→△42)、サービス業では6ポイント(△24→△30)窮屈感が増した。一方、製造業は4ポイント(△22→△18)、流通業では6ポイント(△38→△24)とそれぞれ窮屈感が薄らいだ。ただ「次期見通し」では半数近い(48%)企業がこれから「窮屈」になると見通しており、DI値も△42という結果になった。金融機関の相次ぐ破綻と貸し渋りを懸念してか、資金繰りの先行きを深刻に見ている企業が多い。

【施設稼働率】【設備過不足】
 設備「不足」超過幅の縮小続く

 施設稼働率DIは前年同月比で△8→△4へと前回調査に比べ4ポイント改善した。製造業では2ポイント、流通業では13ポイントとそれぞれ改善を示した。ただし次期見通しでは△14と先行き施設稼働率低下を見通す企業が上昇を見通す企業を大きく上回っていることがわかる。一方設備過不足は△13から△5へと8ポイント「不足」超過幅が縮小した。4期連続の「不足」超過幅の縮小である。これは「不足」と答える企業が3%減る一方で「過剰」と答える企業が5%増えたためで、「適正」とする企業は2%減っている。業種別ではサービス業だけが1ポイント「不足」超過幅が拡大した他はすべて縮小を示している。とりわけ製造業においては△22→△2と20ポイント縮小したのが目立つ。

【雇用】
 「不足」超過幅縮小

 全業種で見た雇用動向は△22→△8と、「不足」超過幅が縮小した。これは過剰と答える企業が6%増える一方、不足と答える企業が9%減ったためである。全業種とも前回の「不足」超過幅拡大から縮小へと転じており、このような動きは建設業と流通業において特に顕著に見られた。とはいえ95年8月調査以来「不足」超過の状態は続いており、雇用「不足」感は依然としてぬぐえていない。

【経営上の力点など】
 「民間需要の停滞」再びトップに

 前回「大企業の進出による競争の激化」が一位となった「経営上の問題点」の項目で、再び「民間需要の停滞」がトップになった。業種別では建設業と流通業で20%を超える増加を示している点が注目される。金融不安をうけて今後より一層の消費需要の低迷が、中小企業の経営に重く圧し掛かってくることが推測される。またこのことは第二位の「販売先の値下げ要請」という形でも現れてきている。「経営上の力点」については、依然として「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」が高い比重を占めている。

<会員の声>

◎小売A社(食品) 食品業界では激烈な競争状況にあり、パイのとりあいとなっている。しかし、大きい企業が圧倒的に強く、小さな企業は苦戦をしいられている。
 ・貸し渋りの件で銀行の支店長と話す機会があった。借り手の業態を一つの判断材料に しているとのことで、不況業種では選別しているとのこと。
◎製造B社(自動車部品製造) この業界ではコストダウンが一段落した、つまりとこと ん単価が下がったということだ。工作機械が好調ではあるが、自動車部品の加工が年々 高度なものが求められ、新たな設備投資を迫られているからだ。仕事量は半年前から変 化していない。良い所は良い、悪いところは悪いという二極化傾向が顕著である。
◎製造C社(印刷) 本来なら10.11月がピークのはずが、一律30%売上がダウンしている。一方、大手広告会社は売り上をアップさせている。
◎製造D社(製版) 企業の企画ものをぎりぎりまで出さない。これはクライアントがお 互いに次期を見ており、模様をながめをしているため。
◎製造E社(金型部品) 金型業界では激度消滅の時代を経て、生き残った企業でパイを わけあっている。今、金型業界自体が20%の伸びにはある。しかし、自動車部品関係で は企業家マインドの冷え込みがみられ、先行きはどうなるか。
◎建築F社(電気工事)建築は全国60万社あるが、構造不況業種に指定された。