景況調査

第49号-2006年2月
高位安定のなか深刻化する供給ネック

【概況】
【業況判断】 今月の状況、DI値は悪化するも好調な企業の割合は増大
【売上高】【経常利益】 経常利益、わずかに悪化するも高位で安定
【在庫】 「過剰」感弱まる
【価格変動】【取引条件】 取引条件、「悪化」超過幅拡大
【資金繰り】 今月の状況、小幅ながら窮屈感の高まり続く
【設備過不足】【施設稼働率】 施設稼働率、2期連続の「上昇」超過幅拡大
【雇用】 今月の状況、回答企業の5割が「不足」
【経営上の力点など】 問題点は雇用に関する問題点が上位に
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 29.4KB)

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景況調査報告(2006年2月)第49号(PDF:1.03MB)


【概況】

 「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は前回の29から4ポイント悪化して25となりました。DI値は悪化していますが、回答の内容を見てみると、「悪い」と回答した企業の割合だけでなく「よい」と回答した企業の割合も1%増えて45%となっており、なお愛知経済が高位で安定していることがわかります。また3ヵ月後の次期見通しでも前回調査の24から34と10ポイントもの大幅な見通しの改善がみられます。
 ヒアリング調査においても、この好調さを反映して強気な意見が多数出されました。建設業と製造業においては引き続き、今回の好景気の要因として賃貸マンションなどの住宅建設とトヨタ自動車の好調さが挙げられました。しかし、多くの企業でその仕事量に対応できない状態にあるとの意見も出されました。その理由としてまず挙げられたのが深刻な人材不足です。人手が不足していることから、現在の仕事をこなすのに精一杯で新たな仕事を断る場合があるという意見もありました。この人材不足は建設業・製造業だけでなく流通業やサービス業においても深刻で、いかに雇用を確保するかが大きな経営課題となっているようです。2つ目は設備投資に対する消極的な態度です。多くの企業が今回の好景気はあと2,3年は続くとみているにもかかわらず、積極的な設備投資に踏み切れないようです。なぜなら、それ以降の長期的な展望となると不透明であるうえに、大型の設備投資になると現時点で発注しても納期が2年後となるものも少なくないからです。このように雇用拡大が難しく、また設備投資に対しては消極的であることから供給ネックが生じているようです。今回は自動車関連以外の製造業や個人消費に関連する企業からも少し元気な声も聞かれました。とはいえ、依然として業種間や企業間の格差は解消されていません。
 増税や原材料価格の上昇など見過ごせない懸念材料は多くあります。他方では、2006年3月9日に量的緩和政策も解除され、今後は金利上昇への懸念から住宅の購入や設備投資などの駆け込み需要が増大する可能性もあります。いずれにしても、デフレ脱却あるいはやがて直面するゼロ金利の終焉など、2006年を日本経済の転換の年と位置づけ、それを踏まえた経営戦略をあらためて構築する必要があると思われます。

[調査要項]
 1.調査時  2006年2月20日~2月24日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会、会員企業
 3.調査方法 調査書を電子メール、FAXで発送、自計記入、インターネット専用サイト、FAXで回収
 4.回答企業 2,342社より、462社の回答をえた(回収率19.7%)
  (建設業69社、製造業168社、流通129社、サービス業96社)
 5.平均従業員 33.3人(中央値 14.0人)
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会経営環境調査委員会(委員長、藤田彰男・赤津機械(株)社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行・立教大学経済学部教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況、DI値は悪化するも好調な企業の割合は増大

 「今月の状況」DIは前回調査の29から4ポイント悪化して25となった。業種別に見ても、建設業が35から30、製造業が29から24とそれぞれ5ポイント、流通業が26から22と4ポイント悪化した。サービス業は前回と変わらず26であった。3業種においてDI値が悪化したが、その回答内容を見てみると、「よい」と回答した企業の割合は増加しており、好調さがうかがえる。前年同月比は前回調査の8から14と6ポイント改善した。業種別でみても、建設業(8→28)、製造業(9→14)、流通業(7→11)において改善がみられた。特に建設業における改善が著しいが、これは季節要因も入るものと思われる。サービス業は前回調査と同じ9であった。3ヵ月後の次期見通しも前回の24から10ポイント見通しが改善されて、34となった。業種別においても、建設業(16→24)、製造業(31→45)、流通業(22→29)、サービス業(21→32)とすべての業種において見通しが改善されている。

業況推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
経常利益、わずかに悪化するも高位で安定

 売上高DI(前年同月比)は前回の9から15となり6ポイント改善した。業種別では、建設業が12から16と4ポイント、製造業が11から21と10ポイント、サービス業が2から9と7ポイント改善した。流通業は前回調査と同じ10であった。次期見通しも、前回調査の8から15ポイント見通しを改善させ、23となった。業種別をみても、建設業(△10→4)、製造業(13→29)、流通業(13→27)、サービス業(5→20)とそれぞれ大幅に見通しが改善された。これは建設業をのぞいた3業種で「増加」を見込む企業が4割を超えたことが大きな要因である。
 経常利益DI(今月の状況)は前回の27から2ポイント悪化して25となった。業種別では、建設業が18から30と12ポイント、サービス業が23から24と1ポイント改善したが、製造業では31から21と10ポイント、流通業では30から28と2ポイントそれぞれ悪化した。前年同月比では前回の9にくらべて4ポイント改善し、13となった。業種別に見ても前回と同じであったサービス業(9)をのぞいた建設業(5→13)、製造業(13→15)、流通業(7→12)において改善された。次期見通しも前回調査の17から10ポイント見通しがよくなり27となった。業種別でも製造業で21から32と11ポイント、流通業で26から35と9ポイント、サービス業で9から25と16ポイント見通しを改善させた。この3業種においては、回答企業の4割以上が「黒字」を見込んでいる。なお、建設業は前回調査と変わらず4であった。

売上高推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
「過剰」感弱まる

 今月の状況DIは前回の15から10となり、5ポイントの「過剰」超過幅縮小となった。業種別でみても、製造業(14→13)・流通業(18→6)ともに「過剰」の超過幅を縮小させた。前年同月比では前回調査にくらべて3ポイントの「増加」超過幅が拡大して6となった。業種別では、前回調査で△2と「減少」超過となっていた製造業が、今回再び「増加」超過となり7となった。流通業では12→5と7ポイントの「増加」超過幅縮小となった。次期見通しは前回調査と変わらず8であった。業種別では、製造業が7から9と「過剰」見通しの超過幅を拡大させた一方で、流通業は10から5とその超過幅を縮小させた。

【価格変動】【取引条件】
取引条件、「悪化」超過幅拡大

 価格変動DI(前年同月比)は前回調査の△2から△4となり、2ポイントの「低下」超過幅の拡大となった。業種別では、建設業が10から3と7ポイント「上昇」超過幅を縮小させたのに対し、流通業は2から4となり2ポイントの「上昇」超過幅拡大となった。サービス業は△11から△18となり7ポイントの「低下」超過幅拡大となった。製造業は前回と変わらず、△5であった。次期見通しは、前回調査の△3から0となった。業種別では、建設業が11から3と8ポイント「上昇」見通しの超過幅を縮小させたが、流通業では2から8と6ポイントその幅を拡大させた。また、製造業は前回の△7から1となり、「上昇」見通し超過となった。サービス業では△10から△14と4ポイント「低下」見通しの超過幅が拡大した。
 取引条件DI(前年同月比)は前回の△7から2ポイント「悪化」超過幅が拡大して△9となった。業種別に見ても、建設業(△5→△13)、製造業(△6→△8)、流通業(△8→△10)、サービス業(△6→△7)と全業種において「悪化」超過幅の拡大がみられた。時期見通しは△7で前回とくらべ変化がない。業種別に見ても、建設業(△12:前回と同じ)、製造業(△8→△5)、流通業(△5→△7)、サービス業(△5→△6)とその見通しに大きな変化はなかった。

【資金繰り】
今月の状況、小幅ながら窮屈感の高まり続く

 今月の状況DIは前回の△17から△18となり、1ポイントの「窮屈」超過幅の拡大となった。これで3期連続の拡大となった。業種別では、建設業(△23→△29)・サービス業(△18→△26)で「窮屈」超過幅の拡大がみられたが、反対に製造業(△18→△16)・流通業(△10→△9)ではその縮小が見られた。次期見通しは前回の△20から3ポイント「窮屈」見通しの超過幅が縮小して△17となった。業種別でも、建設業(△34→△32)、製造業(△18→△16)、流通業(△12→△8)、サービス業(△22→△21)を全業種で「窮屈」見通しの超過幅が縮小した。

【設備過不足】【施設稼働率】
施設稼働率、2期連続の「上昇」超過幅拡大

 設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△25から4ポイント「不足」超過幅が縮小して△21となった。業種別では、建設業(△26→△25)、製造業(△33→△25)、流通業(△22→△12)で「不足」超過幅が縮小したが、サービス業だけは△16から△21と5ポイント「不足」超過幅を拡大させた。次期見通しは、前回調査の△22から△19と3ポイント「不足」見通しの超過幅が縮小した。業種別では建設業(△25→△19)、製造業(△26→△24)、流通業(△18→△13)において「不足」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業では△17から△18と1ポイントその超過幅が拡大した。
 施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の5から3ポイント「上昇」超過幅が拡大して8となった。業種別で見ると、製造業は6→9と3ポイントの「上昇」超過幅が拡大したが、流通業は4期連続で変化なく5であった。次期見通しは、前回の6から14となり8ポイントの「上昇」見通しの超過幅拡大となった。業種別では製造業が6→20と大幅に「上昇」見通しの超過幅を拡大させた一方で、流通業は6→4とわずかながらその超過幅を縮小させた。

【雇用】
今月の状況、回答企業の5割が「不足」

 今月の状況DIは前回の△39から△43となり、2期連続で「不足」超過幅が拡大した。業種別においては、流通業で△35→△40と5ポイント、サービス業で△33→△49と16ポイントそれぞれ「不足」超過幅が拡大した。大幅に「不足」感が高まったサービス業では55%の企業が「不足」していると回答した。反対に、建設業では△49→△43と6ポイント、製造業で△42→△41と1ポイント「不足」超過幅が縮小した。次期見通しは前回の△39から△38とわずかに「不足」見通しの超過幅が縮小した。業種別では建設業(△46→△32)、製造業(△41→△38)、流通業(△37→△36)において「不足」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業では△34から△45と大きく見通しの超過幅を拡大させた。

【経営上の力点など】
問題点は雇用に関する問題点が上位に

 全業種でみた「経営上の問題点」は「従業員の不足」(31%)が2期連続で第1位となった。以下は第2位に「人件費の増加」(25%)、第3位に「仕入れ単価の上昇」および「販売先からの値下要請」(24%)が続いている。業種別ではサービス業の第1位に「新規参入者の増加」(38%)、製造業の第4位に「熟練技術者の確保難」(25%)が挙げられていることが特徴的であった。また、文書回答でも「人材確保」など労働者の不足を問題視する回答が多く出された。
 「経営上の力点」は、全業種でみると「付加価値の増大」(57%)が第1位となっている。次いで第2位が「新規受注(顧客)の確保」(55%)、第3位が「社員教育」(36%)であった。業種別では徴的なのは、「人材確保」が流通業の第3位(29%)、サービス業の第4位(32%)になっていることである。文書回答では、「仕入確保」が指摘された。

<会員の声(業種別)>

(1)建設業
●建設業の今月の業況判断は、35から30と5ポイント悪化しました。しかし前年同月比8から28と大幅に改善され、次期見通しも16から24と改善が見られます。このように、今月の業況つまり年初が下がるのは季節要因と考えられ、全体としては好況が持続していると言えます。特にマンションなどは賃貸も分譲も増えていますが、受注はあっても作る方が人手不足で作れないという状況が起こっているほど、人手不足は深刻です。このことは会員の皆さんの声からも明らかです。この状況は今しばらく続きそうですが、一方で人手不足だけでなく、資材の値上がりなどの不安材料も広がっています。(事務局・山田)

1.総合建設業
・官公需は判らない。耐震で基準に満たないものは増築することができない。具体的な例では3階立てに増床する予定だった学校が、2階建てのまま。民間の仕事は東京のデベロッパーが名古屋に入ってきているが、人手不足で仕事を取ってもできない。そこで我々の所へもJVを申し込んできている。我々自身も次の仕事をいつ取ったらよいか迷っている。(A社)
・年度末(3月)までだと思うが、例年になく人手不足感がある。(B社)
・特に型枠工、鉄筋工、左官工など建築工事の躯体職人の不足が顕著になってきた。(C社)
2.建築・リフォーム業
・当社は住宅のリフォームが中心だがずいぶん受注が増えた。差別化の戦略を取ってきたのが当たったのか、一般的な状況で増えたのかはよく判らない。(D社)
・昨年秋より悪徳リフォーム業者がマスコミに報道され、さらに耐震構造偽造などで建築業界そのものが不信を招きユーザーマインドの低下により新規引合い件数が減少した(E社)
・建設資材の価格が多方面で上昇傾向にある。今後この点に関し、見積・受注時十分注意する必要がある。(F社)
・周りの声はそこそこの声を聞くが、乗り遅れた感がある。 営業力をつける方向で立て直しを図る。(G社)
3.電気工事業
・官公需(名古屋市)は地元本店業者にある程度やらせる方針になった。しかし改修ものが多い。民間の仕事も多いが人手不足。他の業者に応援を頼もうにもどこからも断られる状況。資材の値上がりもすごい。現場で盗まれることもしばしば。(H社)
・人手不足が深刻で、仕事受注量を制限しているのが現状(I社)
・職人の不足が顕著にあらわれている。(J社)
4.土木工事業
・仕事自体はあるが、単価が上がらない。(K社)
・発注側のなんでもかんでも安くしてという状況によって、本来のいいものをお客さんにとか、より良い物を相手に提供したいという生産性のある我々の気持ちを優先させる事が出来ずに、それなりの物になってしまうのが、イヤでしょうがない。(L社)
5.水処理プラント
・官庁関係の仕事は予算の削減で価格の下落傾向は依然継続中。発注方式が指名競争から一般競争にどんどん変わり営業のやり方の変革を迫られている。(M社)
6.給排水設備
・人材不足でかなり困っている。(N社)

(2)製造業
●「高位安定」-製造業の各DI値全体状況として、「今月の状況」はややダウンするも「前年比」および「次期見通し」はアップ、という高位安定の波が続いています。(各DI値-売上:「前年比」11→21,「次期」13→29、業況:「今月」29→24,「前年比」9→14,「次期」31→45、経常利益:「今月」31→21,「前年比」13→15,「次期」21→32)
また、業種業態を問わず生産財など川上分野でのピーク感が、すでに3年以上経過した今でも、消費に近い川下分野へほとんど波及されないという構造的問題は解決されていません(「技術革新ではなく海外輸出依存型であり、古い産業システムによる不健全な景気」との指摘もあります)。
しかし、今回の調査では、これまで非常に厳しい状況にあった印刷業において改善傾向が見られました。川下分野で「少し明るい兆し」の声も、やっと一部に出ました。これが実態の姿だといえます。多面的な二極化が複雑に進行する中、政策にはより一層きめ細かな舵取りが求められます。
今回の調査で、特徴的な点として、「人件費の増加」を経営上の問題点とする件数の増加、そして「社員教育」を経営上の課題とする件数の増加が目立ちました。求人採用コストの大幅上昇や、多忙業務における人材育成の困難な状況が聞かれます。外国人雇用における量と質の変化についても聞かれました。すでに、人口減を見越した女性雇用対応へのインフラ整備や、不安定雇用依存から脱却してノウハウの社内蓄積を着実にはかっている企業の声も聞かれました。
大型設備投資については、意欲は強くあるものの「納期1~2年」の状況に「2年先の納入では計画判断ができない」と別の方法で現場対応する姿が見られました。
長期的展望でより一層広い視野を持ち、議論などを踏まえた確実な情報収集と、的確な判断が求められているといえます。(事務局・加藤)

1.繊維関連
・引続き厳しいが、多少明るさが感じられるように思う。(A社-工業用繊維)
・供給過剰で品質基準も年々厳しく採算を圧迫。経営努力が環境変化のスピードに追いつけない。(B社)
2.印刷関連
・飲食店関係でやや動きが出始めた。(C社)
・原材料値上げが価格に反映されず、体力勝負による一層の二極化が進行している。(D社)
3.電気設備・機械関連
・機械メーカーの試作や電気設備関連の設計試作など多方面に渡り仕事量はピーク。大手から中小企業まで設備投資は増加しており全般的に強気である。友人も土地を探している。(E社)
・特殊な機械が日本で製造できなくなった。鋳物やベアリングでは輸出したものを買い戻している。(F社)
4.自動車関連
・独自技術があってもコストダウン要請は定例行事。親企業の指導により人件費の変動費化を行ったが技術力向上にマイナス要因となり見直している。しかし利幅が薄く固定費化も困難である。(G社)
・業務多忙だが夜勤や残業代等で利益が出ない。得意先も価格競争で厳しい状況。現在は量が出ているので何とかなっているが、今後のことを考えると売れる新規製品を早く作らなくてはいけない。(H社)

ご参考 = 高収益企業への転換事例

~客先分散をはかることで高収益企業へと転換した事例をご紹介します~
・主要3社依存から50社へと客先や業種分散をはかり、新しい技術課題に直面するごとに技術を社内蓄積する。「ものづくりの前に人づくり」の姿勢で、経営者の確固とした「人間観」と「理念」にもとづく粘り強いコミュニケーションにより、工程改善と社風改革を行い、熟練技術の計画的継承も実践する。量産は受注せず、利益率の良い小ロット短納期ものを得意分野と定める。ノウハウの蓄積が新しい客先を呼び込み、安定した高収益企業へと転換している。(金属工業I社)

(3)流通業
●「業況判断」DI(以下全てDI値)の『今月の状況』は、26→22と↓4悪化、『前年同月比』は7→11と↑4改善、『次期見通し』は22→29と↑7改善です。『今月の状況』の内訳は「経常利益」が30→28と↓2悪化、「在庫感」が18→6と↓12悪化、「資金繰り」が△10→△9と↓1とほぼ変わらず、「設備の過不足」だけが△22→△12と↑10改善しています。『前年同月比』では、「経常利益」7→12と↑5改善、「在庫感」12→5と↓7の他は大きな変化なし。『次期見通し』では、「売上高」13→27と↑14、「経常利益」で26→35と↑9、ともに大きな期待が寄せられています。『経営上の問題点』は、「従業員の不足32.6%、販売先からの値下げ要請22.5%が、『経営上の力点』は全業種、全規模を通して、「付加価値の増大」「新規の確保」が、1・2位を占めています。 
全体として二極化がさらに進んでいます。好業績で仕入れが追いつかないといわれた業界も一定の落ち着きが見られますが、利益率の確保はさらに厳しさを増しています。人材不足の反面、人件費が経営を圧迫しているとの声も聞かれます。(事務局・服部)

1.ソフト関連
・景気回復も進み、設備投資も増えているが、既に中国、インドなどとの価格競争の中に入っている。 今後、ますます国際競争の只中に入っていくのが実感できる。(A社)  
・大企業が価格を抑えて受注し、下請けに丸投げ。結果的に下請け企業が赤字の押し付けをされた感を受ける。特にIT系企業は商慣習が未成熟で、その憂き目にあっている企業もある。(B社)
2.運輸関連
・年度末が近づいている為か忙しく、下請業者を確保したい時に確保できない状況がある。(C社)
3.小売関連
・11月から1月期にかけて社員募集を多方面にかけたが、全27店舗で8名と過去最低の状況。人件費(基本給)の見直し、及びパートタイムへの時給の見直しが必要とされている。(D社)
・横這いの推移。消費経済の拡大、安定には今一歩の状況である。(E社)
・ISOをはじめとする管理体制が顧客より要求されている。中小企業にとって、「管理を増やす」というのは負担が多いが、組織を強くするツールと考え、取得に向けて取組んでいる。(F社)
4.自動車関連
・中国の資材需要が旺盛で、商品によっては品薄感が出ている物がある。(G社)
・一部に良い企業も見られるが、私の周辺は、1:9で苦しい所だらけ。 大元から流れてくる間に、おいしい所は全部吸い取られて、去年より利益率の低下が著しくなっている。(I社)
・設備の需要は今後縮小していくとの情報もあるが、現場では3月以降も得意先からの注文は減少しないとの報告が多い。業界の通例として設備需要は急下降するので要注意。人材確保ができない。(J社)
・景況の先行きがどうなるのか大変読みづらい。中期経営計画の目標を立てて、これを毎日念じて事に当れば必ず成就するという信念で経営している。(M社)
5.建築関連
・建築業界で使われている木材の8割が輸入物。国産材は2割しかない。その2割の中で勝負しようとするときついものがある。日本の山は急峻で運び出すだけで労賃がかかる。しかし、これを引き継いでくれる人材を育てなければ日本の山と環境はどうなるんだと思って頑張っている。(N社)
6.印刷関連
・取引件数は変わらないが、注文が細かくなり、その分配送や仕分けに時間も労力も取られる。春にはメーカーが原油高から一斉に値上げをするといってきている。普通なら買いだめ需要が出るところだが現状では何の動きもない。売れる当てがないから買いだめの気が起こらないのだと思う。(O社)
7.クリーニング資材・機械販売
・業界全体のパイは減り続けている。ユーザーは価格競争が続き、単価の下落がおき、石油関連の値上げ、経営を圧迫してきている。(L社)