景況調査

第58号-2008年5月
景気は後退局面へ

【概況】
【業況判断】 今月の状況、6期連続の悪化
【売上高】【経常利益】 売上高、悪化に歯止めかからず 経常利益、次期見通しで5年ぶりの「赤字」見通し超過
【在庫】 過剰感に大きな変化なし
【価格変動】 仕入価格、上昇止まらず 販売価格、建設業を除いて上昇傾向に
【取引条件】 前年同月比、建設業で3割が悪化
【資金繰り】 建設業で著しく窮屈感高まる
【借入金利】 短期借入・長期借入ともに大きな変化なし
【施設稼働率】【設備過不足】 施設稼働率、製造業で「低下」超過幅が拡大 設備過不足、今期も大きな変化なし
【雇用】 不足感、緩和傾向に
【経営上の力点など】 経営上の問題点、5期連続で「仕入単価の上昇」がトップ
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 116KB)

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景況調査報告(2008年5月)第58号(PDF:1.24MB)


【概況】

 「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は前回の△6から7ポイント悪化して△13となりました。これで6期連続の悪化です。前年同月比も前回の△17から△33と16ポイントもの大幅な悪化となっており、いよいよ愛知景気も後退局面に入ったと考えられます。
 ヒアリング調査でも、景気後退局面に入ったことを裏付ける意見が相次ぎました。今回、製造業は大幅な落ち込みとなりましたが、仕事量の減少と原材料価格および原油価格の高騰がその要因として挙げられました。先行きに関しては、トヨタ自動車の設備投資額削減の見通しもあり、関連企業はこれまでの強気な生産計画を変更せざるをえない状況となってきているようです。また、これまで度々指摘されてきた生産拠点だけでなく、開発拠点も愛知から他県や海外への移転が予測されるなど、愛知の自動車関連企業を取り巻く経営状況は、この先いっそう厳しくなることが懸念されます。
 建設業の悪化にも歯止めがかかりません。建築審査の厳格化を定めた改正建築基準法(昨年6月施行)による建設業界の混乱は、次第に確認件数が増加していることから落ち着きをみせつつあるとはいえ、いまだに解消されたとは言い難いようです。しかも、確認申請がおりたとしても、その間に進行した資材価格の高騰のために着工されないというケースが増えてきているようです。加えて、官需の停滞も業況悪化の要因として指摘されました。
 消費関連企業においても食品・原油価格の高騰は大きな問題として取り上げられました。また、4月を境に個人消費の減退が鮮明になってきているとの意見もありました。
 今回のヒアリング調査では、現状だけでなく先行きについても明るい意見は聞かれませんでした。3カ月後の次期見通しが△9という厳しい数値となっており、しばらくはこの状態が続くとみている企業が増えてきているようです。さらに追い打ちをかけるように、天井の見えない原材料・燃料価格の高騰、米国経済の後退など、景気悪化へとつながる材料は枚挙にいとまがありません。
 今こそ、不況期に対応できる経営戦略の構築が求められます。

[調査要項]
 1.調査時  2008年5月21日~5月28日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会会員企業
 3.調査方法 調査書を電子メール、FAXで発送、自計記入、インターネット専用サイト、FAXで回収
 4.回答企業 2,736社より、741社の回答をえた(回収率27.1%)
  (建設業128社、製造業220社、流通202社、サービス業191社)
 5.平均従業員 34.4人(中央値 11.0人)
 なお、本報告は愛知中小企業家同友会経営環境調査委員会(委員長、藤田彰男・赤津機械(株)社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行・立教大学経済学部教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況、6期連続の悪化

 「今月の状況」DIは前回の△6から7ポイント悪化して△13となった。これで6期連続の悪化である。業種別でみると、建設業が△12から△20と8ポイント、製造業が△6から△25と19ポイント、流通業が△12から△14と2ポイント、サービス業が6から5と1ポイント悪化した。全業種において悪化したが、なかでも製造業の悪化幅は大きく、5割近い企業が「悪い」と回答した。前年同月比も前回の△17から△33と16ポイントの悪化となった。これは半数以上の企業が「悪化」と回答したためである。業種別では建設業が△32から△52と20ポイント、製造業が△18から△39と21ポイント、流通業が△16から△36と20ポイント、サービス業が△4から△8と4ポイントと全業種において悪化がみられた。5期連続の悪化となった建設業では「悪化」と回答した企業が65%にものぼった。3カ月後の次期見通しは前回の2から△9と、「悪化」見通し超過に転じた。業種別で見ても建設業では△7から△9と2ポイント、製造業が△1から△16と15ポイント、流通業が3から△16と19ポイント、サービス業が12から5と7ポイントそれぞれ見通しを悪化させた。

業況推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

業況推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【売上高】【経常利益】
売上高、悪化に歯止めかからず。経常利益、次期見通しで5年ぶりの「赤字」見通し超過

 売上高DI(前年同月比)は前回の△12から3ポイント悪化して△15となった。これで5期連続の悪化である。業種別では建設業において△19から△38と19ポイント、製造業において△16から△23と7ポイント悪化した。サービス業では2から4と2ポイント改善した。流通業は△12と前回から変化がなかった。次期見通しは前回の△7から△16と9ポイント見通しを悪化させた。業種別でみても、全業種において見通しが悪化しており、建設業が△20から△34、製造業が△12から△21、流通業が△5から△15、サービス業が7から1となった。
 経常利益DI(今月の状況)は前回調査の1から変化がなかった。業種別では建設業(△12→△23)・製造業(△3→△14)がともに11ポイント悪化したが、流通業が2から14と12ポイント、サービス業が15から21と7ポイント改善した。前年同月比は前回の△19から△28と9ポイント悪化した。業種別では建設業が△35から△49と14ポイント、製造業が△18から△39と21ポイント、流通業が△17から△26と9ポイント悪化した。なかでも「悪化」超過幅が大きい建設業では回答企業の61%が、製造業では回答企業の55%が「悪化」したと回答している。一方、サービス業だけは△9から△3と6ポイント改善した。次期見通しは前回の2から△5と2003年5月調査以来5年ぶりの「赤字」見通し超過となった。業種別でも建設業が△13から△25と12ポイント、製造業が△6から△19と13ポイント「赤字」見通しの超過幅が拡大した。流通業は10から7と3ポイント、サービス業が16から14と2ポイント「黒字」見通しの超過幅が縮小した。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【在庫】
過剰感に大きな変化なし

 今月の状況DIは前回の17から2ポイント「過剰」超過幅が縮小して15となった。業種別では製造業が18から17と1ポイント、流通業が15から12と3ポイント「過剰」超過幅が縮小した。前年同月比は前回の8から7とわずかに「増加」超過幅が縮小した。業種別で見ると、製造業(5)は前回調査から変化がなかったが、流通業では11から9と2ポイント「増加」超過幅が縮小した。次期見通しは前回の13から3ポイント「過剰」見通しの超過幅が縮小して10となった。業種別では製造業(14→10)において「過剰」見通しの超過幅が縮小したが、流通業(11)では変化がなかった。

【価格変動】
仕入価格、上昇止まらず 販売価格、建設業を除いて上昇傾向に

 仕入価格変動DI(今月の状況)は前回の65から68と3ポイント「上昇」超過幅が拡大した。これで3期連続の拡大である。業種別では製造業(45→46)・流通業(51→59)・サービス業(45→50)において「上昇」超過幅が拡大したが、建設業(79→77)では「上昇」超過幅が縮小した。前年同月比も前回調査の64から69と5ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別では、製造業(42→45)・流通業(54→59)・サービス業(40→54)においては「上昇」超過幅が拡大したが、建設業では79から76と3ポイント「上昇」超過幅が縮小した。次期見通しは前回調査の59から変化がなかった。業種別に見ると、建設業においては73から67と6ポイント「上昇」見通しの超過幅が縮小したが、流通業(48→49)・サービス業(38→44)においては「上昇」見通しの超過幅が拡大した。製造業(41)に変化はなかった。
 販売価格変動DI(今月の状況)は前回の1から6と「上昇」超過幅が拡大した。業種別では、建設業が2から△4と「低下」超過に転じた。しかし、「低下」超過に転じたとはいえ、「上昇」と回答する企業数自体は増加している。製造業では△6から6と2007年8月の調査開始以来はじめて「上昇」超過となった。流通業(6→13)・サービス業(4→5)では「上昇」超過幅が拡大した。前年同月比は0から7と7ポイント「上昇」超過幅が拡大した。業種別では製造業が△4から9と「上昇」超過に転じた。流通業(5→14)・サービス業(2→7)において「上昇」超過幅が拡大した。建設業(△7)において変化はみられなかった。次期見通しは前回の3から変化がなかった。業種別では建設業(△3→△2)においては「低下」見通しの超過幅が縮小した。製造業(△1→1)では「上昇」見通し超過に転じた。流通業(7→10)では「上昇」見通しの超過幅が拡大したが、サービス業(7→2)ではその幅が縮小した。

【取引条件】
前年同月比、建設業で3割が悪化

 前年同月比DIは前回の△10から△14と4ポイント「悪化」超過幅が拡大した。業種別では建設業が△13から△23と10ポイント、製造業・流通業がともに△10から△12と2ポイント、サービス業が△9から△14と5ポイント「悪化」超過幅を拡大させた。次期見通しは前回の△11から△12とわずかに「悪化」見通しの超過幅が拡大した。業種別で見ると、建設業(△13→△18)・サービス業(△2→△13)において「悪化」見通しの超過幅が拡大したが、製造業(△15→△11)・流通業(△11→△10)では「悪化」見通しの超過幅が縮小した。

【資金繰り】
建設業で著しく窮屈感高まる

 今月の状況DIは前回の△36からわずかに「窮屈」超過幅が拡大して△37となった。業種別では建設業が△39から△58と19ポイント、流通業が△29から△30と1ポイント「窮屈」超過幅が拡大した。今回、大きく「窮屈」超過幅が拡大した建設業では、「余裕」があると回答した企業はわずか6%しかなく、反対に「窮屈」であると回答した企業は6割以上となっている。製造業は△44から△42と2ポイント、サービス業が△31から△23と8ポイント「窮屈」超過幅を縮小させた。次期見通しは前回の△33から△41と8ポイント「窮屈」見通しの超過幅が拡大した。業種別では建設業(△41→△61)、製造業(△45→△48)、流通業(△25→△35)、サービス業(△17→△27)と全業種において「窮屈」見通しの超過幅を拡大させた。

【借入金利】
短期借入・長期借入ともに大きな変化なし

 短期借入金利DIは前回調査の11から変化がみられなかった。業種別では建設業(9→13)・サービス業(6→10)においては「上昇」超過幅が拡大したが、製造業(12→11)・流通業(13→9)においてはその幅が縮小した。  長期借入金利DIは前回の13からわずかに「上昇」超過幅が縮小して12となった。業種別では建設業(6→7)・サービス業(5→12)で「上昇」超過幅が拡大したが、製造業(18→14)・流通業(16→13)においては「上昇」超過幅が縮小した。

【施設稼働率】【設備過不足】
施設稼働率、製造業で「低下」超過幅が拡大。設備過不足、今期も大きな変化なし

 施設稼働率DI(前年同月比)は前回の△9から△18と9ポイント「低下」超過幅が拡大した。業種別では製造業が△11から△26と15ポイント「低下」超過幅が拡大したが、流通業(△6)では変化がみられなかった。次期見通しは前回の△9から△15と6ポイント「低下」見通しの超過幅が拡大した。業種別では、製造業(△12→△17)・流通業(△4→△12)ともに「低下」見通しの超過幅が拡大した。
 設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△14から変化がなかった。業種別では建設業は△15から△18と3ポイント、サービス業は△20から△21と1ポイント「不足」超過幅が拡大した。製造業は△14から△10と4ポイント「不足」超過幅が縮小した。流通業(△10)は変化がなかった。次期見通し△15から△14と1ポイント「不足」見通しの超過幅が縮小した。業種別では建設業(△20→△18)・製造業(△13→△10)・流通業(△12→△10)においては「不足」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業が△19から△20とわずかに「不足」見通しの超過幅は拡大した。

【雇用】
不足感、緩和傾向に

 今月の状況DIは前回の△33から9ポイント「不足」超過幅が縮小して△24となった。これで3期連続の「不足」超過幅の縮小である。業種別で見るも建設業が△36から△27と9ポイント、製造業が△22から△10と12ポイント、流通業が△41から△26と15ポイント、サービス業が△39から△37と2ポイントの「不足」超過幅の縮小となっており、全業種において約3年続いた高位での不足感に緩和傾向が見られるようになった。次期見通しは前回の△29から△25と4ポイント「不足」見通しの超過幅が縮小した。業種別では建設業(△35→△31)・製造業(△21→△11)・流通業(△35→△29)において「不足」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業だけは△30から△33と3ポイント「不足」見通しの超過幅が拡大した。

【経営上の力点など】
経営上の問題点、5期連続で「仕入単価の上昇」がトップ

 全業種で見た経営上の問題点は、「仕入単価の上昇」が44%で第1位に、次いで「民間需要の停滞」(36%)、「人件費の増加」(22%)となっている。業種別に見て特徴があったのは、サービス業で「新規参入者の増加」(27%)、製造業で「仕入先からの値上要請」(34%)が第3位になっていることである。文書回答では、「工事着工件数の減少」、「市場の冷え込み」などがあった。
 全業種における経営上の力点は「新規受注(顧客)の確保」(60%)、「付加価値の増大」(54%)、「社員教育」(35%)が上位にきている。業種別では流通業で第3位、建設業で第4位に「財務体質の強化」が挙げられたことが特徴的であった。文書回答では「生産性の上昇」などが挙げられた。

<会員の声(業種別)>

(1)建設業
●業況判断DIにおける「今月の状況」は△12から△20、「前年同月比」も△32から△52、さらに「時期見通し」も△7から△9と、全ての指標が水面下からさらに大きく悪化しました。
建築基準法の改正で確認申請が下りなくなっている問題は、やっと少し落ち着きを見せつつも今だまだら模様が大きく、一方で原材料の値上がりが激しく、せっかく許可が下りても着工ができないケースも出ています。また、競争が激しくダンピングをして取っていくところがあり、販売価格への転嫁が困難です。資金繰りにも深刻な影響を与えており、DI値で見ると、△39から△59と窮屈になっています。特に小規模なところが大変深刻な状態にあります。
(事務局 山田)

1.総合建設
・建築確認申請による工事着工件数の激減、道路特定財源の一般財源化から、今後の公共事業の激減が予想される。(A社)
・鉄、アルミ、石油などの資材価格上昇が強い。川下になればなるほど影響が大きくて、われわれクラスでは値上げをお客様に転嫁しずらい。先行き不透明な環境で、新規建設投資や増改築のマインドが低下しており工事自体が減っている。(B社)
・景気の悪化で、個人の住宅取得意欲が下がってきているようだ。また、民間企業も同様に設備投資意欲が下がり様子見の状態であると思われる。(C社)
・官公庁工事の原価率はますます下がり、とても厳しい状態が継続している。ただここへきてやっと、民間住宅新築やリフォームの引き合いが多くなり、大工職など不足し始めている。しばらくは、強気でいきたい。(D社)
2.型枠工事、鉄骨工事など
・建設業ではいまだに確認申請の遅れによる未着工の工事が多々ある。原材料の高騰により見切りスタートした仕掛かり分の代金が留保されているため、協力業者へ先払いの資金繰りに厳しい面がある。また、上記理由により、確保した人材が適正に配置されず、次回の工事では人材確保に困難が生じている。(E社)
・今年は昨年以上の倒産がおきそうだ。(F社)
・いつ着工できるのか解らないが受注している現場が複数ある。 建築確認申請許可が今後もこのままのペースだと、同時着工になる可能性があるため受注が出来ない。(G社)
・仕事量が少なく先行きが暗い。 取引先の安全会議では、売り上げ確保のため値引きしてでも仕事をとるとの話だが、 下請けのうちとしては、赤字の仕事は請けたくないのが本心である。(H社)
3.電気工事、住宅設備、屋根工事、設計監理
・建築確認の遅れが、業界全体の低下を招いている。景況感が冷え込んでおり、簡単には戻りそうも無い。受注先もかなり絞られ、勝ち組がはっきりしている。(I社)
・建築基準法改正の影響が大きく、その改善速度も悪い。付加価値商品を売る弊社としては大変に厳しい。(I社)
・石油、鉄製品の値上げが続くが同業者は価格を当面据え置く方針を出しており、資材価格の上昇を価格に転嫁できない。(J社)
・業界内で倒産や廃業する会社が出始めている。工事業者も差別化して淘汰されないようにしないと屋根業界はこの先ますます厳しい職種になっていくのは 間違いない。(K社)
・昨年来上がり続けた建設費が春頃から競争入札で下がり続けている。(M社)
・資材高騰や納入遅延による工期の長期化、コストアップが発生している。設備投資の延期・中止による景気の後退が心配である。(N社)

(2)製造業
●製造業の業況感は急速に悪化が拡がりました(*グラフ参照、以下「今月の状況」DI値)。経常利益は赤字超過幅を拡大(△14)、雇用動向は不足感が緩和傾向(△10)です。販売価格がやっと少しプラス(+6)に転じましたが仕入価格の上昇継続(+46)に対し微増であり、資金繰り(△42)は厳しい局面が続いています。
一部の量産分野などを残して多くが悪化しています。特に、建材住設関連や繊維、窯業などは厳しく政策が問われます。「売れる現地で開発・調達・製造すべて行う」という大企業行動からの中小企業への厳しい選別、「若者が車に乗らない」という国内市場変化、環境対策や地産地消の動きなど、大きな変化も始まっています。
(事務局 加藤)

1.食品、繊維、窯業関連
・原材料の奪い合いが始まっており確保に動かざるを得ない。価格設定が困難となり新商品開発に苦慮している。(A社)
・量販店が直輸入し始めて物流が全く変わった。急激な変化についていけず、小売価格据置政策と卸値値上げの板ばさみから動けない。値上げは顧客離れに繋がる。(B社)
・食品製造の原材料や油の高騰により採算割れが続き、廃業に追い込まれる会社もある。特に小零細企業は精神的不況に陥っている、(C社)
・瓦業界がこんなに厳しいのは未だかつてない。中堅メーカーの窯の火は消えたままで大変なことになっている。愛知の地場産業、日本の瓦文化の危機である。(D社)
2.建材、住設関連、特殊印刷
・サブプライム問題と改正建築基準法施行により業界全体が低迷。赤字でも営業する会社が増加している。大手は部門別採算が取れないところをやめていき、中小は行き着くところまで行くという状況である。政官財のビジョン不在による閉塞事態だ。(E社)
・大型物件が建たないため商品が動かない。住宅関連業界の倒産は増加する。(F社)
・仕事絶対量の低下、他社との価格比較により値上げは仕事がなくなる。(G社)
3.機械部品、設備、治具、金型関連
・営業努力で売上を確保するも資材高で利益率が目に見えて落ちていく。技術力のアップと機械化促進が必要だ。また、業界の二極化が顕著に見られるようになった。(H社)
・自動車関連の動きが押えに入っている。取引先の残業がなくなり、定時納品を要請されるようになった。夏頃また出るという一部情報もあるが、厳しい情報が多い。品質、納期の要求も増し採算性が悪化するが、対応できればチャンスかもしれない。(I社)
・メーカーは、生産ラインだけでなく、開発・調達・工場設備のすべてを中国に移管する。市場を求めて海外に出ていっている。広告宣伝費も海外の方が多く日本で売る気がない様子。国内需要は激減。活路を見出すべく各地を業態間ニッチ情報など収集中・・。(J社)
・受注減で低価格競争が激化し採算割れもある。新技術でカバーを図るが困難(K社)
4.樹脂部品、金属部品関連
・資材価格上昇を全ては認めてもらえず、コストダウン要請と数量減少による採算性の急速な悪化で危機感を感じている。材料が入手できなくなる可能性もある。(L社)
・大手企業が利益確保のため、下請けにとんでもない安い単価を押付けてくる。(M社)
・メーカーの方向は軽量化、価格UP、コストダウンの3択だろう。(N社)
・07年に主力車種が一巡したが今期は予想以上に悪い。情報収集に努めた結果、今後は「開発力」が自社の道だと確信した。「売れるところで売る」の方針についていくためには、人材、体力、技術力の全てが必要。(O社)
・利益減少要因が経営に大きく響くが、他社が後ろ向きで動きづらい今がチャンスと捉えて、営業、技術、製造など企業体質を強化し、果敢着実に差別化を推進する。(P社)

(3)流通業
●今月の状況は、業況判断が△12から△14と悪化し、経常利益が2から14と改善しました。経常利益の12ポイント増の内訳は、「赤字」から「黒字」「トントン」への好転となっています。また、仕入価格が高騰する一方、販売価格になかなか転嫁できない状況が依然と続きながらも、今期は仕入・販売とも7ポイント改善、前年同期比・次期見通しからも若干の緩和が見られます。こうした状況は業界全体にわたっていますが、厳しい実態も浮き彫りとなっており、ばらつきが感じられます。
「ものの動きが鈍すぎる」という声が聞かれるように、経営上の問題点のトップは「民間需要の停滞(39%)」、次いで「仕入れ単価の上昇(37%)」があげられ、経営上の力点は「新規受注(顧客)の確保」「付加価値の増大」「財務体質の強化」「人材確保」「社員教育」の順になっています。
(事務局 岩附)

1. 通信情報、運輸
・ 金融やアメリカの減速から設備投資、車製造の低下が国内メーカ全般の弱体化へ繋がり、発注案件が減少し危機感がある。多くの業界で、技術的にも製品の浸透度においても成熟感があり、新規の製品開発が弱くなったのではないか。(A社)
・ 運送業にとって燃料高騰は死活問題。6月も既にリッター10円の値上げ要請が来ており、7月も6円程度の値上げが予想される。燃料価格の値上げ幅が大き過ぎて数パーセントの上げ幅ではとてもカバー出来ない。努力にも限度がある。(B社)
2.繊維・衣服・生活関連
・ 大手数社が倒産し一時は業界もかなりの沈滞ムードだったが、ここに来てやや落ち着いてきた。商品の供給不足、値上がり感も今のところあまり感じない。(C社)
・ 仕入価格の上昇に歯止めが利かない上、値上げ申請がなかなか通らない。(D社)
3.飲食料品
・ 消費の減退や生活防衛が、売上減に現れ始めたと思われる。(E社)
・ 原油価格高騰が全てのものに影響し、値上げラッシュと原料不足が慢性的になってきた。水産加工業界はすり身の手当てが困難になっており、小規模業者へはまわらない状況だ。大手業者はタイ、ベトナムで直接買い付けしている。(F社)
4.建材、自動車
・ 先日、スーパーゼネコンの決算報告がされたが軒並み減益だった。今まで安値の押しつけでずっと苦しんでいたが、原材料が上がる中厳しい押しつけが予想される。今後、建築業界は大変な時期に入ると思われる。(G社)
・ 自動車関連では、実際の受注はさほど落ちていないが、先行きは不透明感が強い。今後得意先が購入するものの見直しをかけると同時に値下げ要求が来ることも間違いない。VE・VA情報とクレーム対策に意を注いでいく。(H社)
5.機械器具
・ 一軒の顧客とは年に1~2回の取引となるため比較的価格転嫁はし易いが、やはり限度はある。 長期的にはカナモノ以外の分野への進出が必要と考えている。(I社)
・ 仕入単価の値上げが続き、顧客に対しては競合他社との絡みもあり値上げがしにくい。OA機器の乱売で利益どころか赤字になってしまう。(J社)
6.保険・不動産
・ 損害保険分野においては、各損保会社は代理店に対し手数料率の算出を変化させじわじわカットしている。(K社)
・ 分譲住宅は、昨年後半から潮目が変わり、業況がより厳しくなってきた。不況感により売買仲介業は追い風が吹いており業績の拡大は見込める。(L社)

(4)サービス業
●業況判断DI値は5期連続で下がり、次期見通しも下降が予測されています。経営上の問題点は「従業員の不足」「人件費の増加」についで「新規参入者の増加」が上位に回答され、「度重なる法改正により様々な分野で事務作業が増加した。コンプライアンス対応に本当に振り回されている。」という声と共に、経営上の力点として「新規受注」「付加価値増大」についで、人員の戦力化のための「社員教育」「人材確保」があげられています。各DI値の推移(前回2月調査→今回5月調査)は以下です。*グラフ参照
「今月の状況」業況6→5、経常利益15→21、「前年同月比」業況△4→△8、売上2→4、経常利益△9→△3、「8月見通し」業況12→5、売上7→1、経常利益16→14
(事務局 浅井)

1.飲食、健康、美容
・居酒屋業界は昨年10月より総店舗数が減少している。まさに体力勝負であり、「値上げ」のタイミングやどうやって利益確保をするか、今判断を誤ったら経営が危ないと思っている。(A社)
・他の業種の景気回復に伴い求人が増加すると、美容業界は求人難となり人材確保が困難となりやすい。美容学校も定員割れをはじめた。 実際には独立出店が増加しているが、後継者がなく廃業も増加している。(B社)
・人材確保の困難、人件費高騰、原材料高騰による内装費の上昇がトリプルで苦しい。学び市場であるスクール事業の方は伸びてきている。(C社)
2.産廃処理、リサイクル関連
・全業種から廃棄物が入ってくるので、廃棄物の発生量で景気の下降局面がはっきり分かる業界である。建設確認遅延問題以降の同業他社の価格競争激化により、仕事量が減少し仕事の奪い合いが始まっている。全体的に発生量が少なくなっていることと、競争の激化による仕事量の激減をカバーするためにも新規事業を立ち上げ中である。(C社)
・業界的には二極化が進んでいる。自社の強みをいかに伸ばすかを考える以上に、弱みを早急に解決する動きをとらねば生き残れない。 強靭な経営体質を目指す上で、問題を課題として取り組める環境を創り上げねばならないと思う。(D社)
3.技能・コンサルタント
・司法書士業界は、本人確認作業の追加・その記録作成など本業以外の事務が増加し、時間と手間がかかっている。事務が増加しているので、従来の業務を改善する必要が多くある。(E社)
・婚礼業界でオンリーワン・サプライズをキーワードに企画・演出・司会・プロデュースをしている。東京資本の新規参入で婚礼会場が増加し、従来のお取引先の、新郎新婦の成約件数が減少している。今後 益々多様化される業界であるため、早めのアプローチ・リサーチが必要になってくる。(F社)
4.自動車関連サービス
・新車販売不振でディーラーがメンテナンス市場に攻勢をかけてきている。優越的立場にあるメーカーが部品の仕入れを独占的に支配していることから、仕入れ率はディーラーが6割、部品商が8割、整備工場が9割、と固定化を命じている。(I社)
5.福祉関連
・福祉サ-ビスの景況は国の社会保障制度の展開に左右されるので、経済一般の発展にかかってくる。外需の低落傾向から、内需に力点を求める政策に転換を。(I社)
・福祉業界の、とくに介護保険の改正改正が多くて本当に振り回されている。小さな事業所において、その締め付け枠はきびしく、とても不安である(J社)