景況調査

第68号-2010年11月
足もとの改善続く。先行きは「不安」と「期待」が入り混じる

【概況】
【業況判断】 今月の状況で2007年11月調査以来のプラスに
【売上高】【経常利益】 売上高・経常利益ともに建設業で大幅に改善
【在庫】 今月の状況、大きな変動なし
【価格変動】 仕入価格、大きな変動なし 販売価格、「低下」超過幅の縮小続く
【取引条件】 建設業のみ「悪化」超過幅の縮小続く
【資金繰り】 建設業で次期見通し大きく改善
【借入金利】 短期・長期ともに変化なし
【設備過不足】【施設稼働率】 設備過不足、「不足」超過に 施設稼働率、2期連続の低下見通し
【雇用】 不足感徐々に高まる
【経営上の力点など】 経営上の問題点、引き続き第1位に「民間需要の停滞」
<会員の声>
DI値推移一覧表(PDF 346KB)

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景況調査報告(2010年11月)第68号(PDF:1.51MB)


【概況】

業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は前回の△6から9ポイント改善して3となり、3年ぶりにプラスに転じました。これで今月の状況は7期連続の改善となりましたが、前年同月比は前回調査の0から△2と小幅ながら1年半ぶりの悪化、3ヶ月後の次期見通し(△8→△10)もわずか2ポイントですが2期連続の悪化となりました。

前回のヒアリング調査では先行不安の声が多く聞かれましたが、今回の業況判断DI(今月の状況)は9ポイントもの大幅な改善となりました。それを裏付けるように今回のヒアリング調査では、建設業・製造業を中心に明るい話が聞かれました。建設業からは、官需の厳しい状況が指摘された一方で、民需では動きが徐々に大きくなっているとの意見が出されました。これまでも戸建て住居の建築や改修工事の増加が指摘されていましたが、現在、住宅取得資金にかかる贈与税の非課税限度額が引き上げられていることから、戸建て住居の建築確認申請が増加しているようです。また、マンションなどの大型物件に関しては、未だ動きは鈍いものの、土地の売買が増え始めたことから来春以降に期待できるとの声もありました。

製造業では、自動車関連企業から忙しいとの声が多く聞かれました。自動車関連企業はエコカー補助金の終了による仕事量の減少が予想されていましたが、その減少分をアジアやロシア向け輸出がカバーしているとのことでした。しかし、現地生産の進展により今後は輸出量の減少が予想されることから、先行き不安を払拭できずにいるようです。個人消費関連は相変わらず厳しい状況にあり、先行きに対しても明るい材料が見出せないとのことでした。

今回の調査でも足もとの改善は続きましたが、その要因が時限的な政策や今後減少が予想される輸出といった不安定なものであることから、先行きに対する不安感を拭いきれないというのが現状のようです。さらに、高止まりしている円相場や米中経済の動向など不安感を増幅させる要因も多々存在しています。とはいえ、先行き不透明ななかにおいても、建設業などでは先行きの好転を期待させるような動きも出始めています。これから日本経済が持続的な成長軌道に乗れるかどうか、来年前半がその正念場になりそうです。

[調査要項]

1.調査時2010年11月22日~11月30日
2.対象企業 愛知中小企業家同友会会員企業
3.調査方法 会員専用サイト(一部FAX)にて配信、自計記入、回収
4.回答企業 2,918社より、754社の回答をえた(回収率25.8%)
(建設業118社、製造業218社、流通210社、サービス業208社)
5.平均従業員 26.2人(中央値 10.0人)
なお、本報告は愛知中小企業家同友会経営環境調査委員会(委員長、藤田彰男・赤津機械(株)社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行・立教大学経済学部教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況で2007年11月調査以来のプラスに

「今月の状況」DIは前回の△6から9ポイント改善して3となった。「よい」と回答した企業の割合が「悪い」と回答した企業の割合を上回るのは2007年11月調査以来のことである。業種別でみると、建設業が△8から8ポイント改善して0に、製造業が△4から15ポイント改善して11に、流通業が△10から8ポイント改善して△2に、サービス業が△2から3ポイント改善して1となった。前年同月比は前回の0から2ポイント悪化して△2となった。わずか2ポイントながらも悪化は1年半ぶりのことである。業種別で見ると、建設業では△18から△8と10ポイント改善したが、製造業では24から14と10ポイント、流通業では△5から△8と3ポイント悪化した。サービス業では△8から△9と横ばいで推移した。3ヶ月後の次期見通しは前回の△8から2ポイント悪化して△10となった。業種別では建設業が△11から△5、流通業が△15から△11となりそれぞれ見通しを改善させたものの、製造業では△11から△16、サービス業では4から△4となり見通しが悪化した。

業況推移DIグラフ

業況推移DIグラフ
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【売上高】【経常利益】
売上高・経常利益ともに建設業で大幅に改善

売上高DI(前年同月比)は前回の0から2ポイント改善して2となった。「増加」超過に転じたのは2007年5月調査以来のことである。業種別では建設業が△20から△8と12ポイント、流通業が△10から△3と7ポイント改善した一方で、製造業は22から16と6ポイント悪化した。サービス業は△3から△2と横ばいで推移した。次期見通しは前回調査の△17から変化がなかった。業種別では建設業(△29→△16)で見通しが大きく改善したが、製造業(△18→△20)・サービス業(△5→△12)では悪化した。流通業(△20→△19)は横ばいでの推移となった。

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の△9から8ポイント改善して△1となった。これで7期連続の改善である。業種別では建設業が△32から△19と13ポイント、製造業が△11ポイントから0と11ポイント、流通業が△5から3と8ポイント、サービス業が4から6と2ポイントと、全業種において改善がみられた。前年同月比は前回の0から1となり、1ポイントとわずかな改善にとどまったものの、2007年2月調査以来の「好転」超過となった。業種別では建設業が△30から△12と18ポイント、流通業が△4から0と4ポイント改善したが、製造業は24から16と8ポイント、サービス業が△5から△7と2ポイント悪化した。次期見通しは前回調査の△13からわずかに改善して△11となった。業種別で見ると、建設業(△30→△31)・製造業(△12→△12)・流通業(△13→△12)ではほとんど動きがなかった。サービス業は△4から2と3期ぶりの「黒字」見通し超過となった。

売上高推移DIグラフ

売上高推移DIグラフ
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経常利益推移DIグラフ

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
今月の状況、大きな変動なし

今月の状況DIは、前回の13からほとんど変化がなく14であった。業種別を見ると製造業では16から19と「過剰」超過幅を拡大させたが、流通業では10から9と横ばいで推移した。前年同月比は前回調査の2から6と4ポイントの「増加」超過幅拡大となった。業種別では、製造業(7→11)で「増加」超過幅が拡大し、流通業(△4→△1)で「減少」超過幅が縮小した。次期見通しも前回の8から4ポイント「過剰」見通しの超過幅が拡大して12となった。製造業(10→14)・流通業(7→9)ともに「過剰」見通しの超過幅拡大となった。

【価格変動】
仕入価格、大きな変動なし 販売価格、「低下」超過幅の縮小続く

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回調査の8から7と大きな変化はなかった。業種別では、建設業(4→1)・製造業(17→15)では小幅ながら「上昇」超過幅が縮小した。反対に流通業(0→8)では8ポイント「上昇」超過幅が拡大した。サービス業は1から△6と「低下」超過に転じた。前年同月比は前回の8から変化がなかった。業種別で見ると、建設業(△4→4)では「上昇」超過となった。製造業(19→15)では「上昇」超過幅が縮小したが、流通業(3→6)では拡大した。サービス業(△4→△5)は横ばいで推移した。次期見通しは前回の9から7となり「上昇」見通しの超過幅が2ポイント縮小した。業種別では建設業(11→5)・製造業(16→10)において「上昇」見通しの超過幅が縮小したが、流通業(4→7)ではその幅が拡大した。サービス業(△3→0)は「低下」超過幅が縮小した。

販売価格変動DI(今月の状況)は前回の△32から2ポイント「低下」超過幅が縮小して△30となった。「低下」超過幅の縮小は4期連続である。業種別で見ると、建設業(△47→△39)・流通業(△33→△29)で「低下」超過幅が縮小したが、サービス業(△24→△28)ではその幅が拡大した。製造業(△28→△27)は横ばいで推移した。前年同月比も前回の△34から△32となり、4期連続で「低下」超過幅が縮小した。業種別で見ると、建設業(△53→△44)・製造業(△31→△27)において「低下」超過幅が縮小したが、サービス業(△24→△27)ではその幅が拡大した。流通業(△34)は変化がなかった。次期見通しは前回の△29から△27と2ポイントの「低下」見通し超過幅縮小となった。業種別では建設業(△38→△33)・流通業(△31→△29)で「低下」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業(△25→△24)では横ばいで推移した。製造業(△24)は前回から変化がなかった。

【取引条件】
建設業のみ「悪化」超過幅の縮小続く

前年同月比DIは前回の△16から横ばいで推移し△15であった。小幅ながら、これで5期連続の「悪化」超過幅の縮小である。業種別では、「悪化」超過幅が4ポイント縮小した建設業(△19→△15)を除いて、製造業(△11→△10)・流通業(△20→△21)・サービス業(△15→△14)では大きな動きはなかった。次期見通しは前回の△17から変化がなかった。業種別で見ても製造業(△13で変化なし)・流通業(△19→△20)・サービス業(△17→△18)は横ばいで推移した。建設業(△18→△14)では「悪化」見通しの超過幅が縮小した。

【資金繰り】
建設業で次期見通し大きく改善

今月の状況DIは前回の△41から2ポイント「窮屈」超過幅が縮小して△39となった。業種別で見ると、建設業(△54→△55)・流通業(△38→△37)・サービス業(△34→△35)は横ばいで推移した。製造業(△41→△38)は3ポイント「窮屈」の超過幅が縮小した。次期見通しは前回の△44から△43と横ばいで推移した。業種別では「窮屈」見通しの超過幅が11ポイント縮小した建設業(△60→△49)を除いて、製造業(△43→△44)流通業(△40→△41)・サービス業(△39→△41)では大きな動きは見られなかった。

【借入金利】
短期・長期ともに変化なし

短期借入金利DIは前回調査の△4から変化がなかった。業種別で見ると、建設業(2→△3)では前回の調査から一転、再び「低下」超過に転じた。製造業(△2→△6)では「低下」超過幅が拡大し、流通業(△8→△5)・サービス業(△4→△2)ではその幅が縮小した。

長期借入金利DIも前回の△5から変化がなかった。業種別でみると、建設業(2→△5)で「低下」超過に転じた以外は、製造業(△4→△4)・流通業(△8→△6)・サービス業(△6→△7)はほぼ横ばいでの推移となった。

【設備過不足】【施設稼働率】
設備過不足、「不足」超過に
施設稼働率、2期連続の低下見通し

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の0から3ポイント「不足」超過幅が拡大して△3となった。「不足」超過に転じたのは2008年11月調査以来、2年ぶりのことである。業種別で見ると、建設業(△4→△8)・サービス業(△9→△14)で「不足」超過幅が拡大した。流通業(△1→0)では「不足」超過幅が縮小した。製造業(10→8)では「過剰」超過幅が縮小した。次期見通しも前回の3から△1となった。2008年8月調査以来の「不足」見通し超過である。業種別では建設業(△2→△5)・流通業(0→△4)・サービス業(△7→△13)で「不足」見通しの超過幅が拡大した。製造業(16→14)では「過剰」見通しの超過幅は縮小した。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の6から5ポイント「上昇」超過幅が縮小して1となった。業種別では製造業(16→9)で「上昇」超過幅が縮小し、流通業(△9→△10)は横ばいでの推移であった。次期見通しは前回調査の△12から△17となり、「低下」見通しの超過幅が拡大した。これで2期連続である。業種別では製造業(△11→△18)で「低下」見通しの超過幅が拡大したが、流通業(△14→△15)は横ばいであった。

【雇用】
不足感徐々に高まる

今月の状況DIは前回の△5から4ポイント「不足」超過幅が拡大して△9となった。業種別では、建設業(△7→△17)・製造業(1→△3)・流通業(△1→△7)で「不足」超過幅が拡大した。サービス業(△16→△13)ではその幅が縮小した。次期見通しも前回の△2から△5となり「不足」見通しの超過幅が拡大した。業種別みると、建設業(△8→△4)・サービス業(△15→△12)で「不足」見通しの超過幅が縮小した。流通業(3→△11)では「不足」見通し超過に転じた。製造業(8)は変化がなかった。

【経営上の力点など】
経営上の問題点、引き続き第1位に「民間需要の停滞」

全業種で見た経営上の問題点は、第1位が「民間需要の停滞」(49%)、第2位が同率で「取引先の減少」・「販売先からの値下要請」(30%)となっている。これらの順位は1年以上変わらないものの、「民間需要の停滞」の割合は徐々に低下しつつある。業種別でみて特徴的であったのは、サービス業の第3位に「新規参入者の増加」(34%)があったことである。文書回答では、「円高による販売価格の下落」等が指摘された。

全業種における経営上の力点も前回と変わらず、「新規受注(顧客)の確保」(64%)、「付加価値の増大」(54%)、「社員教育」(27%)が上位を占めた。文書回答では「新商品の開発」等が指摘された。

<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●業況判断DIにおける「今月の状況」は△8から0と13期ぶりに水面に改善し、「次期見通し」も△11から△5と11期ぶりにひとケタのマイナスに、「前年同月比」でも△18から△8と13期ぶりにひとケタマイナスになるなど改善傾向を示しています。反面、資金繰りDI「今月の状況」では、△54から△55と依然として厳しいものの、経常利益DIは△32から△19と13ポイント持ち直しています。

こういった中、雇用動向では△7から△17と人手不足感が増しています。これは、業界の将来に見切りをつける職人や下請け業者が増え、若干持ち直した需要に対応しづらくなっていることが考えられます。確認申請の件数では、愛知県はここ最近全国に比べて多く出されており、戸建て嗜好の地域性が垣間見られます。これは、2010年度の税制改正で、贈与税の非課税枠が大きくなったことも、一定の効果が出ていると考えられます。しかし、仕事の多くは大手企業が独占しており、中小企業にはまわってきておらず、現場から活況の声はなかなか聞かれませんでした。(事務局 八田)

1.総合建築
  • 業界での安値競争のため競争物件での受注が困難になる。主要取引銀行を信用金庫から地銀に変えたところ借り入れ金利が約1% 下がった。
  • 社員全体の「何のために」という目的意識が明確になった。その先に、会社単位で意識統一できれば底力のある会社作りができると思う。
2.建築工事業
  • 昨年に比べ工事の受注件数は増えている。しかし、熾烈な価格競争で利益のでない工事が殆どとなり、元請から下請へ価格のしわ寄せを押し付けてくる発注が増えている。
  • 新築物件の数量は少なく、既存の建物を補強したり改修する件数は増えているが施工実績のない業者の参入で品質・安全に対する甘さが目立つ。この要因がコンプライアンス強化につながっている。そのため管理費がアップするが価格に転嫁できない。
3.住宅設計
  • 住宅系では所得が高い人からの引き合いが出てきている。賃貸マンションは相変わらず良くないが、老人系マンションの計画が出ている。賃貸も来春あたりから動きがある予測。オフィス系は入居率が15%ダウン。リフォームして空き家を埋めようとするからリフォーム分野の仕事はある。
4.内装工事業
  • エコポイントにより一時的に断熱材が不足している。非住宅部門では入手困難なため中断している現場がある。 内装工事店にしわ寄せがかかり、工期の関係上、値段の高い材料で施工している。今後も、材料入手の確約が取れないため断熱工事関係は契約できない。
  • 衣食住の中で最もお金を必要とする「住」にお金をかけなくなっていると感じる。現在住む事に支障が無ければ住環境にお金をかけて改善することは行わないと感じる。今までは建設を行う事で世の中に大きなお金が動いて経済が活発になっていた部分が止まっているように感じる。当社は個人や地域の工務店や官公庁と関わっているが受注が困難になっている。全ての仕事が競争で価格を下げて行かないと受注出来ない。随意契約が消滅して常に競争が必要。差別化や付加価値で新しい道を探すといわれるが、付加価値も個性も値段にかき消されている。こだわりで顧客を獲得とか言うが、結論は良いものやこだわりをディスカウントして売っているだけ。今の建設業界にはこだわりは無く目先の売り上げの為の偽りのこだわりを強く感じる。これでは顧客の目先の満足には繋がるものの長い目で見る業界の信頼や技術は下がる。
5.建築資材販売施工
  • 住宅着工件数が少し増加しているため、引き合いが出てきたように思う。しかし何時まで続くかわからない。早く補正予算を通して実行してほしい。
6.電気通信工事
  • 地デジ特需によって引き合いも多いが、関連する隣接の業界からの参入・流入も多く工事単価が下がっている。 自社としては特化した業種であり、スキル等を持つため難易度の高い仕事を受注することも多く、単価の下落との釣り合いがとり難い状態である。アナログ波の完全停止以降の受注獲得のこともあるため、ここが正念場とも考えるので我慢のしどころと思う。
7.水処理施設
  • 大手水処理メーカーは海外展開の体制を整えて、今後は海外で新規営業に力を入れることになる。 国内は維持管理を中心に包括的な仕事に集約されていく。これにより、企業の経営力と総合的な体力が勝負を決めることになる。国内市場は大手も中小も入り乱れての大競争時代が始まった。

(2)製造業

●中小製造業の業況判断DI値「今月の状況」は、7期連続の改善でプラス11となりましたが、「次期見通し」は△16と2期連続の悪化です。また、資金繰りDI値は△38と厳しい状況が続いています。

アジアやロシア向けなどの輸出増があり、エコカー補助金終了による減産内示で生産計画や社内体制を準備してきた企業では少し安堵の感も出たようです。しかし、「次期見通し」に関するDI値は総じてやや悪化しています。海外生産・現地調達の進展、世界経済や政治の動向、市場縮小やコストダウン圧力、国内ロケーションの変化、消費や技術の変化など、懸念材料や不透明感が増す中で自社の方向性を模索葛藤する厳しい立ち位置なども表明されました。一方で新たな動きも始まっています。

全般的に外需や量産および半導体に関わる企業では持ち直しが見られるものの内需及び自動車等の設備関連分野では依然厳しい状況にあることがうかがわれます。ただ業種業界ではなく個別企業や取引先等の状況により異なり、ばらつきは大きく、規模別格差など二極化の傾向も見受けられます。

世界や技術、価値などが大きく変化する過渡期にあります。同友会員としての有利性を活かし、ナマの情報と幅広い視野を持って時代変化の背景や本質や事物を見極め、人間観・世界観を持った中小企業家として新たな価値を創造していきたいものです。(事務局 加藤)

1.金属、樹脂加工など量産分野
  • 9月まで140百台/日で忙しかったが、10月から110百台/日は予想通りの2割減となった。1月以降の130百台/日については少々疑って見ている。T社がインドで100万円をきる車を販売。いよいよ現調化がすすむ。自社部品の車種では輸出向けの6割が現調となり、これまでの4割しか残らないという内示を受けている。今後の経営をどうするか、海外動向調査等をしながらも判断に悩む。
  • ピーク時の90%となり非常に忙しい。この間、得意技術のヨコ展開で営業をかけ今後も有望な市場を取り込むことができた。ただ消費者動向と技術の方向は読めないため投資に関しては決断できない。
  • QCD、5S徹底、ISO継続で来秋以降の新車開発における新規部品の受注合戦を乗り切る目標。部品の現調化が進めば国内生産分の受注合戦による値下げ競争が不安。
  • 自動車関連の受注が伸びてきているが従来より品質面での要求事項が厳しくなっている。また、東北、九州方面への出荷が多くなりリスクが高まる中で、今後、管理面でのコスト高が懸念される。
2.熱処理、鍍金、鋳造など
  • メーカーの海外進出は必須である。グローバル市場に対応するための中小零細企業の新規事業計画が立てられない。新製品開発、研究開発の必要性を感じているが、現状の自社能力では対応が難しい。
  • 11月に入ってからめっきり減っている。自動車部品のグローバル展開で価格がどこまで下がるか心配。
3.設備・治工具、金型、機械部品、電気・制御装置など
  • 中国、アジア向け輸出が中心の一部顧客ではリーマンショック前の水準まで売上が回復。国内設備中心の顧客は未だ回復の気配さえない。いずれにしても円高・景気対策終了後の影響がでる来年が不安。
  • 幸いにして忙しい業界向けに仕事が取れているがそれも年内までしか見えていない。競争激化による単価下落は相変わらずで、残業するほど仕事はあっても利益確保が難しい。客先がギリギリまで発注を控える傾向が強まり短納期化が更にすすんでいる。残業を引き起こし非効率的状態が続く悪循環である。
  • 自動車部品関連工場の設備投資計画がないため設備機械製造業は先が見えない状況。
  • 売上がピーク時の55%止まりで利益が出ない。年度末に運転資金不足となるため再度借入を起こすがこれで限度。次年度は7~8割まで戻らないと行き詰まる。借入枠拡大が必要。新規事業も僅かずつ売れているが運転資金の補強にはならない。このままの景況では耐える体力が持たなくなってきた。
  • 自動車関連の新規設備は期末にかけて計画あり。急に仕事量が増え対応ができないときもある。
  • 世界情勢の中で鉄工製造業については、FTAやTPPの関税撤廃枠組みの影響を受け、大手メーカーによる海外生産シフト化の加速で適正販売価格が急速に崩壊。仕事量は09年度時の90%近くに戻り生産量が右肩上がりにも関わらず、売上高は緩やかな右肩下がりを描いている。零細企業の5年後は国内製造業空洞化の渦に巻き込まれ資金難による倒産か。または国内需要が増加するのか、全く不透明。
  • 海外流出が止まらない。TPPも気になる。今は忙しいが、先の見通しが立たない。
  • 先行きの不透明感から需要が停滞している。製品価格下落が止まらない。海外向け専用機や電子部品関連、LED関連など一部に仕事が出ているが、業界全体としての仕事量はまだまだ少ない。
  • 大企業の海外移転による国内設備投資の低下が業務を圧迫。
  • 昨年に比べれば改善するも実感としては全く伴わない。このまま国内でモノづくりを続けていけるのかという不安は拭い去れない。また海外に出ても単にコスト競争のみに追われてしまうのではないかと思う。結局、付加価値の高いものを提供するしか日本の企業は生き残る道がないように思える。
4.印刷、特殊印刷、繊維、食品など
  • 下請専業の会社は経営困難に陥っている。いかに自立した経営をつくるか。政治も目先の対策や行政のモグラ叩きレベルでなく長期的視野で人材育成に注力するなど国家戦略を確立していただきたい。
  • 原材料の高騰がすすんでいる。特に中国の値上がりが顕著で1週間で大幅に上昇する。一過性なのか継続的なものか判断に悩む。売り惜しみ等もあり、あらためて中国依存の浸透を実感する。
  • 穀物市場価格が上昇し高値で推移し円安メリットは全くない。農業分野では廃業倒産の2巡目が終わりTPPで3巡目開始に。農地の面的保全という意味で考えると言葉がない。

(3)流通業

●業況判断DIの今月の状況は、前回の△10から△2へと7期連続で改善、次期見通しも△15から△11と改善しています。経常利益DIの今月の状況も、△5から3へと5期連続の改善で、ほぼ2年ぶりに黒字に転じました。しかし、内訳では35%の企業が「赤字」と答え、次期見通しでも回復は見られません。売上高DIの次期見通しも、△20から△19と若干改善しましたが、「減少」の割合は増えており、その要因として「消費・市場の低迷」「国内工場の稼働停滞、海外移転・海外生産」との記述が散見されます。仕入価格DIの今月の状況は0から8、次期見通しDIは4から7と上昇していますが、販売価格DIは今月の状況・次期見通しとも△29で、仕入と販売のDI値差は改善傾向にあるとは言えません。資金繰りも窮屈感が増しています。

業況・売上・利益でプラス基調の企業は、地上デジタル化や家電・住宅のエコポイントが後押しをしている様子がうかがえます。

経営上の問題点では、前回第4位に浮上した「新規参入者の増加」が第3位となり、第5位の「大企業の進出による競争の激化」の割合が上昇しています。力点は、前回と同じ「新規受注(顧客)確保」「付加価値増大」、「社員教育」が上位3位を占めました。(事務局 岩附)

1.生活関連
  • アパレル業界は、デフレの嵐がまだ続いている。この状況の中で、中国の人件費、原材料費が高騰していくとどうなるのか?低価格品に関しては先がまったく見えない。付加価値をどうつけるかだ。
  • 資金繰りが悪化している企業が安売りをし、目先の金を必死に回している。各社がプライドを持った会社づくりをすれば、業界全体が浮揚すると思う。個人消費の冷え込みは厳しさを増しているが、暮らしにあった商品展開と新事業で自社を成長させたい。
2.飲食料品
  • 飲食関連は6月ぐらいより客単価、来店客数ともに減少している。夏場は気温が高く、ビールがよく出て持ち直していたが、9月以降ずっと悪い。とりわけ錦地区では15~20%売上が落ちている店も多く、閉店も多い。
  • 自社の商品は決して悪くないと思うが、これまでに経験したことがないほどの不景気に直面し、業界がこれほど打撃をうけるものなのかと困惑している。売上予測をはるかに下回り、状況はかなり深刻。
3.建材、家具、什器
  • 中国から資材を輸入しているが、中国の人件費の上昇により価格の値上げ要請が著しい。加えて人民元の切り上げと相まって仕入れ価格がかなり上昇している。こちらが円高メリットを享受しているのを見越して交渉をしてくる。しかし、それを販売価格に転嫁できない。
  • やや住宅着工数は伸びているが、大手業者だけで一般の中小零細業者の仕事量はかなり減少していると思われる。仕事の二極化が進んでいる。
4.不動産
  • 新築一戸建住宅の価格がどんどん下がり、採算を無視した価格で販売されている。中古物件よりも安く売っているがなかなか売れない。
5.運輸、情報通信
  • 経費はかさむが輸送費に転換できないままで厳しい状況。若干物量が増えつつあり、このままなら回復基調ではあるが、予断を許さない状況に変わりはない。
  • 景気が悪い為、元請からは値下げ要請もある。ただし直取引の問い合わせは増えており、今後は直取引の顧客開拓に励む事で利益率は改善すると考えている。
6.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)
  • 相変わらず自動車関連の設備は動かないが、半導体の製造装置は比較的堅調に動いており一息ついている。客先の海外移転、海外生産の計画が多く出ている。経営環境が厳しいところに円高が引き金となり、海外移転が加速された感じだ。政府は多くの雇用を生み出す製造業を大切にもっとすべきだ。
  • 効率化と称して購入品のコストダウンを安易に短絡的に要請する顧客があり、それに対しスキルの無い中堅商社が人海戦術と薄利多売で飛び込み営業を行っている。これではデフレからの脱却は程遠く、一時しのぎにはなっても長い目で見て良い事は何も無い。

(4)サービス業

●前回調査で「次期見通し悪化」との見通しが出されていましたが、11月期調査の今月の状況「業況判断DI」は「悪い(赤字)」との回答数が微減した結果△2→1と3ポイントの改善になりました。「経常利益DI」は今月の状況で4→6(2ポイント改善)と改善傾向になりました。次期見通しでは「業況判断DI」4→△4(8ポイント悪化)、「経常利益DI」△4→2(6ポイント改善)と、業況悪化の中でも利益確保できるような体質改善が進むことへの期待があらわれています。しかし「資金繰りDI」は3期連続で悪化(△32→△34→△35)しており、「価格競争」「値引き要請」等で販売価格には改善が見られず「利益は薄利、忙しいのに儲からない構造になっています」との文章回答も寄せられ、収益性悪化に耐え得る組織づくりが課題になっています。(事務局 浅井)

1.飲食関連
  • 外食産業では客数と客単価の双方が落ち込み苦戦している。居酒屋でも高級志向で、接待等の使用頻度の多い客単価5千円以上店舗や大人数が収容できる店舗等は苦戦が続くと思われる。
2.生活・健康・美容関連
  • 今年の2月から前年対比で10%くらい上昇が続いていたが、9月に入ってから急激に売上が増加してきた。この3ヶ月は前年の倍になっているが、いつまでつづくのかは不透明である。
  • 今の仕事内容からの新しい産業へのシフトを本気で考えている経営者が非常に少なく感じる。「将来的にやらなければならないが、今はやらなくても」 というくらいの危機感で、イメージを明確に描けないのだと思う。政府が考えている今後の重点産業を具体的・明確に打ち出し、その産業への支援体制や計画を打ち出すことが絶対的に足りないと思う。自分は、その産業とは「農業」や「老人介護等に関するケア施設などの関連産業」であり、それらを成熟させ仕事として成立させることだと考える。
3.広告・印刷関連サービス
  • 廃業や倒産が相次いでいて業界自体は不安定だが、業界に残り続けているのでやや仕事の受注が増えているのと、新規顧客の紹介が多くなってきている。
  • クライアントである大手広告代理店の名古屋支社が撤退。協力会社の廃業など、経営環境は悪くなっている。印刷・広告業界は、頑張ろうにも仕事自体が減少している。
  • 当社は雑誌中心の編集プロダクションを経営しているが、編集代金の低下に伴い競争が激化しライバル業者の減少傾向によって、受注は微増、利益は薄利、忙しいのに儲からない構造になっている。WEB事業への移行が急務と考えているが、WEB事業は雑誌のように現物がないためか、クライアントが相場などを知らないためか、値引きの要望が激しい。
  • 川上が徐々に良くなってきている。数字的なことだけではなく、それに伴って蛇口が徐々に開いてきていることを肌で感じているが、リーマンショック以前の状況まで戻るとは考えにくい。ただ口をあけて待っているだけでは餓死してしまうので、アンテナ高く嗅覚と提案力を発揮し、クライアントを刺激し続け自分の強みを明示し、案件を確保していく努力が必要である。
4.産業廃棄物、金属スクラップ・リサイクル関連
  • 建設需要全体が減っている状態で、過当競争などでしのぎを削る受注競争の限界が見えてきた。仕事をやっても利益の上がらないところまで来ているので、今後の廃業・倒産が懸念される。信用調査などしっかりしなくては巻き添えを食う心配も出てきている。今迄の価値観を覆す新たな仕事づくり、地域にとって絶対に必要とされる仕事づくり、が求められている。
  • 円高により輸出成約が少なく、今までの外需増加要因による価格上昇等の推進力がない。また仕入れ競争が激しく利益幅が減少している。弊社の取り扱い数量は、同業他社が減らす中で微増し過去最高に近い扱い量だが、利益はほとんど出ずトントンに近い。
  • エコ減税効果による自動車関連の需要増があり、何とか食いつなぎ別の市場を探すことができたのだが、景気の先食いともいわれるこの政策が、現在終了してから非常に厳しい状態が続いている。怖いのは景気浮上で仕事が忙しいわけではないため、先の状況が読めないことにある。他力本願的な考えになってしまうが、やはり世界と日本自体の景気がともにあがらなければ、不安感は解消されない。