景況調査

第78号-2013年5月
建設業が景況改善を牽引 ~製造業、流通業の前年同月比DIは依然マイナス

【概況】

【業況判断】 今月の状況・前年同月比、2期連続の改善

【売上高】【経常利益】 売上高、前年同月比は改善も次期見通しは横ばい。 経常利益、今月の状況が全業種で「黒字」超過に

【在庫】 横ばいで推移

【取引条件】 次期見通し、建設業で2期ぶりに「悪化」超過

【資金繰り】 今月の状況、「窮屈」超過幅縮小

【設備過不足】【施設稼働率】 施設過不足、「不足」超過幅の拡大傾向続く。施設稼働率、業種により異なる動き

【雇用動向】 製造業のみ不足感弱まる

【価格変動】 仕入価格変動、全業種で大きく「上昇」超過幅拡大。 販売価格変動、今月の状況が建設業・サービス業で2008年以来の「上昇」超過

【借入金利】 短期金利、建設業・サービス業で「上昇」超過。長期金利、製造業を除いて「上昇」超過

【経営上の力点など】 経営上の問題点、「仕入単価の上昇」が第3位に

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:430KB)

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景況調査報告(2013年5月)第78号(PDF:732KB)


【概況】

業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は前回の10から5ポイント改善して15となりました。これで2期連続の改善です。前年同月比も△6から2と8ポイント改善しましたが、3ヶ月後の次期見通しは23から22と高位ながら横ばいでの推移となっています。

ヒアリング調査では、前回同様、業種間における景況感のばらつきが確認できました。アンケート調査で大幅な改善が見られた建設業からは、それを裏付けるような明るい話が多く出され、その要因として官需では公営住宅の耐震工事など、民需では福祉施設やマンション、戸建て住宅の建設などに動きがあることが挙げられました。また、先行きに関しても、消費税率の引き上げを前にした戸建て住宅の駆け込み需要やこれから本格化する名古屋駅前の再開発事業によって、しばらくは堅調に推移するものとみられています。しかし、このことは現在深刻化している職人不足にいっそう拍車をかけることになります。すでに労務費は上昇しており、円安による資材価格の上昇とともに利益を圧迫していることから、今後、いかにこの問題を解消するかが大きな課題となっています。

他方、製造業の状況は決して明るいものではないようです。自動車関連企業からは、生産量は全体的に増加しつつあるものの、下請企業の選別と集中が起きているために、企業間で繁閑の差が生じているという指摘がありました。また、現在は仕事量を確保している企業においても、部品の海外現地調達化の動向次第では急激な仕事量の減少も予想され、見通しは楽観視できないとの意見もありました。個人消費関連企業からは、今回も明るい話は聞かれませんでした。円安による輸入品価格の上昇、消費税率引き上げなど懸念材料が山積しており、当分好転の兆しを見出すことはできないようです。

このように愛知経済は数値上の改善が続いたものの、それは非常に好調な建設業に牽引されたためであり、全体的に上向いているとは言い難いのが現状です。景気高揚を期待された「アベノミクス」ですが、株高円安の効果は大企業に限定されており、中小企業では実感できないようです。むしろ急激な株価・為替相場の変動により先行きの不透明感は増しているといえます。日々、さまざまな情報が飛び交いますが、一つ一つに惑わされることなく的確に情報を分析できる能力を身につけることが必要です。

[調査要項]
 1.調査時   2013年5月20日~5月31日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会会員企業
 3.調査方法 会員専用サイト(一部FAX)にて配信、自計記入、回収
 4.回答企業 3,233社より、838社の回答を得た(回収率25.9%)
   (建設業152社、製造業241社、流通業231社、サービス業214社)
 5.平均従業員 32.9人(中央値 10.0人)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況・前年同月比、2期連続の改善

「今月の状況」DIは前回の10から5ポイント改善して15となった。これで2期連続の改善である。業種別でみると、建設業が22から8ポイント改善して30に、製造業が△3から11ポイント改善して8になった。製造業は3期ぶりにプラスに転じた。流通業は4から3、サービス業は23から24と横ばいで推移した。前年同月比は前回調査の△6から8ポイント改善して2となった。3期ぶりの好転超過である。業種別でみると、建設業が10から22と12ポイント、流通業が△12から△4と8ポイント、サービス業が2から11と9ポイント改善したが、製造業だけは△15から△13と横ばいでの推移となった。3ヶ月先の次期見通しは前回の23から22と横ばいで推移した。業種別では、建設業が35から34と横ばい、サービス業が前回から変化なく25であったが、製造業は17から22と5ポイントの見通し改善となった。反対に流通業は19から13と6ポイント見通しを悪化させた。

業況推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

業況推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【売上高】【経常利益】
売上高、前年同月比は改善も次期見通しは横ばい
経常利益、今月の状況が全業種で「黒字」超過に

売上高DI(前年同月比)は前回の△8から△1と7ポイントの改善となった。業種別でみると、建設業が9から15と6ポイント、製造業が△23から△15と8ポイント、流通業が△11から△6と5ポイント、サービス業が2から7と5ポイントと全業種で改善した。次期見通しは8から9と大きな変化はなかった。業種別では建設業が14から18と4ポイント、製造業が2から8と6ポイントの見通し改善となったが、流通業は5から0と5ポイント見通しを悪化させた。サービス業は12から14と横ばいでの推移となった。

経常利益DI(今月の状況)は前回調査の5から5ポイント改善して10となった。業種別でみると、建設業が6から14と8ポイント、製造業が△5から4と9ポイント、サービス業が18から23と5ポイントの改善となった。流通業だけは2から3と大きな変化がなかった。前年同月比も前回の△11から△4と7ポイントの改善となった。業種別では、建設業が△1から6と7ポイント、製造業が△18から△15と3ポイント、流通業が△15から△8と7ポイント、サービス業が△5から4と9ポイントの改善となった。建設業では3期ぶり、サービス業では2期ぶりの「好転」超過である。次期見通しは前回の10から12と横ばいで推移した。業種別でみると、建設業は6から16と10ポイント、製造業は6から10と4ポイント見通しが改善した。他方、流通業は10から5と5ポイント見通しを悪化させた。サービス業は19から21と大きな変化は見られなかった。

売上高推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

売上高推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ
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【在庫】
横ばいで推移

今月の状況DIは、前回の12から11と横ばいでの推移となった。業種別では、製造業が12から13と横ばいで推移したが、流通業は13から8と5ポイント「過剰」超過幅が縮小した。前年同月比も前回の4から6と横ばいで推移した。業種別でみても、製造業(3→5)・流通業(6→8)の両業種で横ばいの推移となっている。次期見通しも前回の6から7と横ばいで推移しており、業種別でみても製造業(9→11)・流通業(3→2)ともに大きな変化はなかった。

【取引条件】
次期見通し、建設業で2期ぶりに「悪化」超過

前年同月比DIは前回調査の△8から△6と横ばいでの推移となった。業種別でみると、建設業(△1→0)・製造業(△8→△9)では大きな変化がなかったが、流通業(△10→△7)・サービス業(△9→△5)は「悪化」超過幅が縮小した。次期見通しも前回の△4から△5と大きな変化はなかった。業種別でみると、製造業(△6→△7)・流通業(△6→△6)・サービス業(△5→△5)は変化がなかったが、建設業は4から△2と2期ぶりの「悪化」超過に転じた。

【資金繰り】
今月の状況、「窮屈」超過幅縮小

今月の状況DIは前回の△31から5ポイント「窮屈」超過幅が縮小して△26となった。業種別でみても、建設業(△41→△37)・製造業(△31→△27)・流通業(△30→△27)・サービス業(△23→△18)と全業種で「窮屈」超過幅が縮小した。次期見通しは前回の△28から△27と大きな変化はなかったが、業種によって異なる動きが確認できた。建設業(△37→△32)・製造業(△34→△28)で「窮屈」見通しの超過幅が縮小したが、サービス業(△15→△22)は反対に拡大した。流通業(△28)は前回調査から変化がなかった。

【設備過不足】【施設稼働率】
施設過不足、「不足」超過幅の拡大傾向続く
施設稼働率、業種により異なる動き

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△8から△13と5ポイントの「不足」超過幅拡大となった。この1年、傾向的な「不足」超過幅拡大がみられる。業種別では、建設業(△13→△23)・製造業(1→△2)・サービス業(△16→△20)において「不足」超過幅が拡大した。製造業は△2と1年ぶりの「不足」超過となったが、「過剰」と回答する企業は22%となっており、他の業種に比べて高い水準となっている。流通業(△9→△11)は横ばいでの推移となった。次期見通しは前回の△9から4ポイント「不足」超過幅が拡大して△13となった。業種別でみると、建設業(△12→△21)・製造業(2→△7)で「不足」見通しの超過幅拡大となった。製造業は2011年8月調査以来の「不足」見通し超過である。流通業(△11)・サービス業(△17)は前回調査から変化がなかった。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の△12から変化がなかった。業種別でみると、製造業(△9→△15)と流通業(△17→△6)とでは反対の動きがみられた。次期見通しは前回の△5から△4と横ばいでの推移となった。業種別でみると、製造業(△1)は前回と変化がなかったが、流通業は△12から△7と5ポイントの「低下」見通し超過幅の縮小となった。

【雇用動向】
製造業のみ不足感弱まる

今月の状況DIは前回調査の△24から△22とわずかな動きにとどまった。業種別でみると、製造業(△10→△3)で「不足」超過幅の縮小がみられたが、建設業(△44→△45)・流通業(△21→△19)・サービス業(△30→△30)では横ばいで推移した。次期見通しは前回の△19から△23と4ポイントの「不足」超過幅拡大となった。業種別でみても、建設業(△34→△48)・製造業(△2→△7)・サービス業(△26→△29)で「不足」見通しの超過幅が拡大した。特に建設業での不足見通しは強くなっており、回答企業の半数以上が不足すると見通している。流通業(△20→△18)は大きな動きはなかった。

【価格変動】
仕入価格変動、全業種で大きく「上昇」超過幅拡大
販売価格変動、今月の状況が建設業・サービス業で2008年以来の「上昇」超過

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回調査の28から38と10ポイントも「上昇」超過幅が拡大した。これで2期連続の「上昇」超過幅拡大となり、回答企業の4割超が「上昇」と回答している。業種別でみても、建設業(31→45)・製造業(28→41)・流通業(33→42)・サービス業(18→23)と全業種で「上昇」超過幅が大きく拡大している。前年同月比も前回の27から10ポイント「上昇」超過幅が拡大して37となった。業種別でも、建設業(31→44)・製造業(26→42)・流通業(32→40)・サービス業(17→20)とやはり全業種で「上昇」超過幅が拡大している。次期見通しも前回の28から38と10ポイントもの「上昇」見通しの超過幅拡大となった。業種別でみても、建設業(32→44)・製造業(34→44)・流通業(28→39)・サービス業(16→23)とやはり全業種で「上昇」見通しの超過幅が拡大している。

販売価格変動DI(今月の状況)は今回も△8から6ポイント「低下」超過幅が縮小して△2となった。業種別では、建設業(△4→3)・流通業(△1→6)が「上昇」超過に転じた。建設業は2008年8月調査、流通業は2008年5月調査以来のことである。サービス業(△9→0)は「低下」超過幅が縮小した。製造業(△14→△15)は横ばいで推移した。前年同月比も前回の△8から△2と6ポイントの「低下」超過幅縮小となった。業種別でみると、建設業(△1→11)は「上昇」超過に転じ、流通業(2→7)は「上昇」超過幅が拡大した。サービス業(△8→0)は「低下」超過幅が縮小した。製造業(△20)は前回から変化がなかった。次期見通しは前回の△3から3と2008年8月調査以来の「上昇」見通し超過となった。業種別では建設業(6→11)・流通業(3→13)で「上昇」見通しの超過幅が拡大した。サービス業(△6→1)は「上昇」見通し超過に転じた。製造業(△13→△8)は「低下」見通しの超過幅が縮小した。

【借入金利】
短期金利、建設業・サービス業で「上昇」超過
長期金利、製造業を除いて「上昇」超過

短期借入金利DIは前回調査の△2から0とほぼ横ばいでの推移となった。業種別で見ると、建設業(△1→1)・サービス業(△1→4)で「上昇」超過に転じた。製造業(△4→△2)・流通業(△2→0)で「低下」超過幅が縮小した。

長期借入金利DIも前回の△5から4ポイント「低下」超過幅が縮小して△1となった。業種別では、建設業(△3→3)・流通業(△4→3)・サービス業(△4→3)で「上昇」超過に転じた。製造業(△8)は前回調査から変化がなかった。

【経営上の力点など】
経営上の問題点、「仕入単価の上昇」が第3位に

全業種で見た経営上の問題点は、第1位が「民間需要の停滞」(32%)、第2位が「従業員の不足」(26%)、第3位が「仕入単価の上昇」(24%)であった。業種別で特徴的であったのは、サービス業で第1位に「新規参入者の増加」(31%)、製造業で第2位に「販売先からの値下げ要請」(30%)があったことである。

全業種における経営上の力点は、「新規受注(顧客)の確保」(60%)、「付加価値の増大」(58%)、「社員教育」(32%)が上位を占めており、前回から順位に変化はない。業種別でみて特徴的であったのは、流通業で第3位に「新規事業の展開」(30%)があったことである。


<会員の声(業種別)>

 (1)建設業

●業況判断DIの「今月の状況」は22→30と改善、「次期見通し」は35→34と横ばい、「前年同月比」では10→22と好調を示しています。経常利益DI「今月の状況」でも、6→14と上向き、「次期見通し」も16と良い数値が出ています。しかし資金繰りDI「今月の状況」では、△41→△37と激しい窮屈感を示しています。さらに仕入価格DI「今月の状況」は31→45と半分の企業の原材料が値上がりし、対する販売価格DI「今月の状況」は「不変」が大勢を占めます。雇用動向DI「今月の状況」は、△44→△45と継続的に激しい人手不足の数値を示しています。

官需・民需とも仕事量は増えていますが、その担い手はパワービルダーや大手企業が中心です。円安による建築資材の高騰は深刻で、販売価格に転嫁できていません。それでも現在は、建築市場が活況を呈しているため、問題は顕在化していませんが、今後の消費税導入後の市場の冷え込みを視野に入れた戦略を練ることが求められます。 (事務局 八田)

1.総合建築

  • 建設業界はなかなか好転していかない。同業他社でも良いところはあるようだが、計画はあっても資金などの不足により進まない。 受注の見通しが立たないので、資金繰りもうまくいかない。顧客もかなり厳しいことを言っている。需要と供給がまったくかみ合わない。受注しても赤字、受注しなくても赤字という状態が続く。

2.土木・鉄筋

  • 鋼材費仕入れは去年暮れからの予想どおり、年明けから約2ヶ月でトン約1万円以上高騰した。去年の秋頃の見積で500トンオーバーの案件は、単純に鋼材費だけでも500万円以上の開きがあるため、受注を断念した。単純に円安の影響だが、鋼材費は安定期以外は受注に大きく影響する。手間単価は人手不足も手伝い上昇中である。この状況を理解する元請では、手間単価は上がっているが、そうでない元請は協力業者離れに苦戦している。

3.リフォーム・改築

  • 消費税駆け込み需要について、地場の零細工務店にはプラス材料になっていない。大手ハウスメーカーとパワービルダーの分譲住宅販売は好調なようだが、注文住宅の受注急増には至っていない。中規模のリフォーム(500万前後)が活気を帯びてきた感がある。

4.設計・施工管理

  • 消費税の駆け込み需要が叫ばれているが実感がない。まだまだ先行きの不透明感がぬぐえないからなのか、顧客も冷静である。また、最近地元企業が2社廃業倒産した。1社は当社の主要取引先でもあり影響が大きく、何か対策を講じないといけない。

5.電力工事

  • 来年の消費税増税に向かって住宅業界は9月までの契約に突っ走っているが、元気が良いのは大手ハウスメーカーだけで、弊社にはその恩恵は回ってこない。そのうえ増税したらどうなるのか全く見えてこない。そのために地元密着を目指すために自社イベントを昨年から行っているが、どこまで体力が持つか不安だが、続ける事に意味があると奮闘中。公共事業も出てくるが、電力使用量から見ると前年比4%減で、本来景気が良くなると電気が使われるものだが、逆の数値が気がかりである。

6.上下水道設計施工

  • 最近のマスコミの報道のように景気は良くなってない。相変わらず競争は激化し価格は破壊されている。官公需要も国、県までは改善されているようだが、地方公共団体は相変わらずジリ貧で何も変わっていない。

7.電気設備

  • 低額入札が多くなっている。役所の最低制限価格は上がっているのに、価格を下げて叩き合いをしている。太陽光発電関係は、資材が入らないので値上げと欠品状態が続く。売電価格の低下で今後は尻つぼみが予想される。

8.建築設計

  • 広範囲で仕事が出ている。分譲マンションは土地の確保で足踏みをしているが、一般住宅や賃貸マンションは好調である。建築費が15~30%も上がっているのに動きが活発で、消費税前の駆け込み需要ではない。T社と取引する自動車関連の下請企業では、耐震対策をしないと生産調整をされるため、建築する時期だという。

 (2)製造業

●中小製造業の業況判断DI値は、今月の状況△17→△3→8、次期見通し△13→17→22と水面上に、前年同月比は△26→△15→△13と改善を見せるも水面下に留まっています。経常利益と売上高についても概ね同様な傾向です。

北米向け外需や建設関連に関わる製造業などで上向きの声が聞かれましたが、多くは昨年末頃の悪い状態から少し戻してきた安堵感による業況改善であり、前年対比で考えると良いわけではないとの見方が妥当です。金型や設備で動きが出るという声と同時に、5月連休明けから設備部品が極端に減少などの話もあり、業界・客先・部品・特殊品・個別企業努力や事業形態により様相は異なります。期待先行との見方も聞かれ、改善が本物かどうかは暫く注視が必要でしょう。表面的な現象の底流で何が進行しているのかをしっかり見極める慧眼が問われます。 (事務局 加藤)

1.金属加工 

  • 海外現調化でいきなり無くなる部品と部品共通化で増産になる部品との調整が難しくなってきた。海外輸出している大手企業が増収増益になっているだけで中小企業に恩恵はなく国内は良くならない。
  • 世間がいうほど景気は良くない。デフレからインフレに変化するとき中小企業は採算悪化していく。
  • 海外に進出していない会社には恩恵はない。数量的には若干増えそうだが大きくは変わらないだろう。海外生産の流れも変わらず2年後には大きく数量が落ち込むことを懸念。人員増や投資には躊躇する。

2.樹脂加工

  • 世間は景気が良くなっているような雰囲気があるが、そんな状況は全くない。大幅なコストダウンで悲鳴を上げている。試作開発助成金に望みをかけている。
  • アベノミクス効果は我々の業界には来ていない模様。特に大企業の海外進出が止まった訳ではないので、利益は国内で還元されず海外に投資されるばかり。
  • 年明けより低迷していた売上が上向いてきたが材料費が5%上がり仕入価格の上昇が問題。
  • 材料費やエネルギー費の上昇を単価に反映できない。メーカーは円安の恩恵を受けているにもかかわらず、単価は超円高時のままで、それは儲かるはずである。

3.鍍金、治工具、設備関連、機械部品(金属・樹脂)

  • 大企業は景気が良くなっていないのに自社の賃上げを決め、下請に対しては値下げ要請をしてくる。
  • 自動車関係の設備投資は夏以降に本格化してきそう。
  • 金型部品は横ばいでそこそこの受注だが、販売先は愛知県内が半分減少して地方に分散している。
  • マスコミで騒がしいアベノミクス効果はまったく無い。逆に仕事は減少傾向。「投資に対してはしばらく慎重に様子見」とのT社社長コメントの影響か、鋼材屋の情報でも落ちているらしい。
  • 設備投資は依然マイナス。この回復なくして日本経済の回復はない。円安はデメリット先行が現実化。
  • メーカーの予想計画に及ばない。昨年末の悪かった時から浮上したものの横ばい。新規で伸ばした。

4.専用機械、ロボット、制御装置

  • ユーザーの海外移転と海外生産促進で国内需要が大幅減。仕入は海外品が多いため円安による経営圧迫がひどく利益数値が悪化。報道では規模や業種が明らかでなく経団連などの大手のみの不正確な情報。
  • 急激な円高や株価の変動で自動車関連メーカーの海外設備投資が一時ストップした。情報収集が急務。
  • 知識集約型の企業づくりをしていく。

5.印刷、特殊印刷

  • 内需が大きい国で外需中心の政策が優先されている。内需産業育成を中心に財政出動の議論があってしかるべき。消費税は経済指標だけでなく、着実な内需による完全にデフレギャップが埋まったことを確認できてから判断すべき。手順を間違えると過去の経験で財政出動分だけ国家赤字増に終始する。
  • 昨年12月からずっと悪いまま。業界全体も同様。少し先行きに光明が見えてきたが絶対量が少ない。

6.食品、繊維、建材関係、雑貨

  • 穀物価格の高止まりで飼料価格の上昇がきつい。デリバティブによるドルを円転して資金繰りが楽に。
  • 円安がどの程度進んでいくのか?原材料仕入価格上昇が今後の懸念材料になっている。
  • 輸入品、国産品に関係なく値上げされてきた。販売価格に転嫁できず困惑している。
  • 路面店が激減。1物件あたりのコストも下がる一方。市場全体が縮小傾向で現状打破には変革が必要。
  • 政府や輸出産業は円高時に助成、補助、協力と大きな声で喧伝するが、素材が円安コスト高による影響をまともに受けていることが分かっていても助成や値上げ協力などを言わない。変な社会である。

(3)流通業

 ●今月の業況判断DIは4→3、経常利益DIは2→3と他業種が改善する中、大きな変化は見られませんでした。前年同月比の売上高は、△11→△6へと水面下ながら改善しました。前回調査で大きく上昇した仕入価格DIは33→42と9ポイント上昇、販売価格DIも△1→6と7ポイント上昇しました。仕入価格と販売価格のDI差は、前回調査と同じく2ポイント拡大しました。仕入価格の上昇分を商品価格に転嫁できず、「付加価値を上げる戦略も難しい(食料品)」との声もあります。

次期見通しは、他業種がプラスまたは横ばいの中で、流通業は売上高DIが5→0、経常利益DIが10→5、業況判断DIが19→13といずれも減少に転じています。民間需要が停滞し、来年4月からは消費税が増税、現在は不動産や住宅関連で駆け込み需要はあるものの、見通しは各業界とも厳しいものになっています。技術革新で価値観や市場が変化する中、従来の延長線上にはない経営戦略が求められ、経営上の力点の第三位には「新規事業の展開」が浮上しました。 (事務局 岩附)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • アベノミクスが世の中では好景気のような感じを作り出しているが、現実には受注、売上には反映されてこない。自動車の生産はある程度の水準を維持しているものの、設備投資の対象は海外のみ。新しいマーケットへの進出、新しい商材の開拓、業態変換を真剣に考えなければならない。
  • 直近の新規金型案件は薄いが、日当り生産台数も当初より増加する恩恵で売上は横ばいで推移できそう。
    急激な円安で海外調達部品の仕入単価値上要請があるが、単品加工品が主で大幅な上昇は回避している。
  • この業界では、今期は昨年の10%アップを見込んでいる会社が多い。しかし、弊社は消費税が3%から5%に上がった時に売上で20%落ち込んだ。今期は最低20%の売り上げアップを目指す。

2.建築資材、家具、什器

  • 仕入高になってきているが、競争の激化で価格転化できていない。売り方を変えて低リスク、低マージンで売り上げはあるが利益は伸びていない。高付加価値の新商品は思ったほど売れていない。
  • 中小零細企業は、大手企業と違い為替や株価においての利益はまったく関係なく、逆に円安における原材料高等が商品価格に転換できず利益確保が難しい。今後もそのような状態が続くのが不安材料だ。
  • 取引先の破綻や企業の縮小整理が多い。新規の取引先の展開をしているが難しい。

3.飲食、食料品

  • 円安の影響を真正面に受け、全面高の様相。高品質のものを使い付加価値を上げる戦略が仕入価格の上昇で難しくなってきた。
  • 5月連休明けから民間需要の停滞によりかなりの売上減。顧客の買い控えが続いている。アベノミクス効果はいつになるのか? 厳しい状況が続きそう。
  • 価格競争が激化するばかりで 品質低下が懸念される。
  • 日本人の鰻離れが起こっているような感がある。シラスウナギの4年連続の不漁を受けて環境省がニホンウナギを絶滅危惧種に指定し、マスコミが食べることが悪いことのように報道したため、業界では対応に苦慮している。今後は、ニホンウナギ以外の鰻をどう鰻料理に取り入れていくかが課題。

4.運輸、情報通信

  • 株価上昇の影響もなく、円安が進み、原油価格は高止まりし、物流関連は大変厳しい状況下にある。景気回復の実感はまだなく、国内の荷動きはさほど動いていない。海外向けばかりがクローズアップされているが、内需が回復しない限りデフレ脱却には及ばない。
  • 大手企業は、4月から物流業者に向けて輸送費2%削減を通達している。削れる所からは更に削減させ、その元は最高の利益、春闘では満額回答とひどい話である。消費税引き上げも大手からの圧力が掛かり、中小零細はますます厳しい経営を強いられる。
  • インターネットショップという分野は、全般的には好況に見えるが、個別的には新規参入、競争の激化により価格や利益率が低下し、厳しさが顕著となっている。自社ならではの独自サービスを常に研究・開発していかねば淘汰されてしまう可能性が大きい。

5.不動産、保険

  • 不動産買取業界では、仕入価格高騰により販売への悪影響がここ数年続いている。大半が仕入からスタートするわが社の事業としては、不景気にも継続できる事業のあり方を再度検証せねばならない。
  • 保険業界では、軒並み保険料は値上げ、代理店手数料は値下げ。保険会社による代理店削減の動きがさらに激化し、お客様がインターネットの安い保険へ流れる中、付加価値をどう高めていくのか難しい。

(4)サービス業

●今月の状況は、業況判断DIは23→24、経常利益DIは18→23と横ばい・改善という結果となりました。仕入価格DIは18→23と3期連続で「上昇」超過幅が拡大し、販売価格DIは「上昇」「下降」それぞれ同じ割合の回答となり、ポイントとしては△9→0と改善の数値を示し、資金繰りDIは△23→△18と「窮屈」超過幅が縮小しています。しかし対事業所向けサービス、対個人向けサービス、専門サービス、それぞれがまだら模様であり、「アベノミクスで景気が良くなっていると言うが、円安や各種法改定による負担増ばかりで自社の業績は上がっていない。消費税増税など不安要素が多い。」との文章回答も寄せられています。

次期見通しに関しては、売上高DIが14、経常利益DIが21とそれぞれ2ポイント改善を予想しつつも、資金繰りDIは△22と7ポイントの悪化を予想しています。経営の力点は、先回に引き続き(1)新規受注の確保59%、(2)付加価値の増大56%、(3)社員教育29%ですが、対個人向けサービス業では(1)付加価値の増大60%、(2)社員教育が42%となっており、一般消費者の収入が上がらず消費動向が停滞する中でも、自社固有の技術やサービスを磨き気持ちよく提供する事で、「価格」ではなく「価値」で選ばれる店づくりが行われています。 (事務局 浅井)

1.飲食関連

  • 外食産業は消費税増税により間違いなく冷え込む。大手チェーン店では、既存店の落ち込みを新規オープンによる集客でカバーするために撤退と進出を繰り返しているが、個人の店は非常に厳しい。

2.生活・健康・美容

  • 人の動きに大きな変化は感じられない。昨年までは価格競争(値引き、お得感)が目立っていたが、この春以降、価格で勝負しようとする傾向が薄らいでいるように思う。
  • 高額消費の伸びは顕著だが、生活密着の消費はあまり良くなっていないように思われる。
  • 清掃業界では価格破壊が著しい。

3.印刷・広告

  • クライアント全体に言えることだが、広告宣伝費は必要最低限に抑えられている。景気回復の兆しは見えてこない。当社では新たな方向性に向け、自社の改革をどんどん進めている。
  • 業界の衰退が激しくなってしまいそう。同業でも少し違う形での展開をしないと生きていけない。
  • 長年続く広告デザイン業界の低価格化に歯止めが利かない中で、身近な広告媒体としてのWEBが一般浸透した結果、弊社の受注では「新規事業の立ち上げ」や「事業継承の際の広告物の切り替え」などの相談が増加しており、景気はやや良くなっている感がある。増税にともなう駆け込み需要とはまた別で、民間の消費者傾向までははかりきれないが、広告に対する経営者の積極姿勢が強くなってきたと思われる。
  • 円高による輸出大企業の業績向上等での好況感は、未だ中小零細企業にまで波及しておらず、実体経済は厳しい。零細中小企業への好影響が見出せるまではまだ暫く時間がかかるにも関わらず、円高や税制等の環境は中小零細企業にとってより一層厳しい環境に移行していると言わざるを得ない。現在の自民党の経済政策は評価するが、同時に実体経済に好影響を与える施策を実施してほしい。

4.自動車

  • お客様の趣味の域で仕事をしているので、消費者の景況感に左右されすぎてしまう。
  • 規制項目の増加に伴い、設備投資の必要があるのでその負担が問題。マネーゲームの景気はあくまでも指標の一部という捉え方をするべきで、そのまま社会の景気にする風潮から脱却すべきだ。

5.ビジネス支援サービス

  • 司法書士業界、行政書士業界ともに、追い風になる要素はない。同業者の増加、事件数の減少で右肩下がりの業界であるとことは変わらない。アベノミクスの影響もない。
  • 中流が没落していたのでは、根本的な景気回復は難しい。投機マネーが大きく動く経済状況では本当の景気回復は望めず、円安なのに大企業の工場の海外移転は逆に加速気味で、日本国内の雇用増大にはつながっていない。本当の景気回復は雇用増大と一億総中流の復活による個人消費増大が無いと難しい。競馬ソフトによる収益課税や消費税だけではなく、投機マネーの動きにも課税をすべきである。