景況調査

第83号-2014年8月
消費増税後の業況悪化から小幅改善 ~期待ほどの回復得られず

【概況】

【業況判断】 今月の状況、小幅ながら改善

【売上高】【経常利益】 売上高・経常利益ともに全体では改善するも、建設業のみ異なる動き

【在庫感】 大きな変化みられず

【取引条件】 次期見通しで過去最高の値に

【資金繰り】 「窮屈」超過幅の縮小傾向続く

【設備過不足】【施設稼働率】 設備過不足、今月の状況・次期見通しともに前回から変化なし。施設稼働率、製造業で「上昇」超過幅拡大

【雇用】 過去最高水準の不足見通し

【価格変動】 仕入価格、8期ぶりの「上昇」超過幅縮小。販売価格、製造業のみ「上昇」超過幅拡大

【借入金利】 短期・長期ともに今回も大きな変化なし

【経営上の力点など】 経営上の問題点・力点ともに第1位は前回と変わらず

<会員の声>

DI値推移一覧表(PDF:540KB)

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景況調査報告(2014年8月)第83号(PDF:1.3MB)


【概況】

業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は△18と大幅に悪化した前回調査から一転して、 17から20と3ポイントながら改善となりました。これは「良い」と回答した企業が2%増加したことに加えて、「悪い」と回答した企業が1%減少したため です。前回調査では次期見通しが12→23と強気な予想がなされていましたが、その期待ほどの回復とはなりませんでした。前年同月比も前回の4から9と5 ポイント、3ヶ月後の次期見通しも前回の23から31と8ポイントの改善となっています。

ヒアリング調査では、今回も業種による状況のばらつきが確認できました。唯一、前年同月比の業況判断DIが悪化した建設業では、その要因としてこれ まで好調であった分譲マンションや戸建て住宅などの建設の鈍化が挙げられました。投資物件は依然として動きが活発であるものの、深刻な人手不足に加えて、 土地不足や建築費の高騰により着工できないどころか見積もりさえも出ないような状況も生じており、それが収益の足かせになっているとの声も聞かれました。 ただその一方で、人手の確保ができ、高騰した建築費を価格に転嫁できる企業は増益を実現させており、二極化が進展しているようです。

製造業では、業界を問わず忙しいという声が聞かれました。自動車関連企業からはこれまでのような量産の仕事は減少しているけれども、その減少分を北 米向けの生産や試作品の生産でカバーできていることが忙しさの背景にあるとの指摘がありました。ただし、このままよくなると見通すほどの理由を見つけるこ ともできないため、先行きに関しては急激な冷え込みも否定できないという悲観的な予想も聞かれました。個人消費関連企業については、今回も人手不足、原材 料費の上昇などの問題があり厳しい状況が続いているようです。

愛知経済は前回の大幅な落ち込みから一転して小幅ながら改善に転じました。さらに先行きも2期連続での改善が予想されていますが、それを裏付ける積 極的な理由は出てこず、漠然とした楽観が愛知経済を覆っているようです。しかしながら、電気料金をはじめとしたコストの値上がりや人手不足など、経営を悪 化させる問題は何も解消されていないのが現状です。また、円安の進展がコスト高に拍車をかけ、さらに利益を圧迫することも予想されます。急激な悪化から持 ち直したことに安心することなく、現在の状況および先行きを見極める必要があります。

[調査要項]
 1.調査日  2014年8月19日~8月29日
 2.対象企業 愛知中小企業家同友会会員企業
 3.調査方法 会員専用サイト「あいどる」(一部FAX)にて配信、自計記入、回収
 4.回答企業 3,446社より、1,198社の回答を得た(回収率34.8%)
   (建設業208社、製造業298社、流通業356社、サービス業336社)
 5.平均従業員 31.1名(中央値 9名)

なお、本報告は愛知中小企業家同友会・経営環境調査委員会(委員長、太田厚・(株)太田電工社社長)が実施した調査結果をもとに、景況分析会議(座長、山口義行立教大学教授)での検討を経てなされたものである。

【業況判断】
今月の状況、小幅ながら改善

前回、35から17と大幅に悪化した「今月の状況」DIは3ポイント改善して20となった。業種別にみると、製造業が16から19と3ポイント、流 通業が6から10と4ポイント改善したが、建設業は30から32、サービス業が22から23と横ばいでの推移となっている。前年同月比も前回の4から5ポ イント改善して9となった。業種別でみると、製造業は7から15と8ポイント、流通業が△7から0と7ポイント、サービス業が4から10と6ポイントの改 善がみられたが、建設業だけは20から12と8ポイントの悪化となっている。建設業はこれで2期連続の悪化である。3ヶ月後の次期見通しも、前回の23か ら31と8ポイントの改善となった。業種別でみても、建設業が31から40で9ポイント、製造業が27から35で8ポイント、流通業が15から20で5ポ イント、サービス業が22から32で10ポイントと全業種で見通しが改善している。

業況推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

業況推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【売上高】・【経常利益】
売上高・経常利益ともに全体では改善するも、建設業のみ異なる動き

売上高DI(前年同月比)は前回の6から4ポイント改善して10となった。業種別でみると、製造業が6から13と7ポイント、流通業が△3から4と 7ポイント、サービス業が7から15と8ポイント改善したが、建設業だけは18から8と10ポイントの悪化となっている。建設業はここでも2期連続の悪化 である。次期見通しは前回の8から17と9ポイント改善した。業種別でみても、建設業が6から21で15ポイント、製造業が12から18で6ポイント、流 通業が3から13で10ポイント、サービス業が12から17で5ポイントと全業種で見通しが改善している。

経常利益DI(今月の状況)も前回調査の13から16と3ポイント改善した。業種別では、流通業が4から12と8ポイント、サービス業が12から 19と7ポイント改善したが、建設業は29から20と9ポイント悪化し、製造業は16から14と横ばいでの推移となっている。建設業はこれで3期連続の悪 化となった。前年同月比は前回の△1から7ポイント改善して6となった。業種別でみると、製造業が3から10と7ポイント、流通業が△8から0と8ポイン ト、サービス業が△1から7と8ポイント改善したが、建設業だけは9から11と横ばいでの推移となっている。次期見通しも前回の16から7ポイント改善し て23となった。業種別では、製造業が18から28と10ポイント、流通業が7から17と10ポイント、サービス業が18から24と6ポイント見通しが改 善したが、建設業だけは24から23とほぼ変化がなかった。

売上高推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

売上高推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

経常利益推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

【在庫感】
大きな変化みられず

今月の状況DIは、前回調査の12から10と大きな変化はなかった。業種別でみても、製造業(12→10)・流通業(12→11)ともに横ばいでの 推移となっている。前年同月比は前回調査の9から3ポイント「増加」超過幅が縮小して6となった。業種別でみると、製造業(9→8)は小幅な動きにとど まったが、流通業(10→3)は7ポイントの「増加」超過幅縮小となった。次期見通しは前回の7から3ポイント「過剰」見通しの超過幅が縮小して4となっ た。業種別でみても、製造業(10→7)・流通業(4→1)ともに「過剰」見通しの超過幅縮小となっている。

【取引条件】
次期見通しで過去最高の値に

前年同月比DIは前回の△3から△2と横ばいでの推移となった。しかし、業種別でみると、建設業(11→2)では「好転」超過幅が縮小したが、製造 業(△5→△2)・流通業(△10→△2)では「悪化」超過幅が縮小、サービス業(△2→△3)は横ばいでの推移となっており、業種によって動きが異なっ ている。次期見通しは前回の△2から0となった。取引条件のDI値が0となるのは、調査開始以降初めてのことである。業種別でみると、建設業(3→6)で 「好転」見通しの超過幅が拡大し、製造業(△3→0)では「悪化」見通しの超過幅が縮小した。流通業(△5→△4)・サービス業(△3→△1)はほとんど 動きがみられなかった。

【資金繰り】
「窮屈」超過幅の縮小傾向続く

今月の状況DIは前回の△26から△23と3ポイントの「窮屈」超過幅縮小となった。若干の波があるとはいえ、2009年2月調査以来、傾向的には 「窮屈」超過幅の縮小が続いている。業種別では、建設業(△21→△24)で「窮屈」超過幅が拡大したが、流通業(△31→△24)・サービス業 (△30→△26)では反対に縮小した。製造業(△18→△17)はほぼ動きがなかった。次期見通しも前回の△28から5ポイント「窮屈」見通しの超過幅 が縮小して△23となった。業種別では、製造業(△23→△19)・流通業(△31→△23)・サービス業(△30→△25)で「窮屈」見通しの超過幅が 縮小したが、建設業(△25→△27)だけは反対の動きとなっている。

【設備過不足】・【施設稼働率】
設備過不足、今月の状況・次期見通しともに前回から変化なし
施設稼働率、製造業で「上昇」超過幅拡大

設備過不足DI(今月の状況)は前回調査の△15から変化がなかった。業種別では、建設業(△15→△18)・製造業(△16→△19)で「不足」 超過幅が拡大したが、流通業(△13→△10)・サービス業(△18→△15)では反対に縮小した。次期見通しも前回の△15から変化がなかった。業種別 では、製造業(△17→△20)で「不足」見通しの超過幅が拡大したが、サービス業(△17→△14)は縮小した。建設業(△18→△19)・流通業 (△11→△10)は横ばいでの推移となった。

施設稼働率DI(前年同月比)は前回調査の3から5と横ばいでの推移となった。業種別では異なる動きとなり、製造業(5→11)では「上昇」超過幅 が拡大したが、流通業(△1→△2)はほとんど動きがなかった。次期見通しも前回調査の3から4と横ばいで推移した。業種別でみても、製造業(10)は前 回から変化なく、流通業(△5→△3)も小幅な動きしかしていない。

【雇用】
過去最高水準の不足見通し

今月の状況DIは前回の△35から6ポイント「不足」超過幅が拡大して△41となった。業種別でみても、「不足」超過幅が縮小した前回から一転し て、建設業(△47→△54)・製造業(△28→△36)・流通業(△36→△40)・サービス業(△35→△38)と全業種で拡大となっている。次期見 通しでも前回調査の△33から6ポイント「不足」見通しの超過幅が拡大して△39と、過去最高水準の不足見通しとなっている。業種別でみても、建設業 (△47→△51)・製造業(△23→△38)・流通業(△32→△39)で「不足」見通しの超過幅が拡大したが、サービス業(△35→△34)だけは横 ばいでの推移となった。

【価格変動】
仕入価格、8期ぶりの「上昇」超過幅縮小
販売価格、製造業のみ「上昇」超過幅拡大

仕入価格変動DI(今月の状況)は前回調査の50から9ポイント「上昇」超過幅が縮小して41となった。この縮小は2012年8月調査以来、8期ぶ りのことである。業種別でみても、建設業(62→51)・製造業(61→49)・流通業(44→37)・サービス業(40→30)と全業種で「上昇」超過 幅が縮小した。「上昇」超過幅が縮小したとはいえ、建設業や製造業では「上昇」と回答する企業は半数を超えており、いまだ仕入価格の上昇は企業に重くのし かかっている。前年同月比も前回の53から47と6ポイントの「上昇」超過幅縮小となっている。業種別でみても、建設業(65→54)・製造業 (66→57)・流通業(49→45)・サービス業(38→34)と全業種で「上昇」の超過幅が縮小した。次期見通しも前回の38から33と5ポイントの 「上昇」見通し超過幅の縮小となった。業種別でみると、建設業(49→44)・製造業(46→36)・流通業(35→31)で「上昇」見通しの超過幅が縮 小したが、サービス業(26→25)だけは横ばいでの推移となった。

販売価格変動DI(今月の状況)も前回の10から7と3ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。業種別でみると、建設業(20→14)・サービス業 (11→1)で「上昇」超過幅が縮小したが、製造業(1→5)では拡大した。流通業(12→11)は横ばいで推移している。前年同月比も前回の15から 11と4ポイントの「上昇」超過幅縮小となった。業種別では、建設業(31→17)・流通業(18→15)・サービス業(12→8)で「上昇」超過幅の縮 小がみられたが、製造業(5→8)では反対に拡大した。次期見通しは前回の8から6と横ばいでの推移となった。業種別でみると、建設業(23→13)・流 通業(12→9)・サービス業(6→2)で「上昇」見通しの超過幅が縮小したが、製造業(△2→4)は「上昇」見通し超過に転じた。

【借入金利】
短期・長期ともに今回も大きな変化なし

短期借入金利DIは前回調査の△2から変化がなかった。業種別でみると、製造業(△2→△5)で「低下」超過幅が拡大したが、流通業(△4→0)は縮小した。建設業(△3→△2)は横ばいで推移し、サービス業(0)では変化が見られなかった。

長期借入金利DIも前回の△3から△4と大きな変化は見られなかった。業種別でみても、建設業・サービス業がともに△4で前回から変化がなく、製造業(△4→△5)・流通業(△2→△4)は横ばいでの推移となっている。

【経営上の力点など】
経営上の問題点・力点ともに第1位は前回と変わらず

全業種で見た経営上の問題点は、第1位「従業員の不足」(39%)、第2位「民間需要の停滞」(27%)、第3位「仕入価格の上昇」(24%)と なっている。今回は第2位と第3位が入れ替わっただけで大きな変化はなかった。業種別で特徴があったのは、建設業の第2位が「下請業者の確保難」 (37%)、サービス業の第2位が「新規参入者の増加」(30%)、流通業の第3位が「取引先の減少」(26%)であったことである。

全業種における経営上の力点は、第1位「付加価値の増大」(55%)、第2位「新規受注(顧客)の確保」(54%)、第3位「人材確保」(34%) となった。業種別にみて特徴があったのは、製造業の第3位に「社員教育」(35%)、流通業の第3位に「新規事業の展開」(32%)があったことである。


<会員の声(業種別)>

(1)建設業

●「今月の状況」の業況判断DIは30→32の現状維持をした反面、前年同月比や、売上高DIの18→8、経常利益DIでも29→20と落ち込み始 めています。仕入価格DIでは62→51と材料費の高騰は続き、それに対して販売価格DIは20→14と下落し利益を圧迫しています。その結果、資金繰り DIは△21→△24と悪化傾向が増し、「11月期見通し」では△27とさらに悪化を予測しています。雇用動向DIは△47→△54と、深刻な人手不足に また拍車がかかっています。

7月の未消化公共工事は16兆円も積み上がっています。愛知県でも深刻な人手不足に加え、土地不足や建築費の高騰により着工できないようです。しか し7月の新設住宅着工戸数は、前年同月比14.1%減で5カ月連続の減少となっています。「単価が倍でもやりきれない」「景気が良くなっている感じはしな い」など、取り扱い物件に対する格差が激しくなっているといえます。(事務局 八田)

1.総合建築

  • 人手不足で進行中の案件の工期が間に合っていない。大手ゼネコンも地場ゼネコンも仕事量が増大している。これまでにない人手不足で今後の受注 も控えたいところだが、既に受注している元請けも、業者探しが難航している。手間単価は上昇している。手間単価を倍にされても、こなす下請け・職人・応援 を確保するのが非常に困難な状態である。

2.一般建築

  • 材料費は上昇しているのに、発注者がそれを認めず、値上げ分を吸収している状況(下請いじめ)なので、発注単価のアップを交渉する必要があ り、受け入れられなければ取引を止める覚悟を持たないといけない。 業界全体は職人が高齢化していて、人手不足になっている。計画的に職人の採用育成をし ていくべきだ。

3.土木建築

  • 景気回復は実感できるが先行きがどうなるのか見えないため計画が立てられない。円安、オリンピック、震災復興 と言われるが、日本がよくなる原因を知りたい。仕事は十分あり、これ以上出てくると 社員の増員を考えないといけない。

4.鉄筋・鉄骨

  • 業界全体が受注活動に慎重な姿勢を示すようになり、技能工の賃金も約3年前の「異常」から「正常」へと戻った。 しかし 半減した技能工数は 簡単には戻らず 人手不足は解消されないまま今後も続く。 若い人を雇用し育成するためには業種によって相当の年数と企業経営として「余裕」と「安定受 注」が必要になる。 また再び 数年前の「安値受注合戦」を繰り返すとするなら、建設業界に将来はない。

5.電気設備

  • アベノミクス効果の期待と現実のギャップを感じる。 また少子化や高齢化に起因する環境変化に対応していない。自社では工場の設備投資が4月以降減少していたが8月を境に受注が増えてきている。

6.その他設備

  • 春の新卒定期採用が思うように採用ができず。内定者の辞退があった。 従って秋の採用活動を行っている。若年労働力はますます減少するので中小企業の定期採用は難しくなる。

7.塗装工事

  • 決算を終えて消費税を計算してみたらその金額に驚いた。じわじわと赤字が増えている。次から次へと費用のかかることが生まれてくるので疲れてしまう。

8.内装工事

  • 需要増は、来年9月末(消費増税予定)に向けての動きのみ、その後はかなり厳しい見通しがされている。競争が激化する中で、仕入価格が高止まりしたままで販売価格が下落していくと予想。付加価値率増大のための新規事業戦略が急務だと考えている。

9.大工工事

  • これ以上、増税されると末端の業者は非常に苦しい。大企業・中小企業から零細企業へと、発注単価を上昇させる施策がある。 大企業重視で施策が打たれるのは問題である。

10.建築設計

  • 戸建住宅は本当に冷えている。分譲住宅も良くないが投資物件は出ている。建築費が3割ほど上がり見積もりさえ出せない事もある。仕事受注のた めには現場監督の確保が必要のため、引き抜きが多発し、優秀な人から給料の高い大手企業に流れている。仕事はあるが動くのがいつかわからない。

(2)製造業

●主要指標のDI値はいずれも上昇を示しましたが、次期見通しに対し実績が低く期待先行との見方もあります。過去の推移に目を移すと潮目の変わる時期に見られる現象です(グラフ参照)。

製造業 業況推移DIグラフ (クリックすると大きく表示します)

製造業 業況推移DIグラフ
(クリックすると大きく表示します)

北米自動車などの外需や復興需要および半導体関係、また細かな設備部品で動きが見られましたが量産分野は決して良くないとの声が多くありまし た。駆け込み需要利益の節税的設備発注ではないかとの意見もあり、足元の需要内容を精査してみる必要もありそうです。同時に、北米の自動車版サブプライム ローンやFRB金融引き締めなど大局的な動向にも注視すべきでしょう。情報収集と変化の底流に何があるのかをよく見極めながら長短の時間軸を持った経営が 求められます。また、政策に対して中小企業の見地だけでなく雇用や地域社会全般への影響に強い懸念が多く寄せられました。(事務局 加藤)

1.樹脂、金属加工量産部品

  • 北米向け外需は好調だが内需は良くない。T社は8、9、10月と内示数が落ちてきている。中国はそこそこだがローカル部品メーカーの品質があがり競合が激烈になった。韓国から金型が入ってきている。
  • いいのか悪いのかよくわからない不思議な状態が続いている。中小零細製造業は今の内に先の方向性を明確にしないと立ち行かなくなるだろう。
  • やや伸び悩みを見せる頃かと思われるので今後の設備投資に踏み切れるかの分かれ目となる。
  • 一次メーカーと二次メーカーの業況感に格差があり、かつ二極化が進行している。

2.化学薬品、表面処理、鋳造

  • 目先の忙しさに惑わされないように将来を確実に見据えた営業展開と企業体質をつくる。
  • 他社廃業で仕事が流れ込んでくるが非常に単価が安い。先行き懸念から受けるが仕事量がオーバー。自動車関係は動きが低迷し電気業界部品が好調な様子。取引先業況も二極化し参入圧力で価格は厳しい模様。
  • 業種、業界、規模ではなく取引先や取り扱い品により繁閑差が二極化。復興需要と外需関係などが好調。
  • 消費増税後の停滞感が大きい。顧客の動きが量産・試作とも鈍い。秋は良くなる話もあるが動きがない。

3.試作、金型部品、治工具、設備・機械部品、機械

  • 仕事量はかなりあるが設備も人材も不足状態。投資資金の余裕もなく人材も確保できず非常に苦しい。
  • 内需は低迷だが北米は好調。メーカーが現地生産現地調達の方針から世界最適調達に変化し、品質やメンテナンス面などから金型や治工具等の仕事が日本に戻ってきている。減った金型メーカーの取り合いに。
  • 北米などの外需増産に対し工場増設や大型投資はせず生産効率を上げるための治工具設備発注が増加。
  • 4~6月期、7~9月期は全体的に好調だったが、10月以降は陰りが見えてきた。
  • 客先の実績価格要望と燃料原材料高騰による仕入値上げ要求の板挟み状態。大手だけが差益利益を確保し企業の社会性が疑われる。製造業は衰退が間違いない。バイオマスエネルギー分野に新事業で進出する。

4.電子・電気関係など

  • 昨年来順調に売り上げも回復してきたが、ここに至って一服感が出てきている。相変わらず国内設備投資は低迷しており、これに加えての需要減少はきつい。
  • 金属加工業はこの一カ月でどこも仕事が満杯。通常2週間しか予定が見えないが1カ月半先まで埋まっている。金型、治工具、試作、半導体など他分野で動きがある。急激な変化はいろんな意味で厳しい。
  • 決算納税して税と社会保険料の負担の重さを痛感。さらに外形標準課税適用を考えると社員の給与アップなど悩みの種が増える。果たしてこの税制で本当に日本の景気が良くなるのか再考を願いたい。

5.特殊印刷・印刷

  • 国内には難しい仕事しか残っておらず、そのための設備投資がどうしても必要だが高額で経営を圧迫をする。しかし、できる時に投資し人材を育て難しい仕事をやりこなすことが会社の力になると信じて邁進。
  • 大企業との景況感ギャップを政府は見て見ぬふり。格差が益々増大し失業者も増え治安悪化や自殺者も増えるだろう。日本のために働いている日本人の命を奪うような税制度には断固反対。
  • 次回の消費税アップは絶対に一旦凍結すべき。税率よりも税収を上げるための需要確保が先決。

6.家具、建材、繊維、食品、雑貨など

  • オフィス家具、家具業界は動きがある。大手も含めて好調。しかし良いところと否との二極化はある。
  • 不思議なくらい忙しい。でも将来に悪くなる時期を考えると確実に回収できない投資は控えてしまう。
  • 仕入単価上昇が販売数値に現れ始めた。低価格帯実用品は単価上昇に消費者の過敏な反応がある。
  • 需要減少による仕入業者廃業で材料仕入が困難。設備投資と人材育成が難しく業界全体が徐々に衰退。
  • 消費税前の駆け込み分がまだ消費されておらず売上を圧迫。仕入価格や燃料費の高騰もかなり厳しい。
  • 大手量販店の強引な販売合戦が中小企業の経営を圧迫している。大店法の再度見直しで公平な競争を。
  • 3カ月ほど電話FAXが減少。日銀発表とは逆に夏商材は不振で宅配運賃高騰によりネット通販も壊滅。

(3)流通業

●前回調査では4月からの消費増税による大幅な落ち込みがありましたが、今月の業況判断DIは6→10、経常利益DIは4→12と持ち直しました。 しかし、前回に続いて全業種の中で最も低いDI値となっています。仕入価格DIは44→37、販売価格DIは12→11と仕入と販売の差は若干縮小しまし たが、取引条件は悪化のまま、記述回答からも価格転嫁の問題は解消していないようです。今回の調査では、消費動向が総じて鈍く、増税の反動減が長期化、原 材料高、仕入価格高騰、価格転嫁問題などが見られました。

また、複数の業界から、夏の天候不良による価格高騰や物流減少の影響が出されていたのも特徴的でした。次期見通しは、売上高3→13、経常利益 7→17、業況判断15→20と回復基調にありますが、「一時より動きはあるが、規模も小さく積極的なものではない。アベノミクスで言われるほど活性化し ていない」など、回復の実感は程遠い状況です。(事務局 岩附)

1.機械器具(自動車、事務機器、電設資材等)

  • 自動車関連の海外への移転は、タイでは一服感が出てきた。最近は中小企業の進出の話が多いが、今から行ってもなかなか難しいのが現状。今は、 インドネシアへの進出が進んでいる。ロボット関係は中国向けを中心にどのメーカーにも大口の受注があり、ここ数年で一番の活況を呈している。
  • 日本国内における設備関連業の状況がつかめない。設備関連も今年の前半から好調のように言われているが業種によってはまばらで、住宅・建築・自動車以外は好調とは言えない。
  • 消費税増税の反動で上半期はぎりぎりで仕事を回しているような状態だった。5月頃から落ち着き今は少し忙しいくらいで、ちょうど良い。消費税が10%にあがると、消費の冷え込みが予想されるので対策を打たなければならない。

2.建築資材

  • 顧客地域活性の鈍化及び海外展開における国内市場の縮小に伴い、消費及び投資の減による売り上げの低下が顕著である。
  • アベノミクス開始以降、仕入価格の上昇分を価格転化出来ていない。大手から中小企業へと景気回復をしていく目論見だったと思うが、1年半以上経った今も大手が利益を還元する気配は無い。
  • 建設土木関係も少しづつではあるが、正常(需要と供給)に戻りつつある。しかし、結局施主サイドからの金額は従来のまま、仕入だけ上がる構図になりそうだ。

3.繊維、衣服、雑貨

  • 新聞等で非常に好調であると出ているが、好調とはいえない。紳士服アパレル業界では、秋冬物に力を入れる企業がほとんどである。
  • 従来顧客一社当たりの売り上げが増えない中、人件費は上げている。売り上げを増やし原資を増やすために新規顧客を開発しているが、簡単ではない。

4.飲食料品

  • 全国各地の台風・高温障害などの影響で物量の確保が難しく、相場も倍以上の為仕入れ価格が跳ね上がった。また、連休明けの民間需要も落ち込んだ。
  • 消費動向が変わってきている。同じ価値なら徹底的に安く、こだわるものは少々高くても購入する。 少し良いものやおいしいものは値段ではないようだ。プチ贅沢もトレンドだろうか。
  • シラスウナギ漁が5年ぶりに戻り、扱い数量も前年の130%と増大。この傾向は9月以降輸入活鰻で顕著になり、年末年始に至っては輸入量が昨年の二倍強に達する見込み。創業以来最高益に挑戦する。

5.運輸、情報通信

  • 短期的な仕事はそこそこあるが、継続的な長期に亘る安定した仕事については厳しい状況。今後は組織的な問題解決能力を如何に発揮できるかが問われてくる。
  • 若干、物量が増加してきたが、燃料費は高止まり、ETCの割引率は減少、運行三費は上昇、依然業界全体は厳しい経営環境の中にある。危機感を持つ業者は値上げ申請をしており、運送費は上昇傾向にある。

6.不動産、保険

  • 不動産買取時の仕入価格の高騰により仕入難が続き、販売価格に仕入高が転嫁出来ない為に利益確保が難しい状況が続く。
  • 保険業界では、本年中に請負の一人親方に近い「委託(委任)型募集人」を社員化する必要があるが、生産効率を大幅に上げられなければ、コスト増分の吸収ができず利益の大幅な圧迫に繋がりかねない。

(4)サービス業

●業況判断DI「今月の状況」は22→23と横ばいで、消費税増税での「駆け込み需要」もその反動も共に小さかったことが回答に現れました。経常利 益DI「今月の状況」は12→19で7ポイント上昇となり、資金繰りDIは「今月の状況」△30→△26、「次期見通し」△30→△25で窮屈幅がわずか に縮小しました。雇用動向DIの「今月の状況」は△35→△38、対個人向けサービス業では△36→△53で6割が「不足」と回答しており、「人材を確保 したくても思うように採用が進まない現状にジレンマを感じる」との文章回答が寄せられています。

また雇用動向DIの「次期見通し」も△35→△34、対個人向けサービス業では△45→△44で引き続き人材確保の困難さを予測しています。増税・ コスト増などで最終物価が上がっても所得が追い付かない中では「選択的消費」と「買いだめ」の二極化する動きとなり、「買いだめ」されにくいサービス業で は「選択される」ための付加価値が決定的に重要です。(事務局 浅井)

1.飲食

  • 景気の上向きで企業の接待交際費が増えているため、売上はアップしている。
  • 時代の流れで仕方ない事ではあるが、飲食店であってもオペレーションの機械化、売上実績のデータ化に伴って、故障時や保守契約の経費が大きくなっている。
  • 毎年ゴールデンウィーク明けから学生アルバイト集まるが、今年は全く動きを感じられない。景気回復感は全くない。

2.生活・健康・美容

  • 安売り店がどんどん参入し、老舗のマッサージ屋がどんどん潰れていく両極端になっている。ショッピングセンターの中では活性化の名のもとで入 れ替えを要求され、資金繰りの厳しい所はリニューアルできず、退店費用だけ取られて潰れていく。いい仕組みを入れても使うのは人間なので、当社では社員教 育に力をいれ人間力と人間性の強化を同時に行い付加価値をつけている。
  • 昨年の同月に比べ、販売価格の見直し(値上げ)で売上も上昇、利益も確保した。同業他社の廃業で仕事量もアップし売上・利益も好転しているが、賃金のベースアップが難しい中小企業の採用は応募もなく、人材を確保したくても思うように採用が進まない現状にジレンマを感じる。
  • 既存する大手企業の店舗増強に加え、流通大手企業やネット集客事業の参入で、業界の中小企業各社は「受け皿」下請けに回らざるを得ない。

3.印刷・広告

  • 消費税の増税前は順調に売上が上がってきたが、ここにきて頭打ちとなり残り4か月の追い込みが必須である。やはり、増税の影響は中小企業には大問題である。
  • 消費は冷え込んでおり景気回復のムードは感じられない。仕事の引き合いは増えているが、売上や利益につながるかどうか、もう少し様子を見ないと分からない。

4.ビジネス支援サービス

  • 顧客各社で、同じ方向を見て力を合わせてそれぞれが能力を発揮させながら業績を上げていく仕組みはニーズがあるので、ますます自社の活躍のチャンスが広がっている。
  • 大手事務所の営業等の拡充により新規顧客の数が見込めず、より一層の勝ち組・負け組の棲み分けが鮮明になりそうだ。数年先のビジョンは暗くなりがちであるが、顧客も含めてニッチな手法で乗り切りたい。
  • 業界的に独立志向が高まっている。また、同業他社からのお客様に対するアプローチが多くなってきており、今後、競争がより激しくなる。
  • 燃料費・高速道路料金・原材料費等の値上げを価格転嫁できず苦しい状況が続いている。ドライバーの人材不足でヘッドハンティングが急増、物流をアウトソーシングせざるを得ない状況も出ている。

5.保険・医療・福祉

  • 介護業界の採用難は深刻で、働く人がいない・集まらない状態。このままでは立ち行かなくなる事業者が続出すると思う。助成金ではなく、眠っている介護力を呼び覚ますPRなどの行政の支援が必要。