活動報告

「人を生かす経営」を総合的に学ぶ学習会(12月12日)

人を人として尊重する

植田 健男氏  名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授

植田健男教授

「『人を生かす経営』を総合的に学ぶ学習会」が開催され、48名が参加しました。植田健男氏の報告概要を紹介します。

人間とはどういう存在か

高度経済成長時代から抱え込んだ矛盾の中で、「学ぶこと」「生きること」「働くこと」が分裂させられ、人間らしく生きることそのものが急速に困難になってきています。狭い意味で捉えられる「教育」を行っていては、人間としての育ちを考えたり、その先にある「働くこと」の喜びも実感できるようにはなりません。

人間は「発達の可能態」であり、どんな困難にあったとしても環境と遺伝の枠組みを越える適応力を持っています。人は人と関わり、つながることによって不安を克服することができますし、人間として持っている可能性を開花させる働きかけによって、現実のものとなっていきます。

教育は発達という視点から意図的・目的的に働きかける営みであり、学習は学びを現実のものにするために自ら変わっていくことです。本人が変わろうとする気持ちにならなければ、教育の力だけで人を変えることはできません。

人間的な自立

教育の本来の目的は、「人間的な自立」を導くことにあります。それは、自らを含めて他者を人間として尊重し、何があっても自らの人間性を捨てたり諦めたりせず、より人間らしい自分を求めて努力していくことなのです。

この「尊重」するとは、身勝手やわがままを許すということではありません。その組織(会社)を自らが人間らしく育つ場として選びとることを前提に、目的の実現に向けて一緒に働き、「人間らしく生きていきたい。この場でもっと成長していきたい」と思えるようになることが大切です。

人を見るときに、「(何々が)できない」という問題だけを理由として、その人を弾き出すことが多々あります。そうではなく、「なぜできないのか」を考えること、また、価値ある本物(仕事)に仲間と一緒に出合うことによって、自発性の芽生えにつながるのです。

このように取り組んでいくと、「人間」やその発達に対する見方にも、もう少し余裕が生まれてくると思います。立場は違っても人間としては同じ、という考え方が人間尊重の根本なのです。私たちにとって「人間尊重」は、生涯のテーマでもあると思います。