活動報告

共育委員会(10月14日)

戦後日本の教育の中で 子ども達はいま

植田 健男氏  名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授

人間らしく生きるとは何か、教育の視点から考える

人間らしく生きるとは何か、教育の視点から考える

共育委員会では毎月、教育に関するテーマを決めて学びを深めています。10月は「生きること、働くこと、学ぶこと」をテーマに名古屋大学の植田健男教授にお越しいただきました。以下にその概要をご紹介します。

「競争の教育」

戦後日本の教育は、国家教育から人間教育への転換でした。しかし、高度経済成長期には、日本経済の復興は新たな産業構造の創出、経済政策としての「人材養成」「人づくり」政策が実施され、競争の組織化が図られました。能力主義と競争の激化により、登校拒否、不登校が始まり、拡大しました。そこには、競争の教育を支える管理主義による学校の息苦しさがありました。

その後、競争の教育に対する批判とそれへの対応として、「ゆとり教育」「脱偏差値」に転換し、「意欲・関心・態度」の観点別評価が登場しました。これにより、心の中まで点数化されるようになったのです。1990年代、財界主導の教育改革では、公教育スリム化論が打ち出され、少数の「創造的なエリート」と大多数の流動的労働者という構図が生まれました。

「人間的な自立」

「人間として生きるために学ぶ」ということが伝えられないまま、国の経済政策によって学校が変えられる矛盾が生じています。しかし、すべての子どもたちにとっての学習権の公的な保障と、人間的自立を育む場としての学校を保障する必要性があるのです。

教育の目的は、「人間的な自立」を導くことにあります。それは、自らを含めて他者を人間として尊重し、何があっても自らの人間性を捨てたり諦めたりせず、より人間らしい自分を求めて努力していくことです。働く場で「学び」を体験する中で、学ぶことの意味を知り、共に育ち合っていくことが大切だと思います。