活動報告

第18回障害者問題全国交流会 第2分科会(10月22~23日)

共に育つとは己が育つこと
~社員とすれ違う時がチャンス

杉浦 昭男氏  真和建装(株)

分科会での報告の様子

分科会での報告の様子

第18回障害者問題全国交流会が愛媛県で開催され、631名が参加しました。第2分科会で行われた愛知同友会理事・杉浦昭男氏(真和建装・取締役会長)の報告概要を紹介します。

生きる勇気と希望

少年期に深い心の傷を負った私は、生きる希望を失い、情緒不安定な青年期を過ごしていました。ある恩人に「人間はみな幸せになるための潜在能力を持っている。自立心がその能力を引き出す」と励まされ、自分にも潜在能力があるのか、この私を認めてくれる人がいるのか、それを確かめたい一心で起業したのです。

しかし、商売がうまくいかなくなるたびに、昔の劣等感が私を襲いました。その時、2人の少年に出会ったのです。1人は、手足が不自由な脳性麻痺の少年で、「生きた証を残したい」と口に筆をくわえて絵を描き、「ここにも人間が1匹生きているぞお」と叫んでいました。もう1人は、知的障害の少年で、彼の親戚のおばあさんが臨終のとき、「死んじゃあいかん。空は青い、鳥は鳴き、花がきれいに咲いている」と、この世の素晴らしさを語りかけていました。この2人の姿が、人間の素晴らしさと生きる喜びを私に気づかせてくれたのです。

我が社の「共に育つ」

入社5年目になるF君は自閉症です。家でも学校でも全くしゃべらなかった彼が、入社4カ月でしゃべり始めました。半年経った頃、「入社して良かったと思えるような自分になりたい」と書いてくれました。ここに、いかに生きていくのかという彼の自立心が表れているのです。

S君は知的障害で、入社24年目です。社内旅行で宿泊したホテルで「ここの社員教育はりっぱだね。ぼくのような子にも親切にしてくれる」と言いました。私は、偏見の目にさらされてきた彼の人生を見たような気がしました。

先日、朝礼で「人間が2足歩行になったのは、その気になったから」という話を紹介し、「では、なぜ人間はその気になったか」と社員に問うと、S君がさっと手をあげ「幸せになりたいからです」と答えました。

こうした彼らの自立心や向上心を支えるのは、経営者の責務です。そして「共に育つ」とは、社員を幸せにするという経営者の覚悟です。私は、常に社員の仕事ぶりや表情を見て声をかけ、叱る時も褒める時も、真剣に向き合っています。

今、S君の懸命な仕事ぶりが周囲を励まし、得難い財産となっています。生気のない眼をして入社した青年が、生き生きとしてF君と切磋琢磨しているのです。また、掛け算や割り算ができない社員がいれば、みなが囲んで教えています。徐々に、障害者も健常者も一緒になって動き始めた実感を得つつあります。

社員一人ひとりにどう寄りそい生きるかは、永遠のテーマです。一生を掛け、社員の喜びや苦しみを共に感じる経営者でありたいと思います。