活動報告

人を生かす経営を学ぶ総合学習会 第3回(11月2日)

豊かな人間の生き方

石井 拓児氏  名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授

「学びの切実性の喚起を」と呼びかける

私たちが未来をつくる

昨年11月2日に第3回「人を生かす経営を学ぶ総合学習会」が行われました。

講師の石井拓児氏(名古屋大学大学院教育発達科学研究科・准教授)は、今の社会は社会保障が解体し、税の再分配機能の低下、低賃金化、生活・教育・介護・医療・住宅などあらゆる領域での費用負担の増大が見られ、全世代での貧困が広がっていると指摘します。また、憎しみや対立が広がる分断社会であり、人間の尊厳が引き裂かれていると警鐘を鳴らしました。

そうした中、日本国憲法の基本的人権の保障、教育を受ける権利(学習権)は、自由権と社会権を支える土台の権利であるとして、その大切さを訴えます。「ユネスコ学習権宣言には、社会を変える担い手としての大人の責任、すべての人々にとって学ぶことの重要性が書かれている。私たちの未来はどうなるのか、それを決めるのは私たち一人ひとりであり、学習を通じて歴史を創る主体となることが提起されている」と述べ、私たちがこれからどのような社会を目指していくのかを問題提起されました。

中小企業家への期待

次に、日本社会の特殊性に言及します。長時間労働が当たり前の日本は社会保障が未整備なため、教育や介護等をサービスとして購入して生きていかねばならず、賃労働から離脱できない人生を余儀なくされていると指摘。良い学校へ進学し、良い企業へ就職し、高い賃金を得ることが、生きるための唯一の手立てになってしまっていないかと問いかけました。

最後に石井氏は、学習活動を通じて私たちは主権者になるといい、中小企業家への期待を次のように述べました。「人間の尊厳の原理に基づく社内教育、学習の場をどう作り出すか。いわば学ぶ喜びをどう回復するかが各社に期待されています。例えば、社会全体が幸せになるための経済活動はどうあるべきか、そのためにわが社はどんな会社になっていきたいのか。こういったことをぜひ社内で論じてみてほしい。自由に学習する時間を保障することと、こうした学びの場を積極的に提供し、学ばずにはいられなくなるような、『学びの切実性』を喚起してください」と呼びかけ、締めくくりました。