活動報告

第54回定時総会(4月24日)
「同友会らしい」黒字企業づくりへ

労使見解を基に「経営指針」を確立して企業体質を強化しよう

「地域社会からあてにされる企業へ」と挨拶する杉浦会長

過去最高の会勢で

定時総会が開催され、423名が参加しました。当日は活動方針を深める4つの分科会、総会議事、全体会、交流会の構成で行われました。

分科会では「労使見解の実践」「同友会と不離一体」「中小企業の仕事づくり」「中小企業を取り巻く情勢」の各課題について、到達点と新年度の重点を深め合いました。

総会議事では杉浦会長から、過去最高の会勢に達したこと、不公正税制反対署名も10万筆以上集めたことを紹介。労使見解の精神が定着し、経営指針の実践で会社の質が上がり、地域社会からあてにされる企業が増えていると挨拶がありました。

来賓の大村秀章愛知県知事からは「中小企業の発展こそが重要だ」と激励のメッセージを頂きました。

その後、「経過報告」「決算報告」「会計監査報告」の承認と新年度役員の選出が行われ、会長に杉浦氏、代表理事に加藤明彦氏が再任されました。

方針を語る加藤代表理事

方針を語る加藤代表理事

人を生かす経営を

加藤代表理事は「中小企業にとって厳しい時代が続き、非連続な激変の経営環境だからこそ、人を大切にする精神、また自社にとって本当に必要で裏づけのある正しい情報から得られた戦略・方針の入った経営指針に基づく経営をしていく必要がある」と語りました。

全体会では分科会で深めた方針を座長報告で共有し、今年度方針を再確認しました。1年間の成果と課題を発表する場では、研修大学卒業生より研修大学への参加呼び掛け、また署名結果報告について、私たちを取り巻くすべての人たちの幸せを追求し、同友会運動を進めていく決意が述べられました。

人を生かす経営推進部門の委員会からは、「同友会がなぜこの課題に取り組むか」が述べられ、委員会の重要性を伝える場となりました。

第54回定時総会(分科会)

第1分科会

人を生かす経営の根幹とは
 ~全ての人がその素晴らしさを発揮できる社会のために

杉浦 昭男氏  真和建装(株)(岡崎地区)
北川 誠治氏  (株)キタガワ工芸(春日井地区)

杉浦 昭男氏

杉浦 昭男氏

人は誰でも対等で幸せになる権利を持つ

杉浦氏は、戦後復興政策のもと中小企業が苦しむ中で、「全ての人は対等であり、誰もが幸せになる権利を持っている」と、同友会誕生から「人間尊重」と「自主・民主・連帯」の精神が根幹にあったことを紹介しました。

リーマンショック時に加藤現代表理事が「社員を解雇しない」と訴える姿に、同友会運動が何かを初めて学んだ会員が多かったと杉浦氏は指摘します。各々資質が違う人格と権利を認めるのは難しいが、同友会経営者のライフワークとなった時が本物です。

新商品開発での困難や長男の労災事故死、バブル崩壊やトヨタショックなど、自身が迷い悩みながら、「社長、一緒にやろう」と社員に励まされ、気づかされ学んできた33年の歩みが語られました。

北川 誠治氏

経営者の覚悟とは

北川氏は、人は誰でも「成長したい」「人の役に立ちたい」という根本的な気持ちがあり、それを実現させていく会社にしなければならないと、三位一体の経営による実践と学びを報告しました。

面接でも社員に対しても人間的な上下はなく、一緒に会社をつくっていく仲間として夢や希望を語り合うことの大切さ。同時に、若者たちの時代背景や心境も理解して、成長や喜びのある企業づくりが求められます。仕組みや手法に頼り過ぎた失敗経験も話されました。「会社のビジョンと社員の夢や幸せが一致しているか」「共に育つ経営者の覚悟とは一体何か」。北川氏自身の課題として参加者にも問いかけがありました。

第2分科会

同友会運動と企業経営は不離一体
 ~同友会での気づきを、企業でどう実践するか

馬場 愼一郎氏  データライン(株)(刈谷地区)

馬場 愼一郎氏

馬場 愼一郎氏

新規事業開拓に注力

データラインは創業50余年、コンピュータ帳票の印刷業を中心とした会社です。1997年をピークに、主力商品の受注先が海外に発注するようになったのを皮切りに、需要構造の変化により毎年6~7%売上が下がっているといいます。

社長に就任した馬場氏は、そうした経営環境の変化に対応するべく中期経営計画を策定し、新規事業の模索と財務対策に追われます。6年後には帳票にデータを載せていく新規事業を見つけ、馬場氏の「走れる者から走る」の掛け声に呼応して一部の社員が協力。当時流行っていたドキュメンタリー番組「プロジェクトX」と重なるように新事業開拓が進みました。実はその時、すでに新たな問題が芽生えていたようです。

理念と戦略の共有

数年後に同友会に入会し、馬場氏が初めて例会報告をした時に、「仕事を自分だけでやっていないか」と聞かれました。先輩会員の言葉から、全社員で一緒になって何かを成し遂げたという共通体験があれば、全員で理念や戦略の共有ができることに気づいたといいます。その目で見れば、理由はともかく、多くの社員が共通体験を得るチャンスを与えられないままでした。

昨年末から、再び新規事業を立ち上げる必要を感じ、「5年ビジョンプロ」を組織。3つの新規事業プロジェクトが立ち上がりました。「5年経ったら、誰にでも見せられる指針書を作ろうという決意で取り組んでいます。これも同友会のおかげです。」という馬場氏の前向きな言葉に、参加者も学びを得ました。

第3分科会

中小企業の仕事づくりが持続可能な地域を
 ~エネルギーシフトで地域再生

大槻 眞一氏  阪南大学 名誉教授 (元学長)
菊田 哲 氏  岩手県中小企業家同友会 事務局長

大槻 眞一氏

大槻 眞一氏

総合的な社会政策としてエネルギー政策を考える

大槻氏からは、2013年の中同協ドイツ・オーストリア視察をもとに、エネルギーの創出方法や使い方を転換することで、地域の仕事と雇用を増やし、地域経済を発展させることができることが理論的に明らかにされました。

そして、これを実現するため、エネルギー政策をワイドに考え、総合的な経済・産業政策との関わりを持つものとしてとらえることが重要と指摘します。エネルギー政策を考えることは、私たち自身がどのような社会を目指すのかが問われる問題であると強調され、エネルギー自治を実現する運動の、愛知での展開への期待が寄せられました。

菊田 哲氏

菊田 哲氏

エネルギーシフトを地域再生の力に

続いて菊田氏からは、幾度もの学習と議論を重ねながら、企業、産学官の連携による新たな仕事づくり、地域づくりを展開する岩手同友会の震災復興の奮闘模様が報告されました。

東日本大震災以後の人口流出と地域経済の衰退に直面するなかで、地域の仕事づくりには、(1)徹底した省エネ・小エネ、(2)高効率化、(3)再生可能エネルギーの視点が大きな手がかりになるといいます。また、地域から日本経済を再生させる指針ともなることが指摘されました。

最後に、エネルギーシフトの実現を目指した中小企業家の挑戦が、確実に地域を変える力となりつつあることが、岩手同友会の実践とその手ごたえに基づき強調され、報告のまとめとなりました。

第4分科会

グローバル化時代の愛知県経済と中小企業
 ~アジア大の分業と集積間連携

渋井 康弘氏  名城大学経済学部教授

渋井 康弘氏

渋井 康弘氏

強みや特徴を把握

グローバル化というと全てのものを平準化することとイメージしがちですが、それは一面的な見方だと渋井氏は話します。地域特性が全て塗りつぶされることは決してなく、伝統的な刺繍技術をインターネットを活用して海外へ売り出しているベトナムの地域等、グローバル化を生かしてむしろ経営を維持発展させている例が示されました。

日本では自動車と電機産業が経済を牽引してきましたが、両者には明確な差が出てきています。これはモジュール化により部品がどこでも作れる電機に比べ、自動車は安全性等の面から部品同士の高度な相互調整が必要とされるからです。闇雲に海外へ出るのではなく、自社の製品、またそれが使われる商品の特徴を把握して会社の方向性を判断することが、中小企業にも求められています。

人間らしく生きる

愛知県の産業構造に絞って考えると、実は自動車を中心とした一元的ピラミッド構造ではなく、自動車量産に適した三河と多種多様な機械産業が集まった尾張とが連携・補完しあう、分厚い産業集積の様相を呈しています。これが新産業を生む源泉になると共に、産業空洞化の一因でもある情報・交通技術の発展が、反対に複数の産業集積地を簡単に結ぶことを可能にして、国内の生産基盤を強化することに繋がっているのです。

現在のグローバル化の特徴として、アジア経済の飛躍、それに伴うアジア大の分業形成が挙げられます。これによる企業の海外展開はアジアの産業育成を促進しますが、賃金の低さだけを求めた進出は地域を破壊し、やがては自分の首を絞めることになると警鐘が鳴らされました。「同友会会員として、『人間らしく生きる』という憲法25条の理念も共に広める、日本発の経済モデルを示すべきでは」との言葉で締め括られました。

全体会

分科会と「会づくり」を振り返る

昨年度の総括と今年度の方針と課題を全員で共有する

昨年度の総括と今年度の方針と課題を全員で共有する

活動を総合的に紹介

今回の全体会では、愛知同友会の活動を広く総合的に紹介する場が設けられました。まず分科会のまとめが各座長から報告された後、「同友会づくり」の報告として各分野から紹介がありました。

次に「2014年度の増強結果」を報告。全体で500名超の増強、200名超の会勢増を達成し、増強目標達成地区は38地区に上りました。また「2014年度広報部の成果」として、地区例会報告の「あいどる」への掲載活動について、2014年度は36地区が全ての月に掲載する「最多賞」を獲得したことが紹介されました。

「第15期役員研修大学」の修了報告は、同友会の歴史と運動を総合的に学べ、「同友会らしい企業づくり」と「語り部」の意義を学べる魅力が語られました。その後、2015年度発足の新組織を紹介。「女性経営者の会」代表の石塚智子氏と、「名古屋市条例推進協議会」代表の木全哲也氏より、それぞれ活動の主旨と抱負が語られました。

専門委員会の成果と課題

引き続き「地域づくり」の報告として、「不公正税制に反対する署名運動」の結果と今後について報告。署名10万筆の達成、当面の課税強化阻止という成果と、今後も油断せずに、「あるべき税制」をめざして、運動展開していくことが語られました。

最後に「企業づくり」の報告として、人を生かす経営推進部門の各委員長より、それぞれ委員会の成果と課題が紹介されました。特に「就業規則がない会社はそれで良いのか」(労務労働)、「すべての人間にはかけがえのない潜在能力がある」(障害者問題)、「誰もが働きやすい環境はみんなが幸せになれる」(男女共生)など様々な問題提起がありました。

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