活動報告

連載(2)「正しいビジネス」とは

人権と人間尊重の経営

中同協総会第11分科会「グローバル化と中小企業憲章推進運動」の様子(2017年7月6日)

NAP策定に向けて

1990年代、低廉な労働力や新規市場の開拓などを求め、先進国企業の新興国等への進出が進みましたが、その中には利潤追求のために現地住民や労働者の人権を侵害することで利益を上げる企業が少なからず存在しました。

こうした企業行動と人権の問題が深刻化するなか、2011年3月、国連人権理事会は「ビジネスと人権に関する指導原則」を採択。そしてこの指導原則を実践する効果的手段として「国家行動計画(NAP)」の策定を加盟国政府に要請し、すでに20カ国以上が策定しています。

日本政府もNAP作成に向けた取り組みを2018年3月より開始し、外務省主導のもと関係府省庁、経済界、労働界、市民社会、各種団体等をビジネスと人権を巡る問題の関係者として招聘。しかし同会合の議論は「大企業は人権リスクに適切に対応しているが、中小企業は危ない。だから支援・指導が必要」という、私たちの現実とはかけ離れたものでした。

中小企業の声を伝える

転機は突然でした。山田美和氏(ジェトロ・アジア経済研究所/中同協定時総会in愛知、第11分科会報告者)が、同会合で中小企業に対する認識の間違いを指摘。当事者の声を聞くべきだとの提案をしたことで、第9回会合に中小企業団体として唯一、中小企業家同友会が意見を述べる機会を得ました。発言の要点は次の3点です。

(1)従業員の人権は中小企業の重要な課題で、同友会は半世紀近く前から人間尊重の経営に取り組んでいること。

(2)海外の低廉な労働力を利用して供給される商品・製品、サービス等と日本国内の中小企業は競合するため、国内外にわたる公正な市場ルールが必要なこと。

(3)社員を守り、事業を継続するには、中小企業の努力が正当に報われる価格と利益確保が不可欠。サプライチェーンが生み出した付加価値の公正な分配や取引慣行の不利是正が求められること。

ビジネスと人権を巡る世界の潮流は他人事ではありません。この潮流を私たちの「正しいビジネス」の追い風とするには、中小企業の声を届け、そして何よりも、自社は本当に「正しいビジネスをしているのか」自らを見つめ直すことが一層求められます。

(株)トータル・サポート 瀬戸  和田 勝