活動報告

連載(4)人を生かす経営に世界の追い風

愛知県中小企業研究財団の討議から

中小企業憲章の東アジア展開を構想

企業行動と人権の両立を求める「ビジネスと人権に関する指導原則」が、2011年に国連で採択され、国際的な潮流となっています。

連載4回目の今回は、中小企業が直面している困難と、現在の世界の流れの関連、同友会の「人を生かす経営」とのつながりを、愛知同友会の外郭組織「愛知県中小企業研究財団第一研究グループ」での論議の再現からご紹介します。

 

A 社員を採用し損なった
資質がいいので、将来の幹部にと期待したが、ある大手企業に採られてしまった。

B 給与水準が違うから仕方ないかな。あんた、自分だけが高い役員報酬とってたの?

A 違う。自社だけでできる会社づくりは、やってるよ。

C 大企業に劣らぬ給与を
資質が同等なら、中小企業でも払えるようになりたいね。

B 我々が払えぬのは何で?

A 当社は大手へのサプライヤー。毎年コストダウンを迫られて四苦八苦。

B 我が社は大手へのサプライチェーンに繋がっていないが、余裕がない。

C 使う電力・燃料・素材・車両等の大本は大企業だね。

B 確かに。で、その価格は事実上独占価格だ。だから、

A 大企業の内部留保金は
この20年間で3倍増だ。

C 1社平均、資本金1億円以上では約80億円。1億円未満では約5000万円だとか。

A えらい違いや。大手のご金蔵は札束で一杯なのか?

C 大半は海外直接投資に
人権尊重の度合が低く、安い労働力が入手できるからだ。

B 国内に環流する配当は?

D 法人税の課税ナシ。海外で課税済みという理由。

C その海外。各国が法人税の引下げ競争に走っている。

A 大企業と中小企業との格差が拡がる一方だなあ。

B この経営環境、改善は?

A 国内では、実効性ある独禁法制の確立とその発動。

C 国際的には、法人税引下げ、つまり福祉(人権)切り詰め、競争にもブレーキ。

A そんなことできるのか?

C 根本を確立すれば。
つまり、一人ひとりを大切にする経営がキーワード。経営における個人の尊厳、即ち人権の確立。

A 同友会の労使見解や憲章運動の目的そのものだね。

C そうなのだ。それが今、国連の決議に。
世界で追い風が吹き始めた

B なんで国連や?

C 中小国の低い人権レベルや、それによる低賃金めあての多国籍大企業による海外直接投資が目に余ったためか。

D 国連加盟は発足当時の51カ国から196カ国に。増えた中小国の連帯の風。

C 『国連・ビジネスと人権に関する指導原則』がそれ。

B 大企業も、国外の子会社や国内の中小企業も人を生かせるよう、その役目を果たせという国際的約束にもなる。

C その約束を果たすための日本国としての行動計画、これを今、外務省で策定中。同友会もこれに参加している。

A 同友会運動とともに
この世は歩み一歩ずつだが変えられる。中小企業であればこそ経営者は10年先をも見据えて今を頑張るわけだ

名古屋第一法律事務所  加藤 洪太郎