活動報告

第19回 あいち経営フォーラム特集(第7分科会~第15分科会)

第7分科会

地域と金融の未来共創
~小さな連携から大きな可能性

長島 剛氏  多摩大学経営情報学部・教授(会外)

多摩信用金庫での事例を紹介する長島氏

第7分科会では、多摩信用金庫にも籍を置く多摩大学経営情報学部教授の長島剛氏より、今後の中小企業発展のヒントを金融の視点から学びました。

長島氏からは多摩信用金庫の現状、取り組みが愛知県の金融機関との比較を交えて説明され、最新の事例として、金融機関が自治体を招いて勉強会や企業間のビジネスマッチングを積極的に行う傾向にあることが紹介されました。「金融機関は本当に企業のことを考えています」との言葉が印象的でした。

金融機関は原則、お客様のためにあること。本来の役割として課題解決型の活動を行い、お客様のための仕組みづくり、お客様に合う付加価値を見出す取り組みがされているとわかりました。中小企業が生き残るためには新しいものを見つけ、挑戦していくこと。周りの企業との情報交換も必要であり、金融機関と良いパートナーであり続けるためには良い時も悪い時も隠さず、正直に話せる関係づくりが重要だと感じました。

 

(株)T STYLE  河野 朋行

第8分科会

家業から企業へ
~次につなぐ採用と共育

佐藤 康之氏  (株)仙北造園(岩手同友会)

技術より考え方の浸透を重視する佐藤氏

仙北造園の佐藤康之氏は、「高齢の社員さんばかりで、うちの会社は大丈夫?」という奥様からの一言で、採用計画を中途から新卒中心に切り替えました。採用において、経営者は会社の魅力を伝え続け、仕事を好きになってもらい、既存社員とのベクトルを合わせていくことが重要であると説きます。「庭」を通じて、「豊かな心」を育むという考え方の浸透こそが、知識の習得や技術の上達よりも重要であり、共育にも繋がることを、三陸鉄道復興事業等への取り組み等の事例を通じて報告いただきました。

また、永続企業を目指して自社の事業を再定義したことにより、若い社員たちに「自分は何をすることができるのか」を自主的に考える素地ができ、メイプルシロップ事業や森林伐採事業等が形になりつつあるといいます。「リミッターは社長自身にある」という言葉は印象的でした。

グループ討論では10年後の自社像を意見交換した上で、働く人から選ばれ続けるために経営者として何をすべきかを考え、学びを深めました。

トライアローズ税理士法人  西本 尚史

第9分科会

「イクボス」がつくる会社の未来
~各個人が活躍する輝業をめざして

川島 高之氏  NPO法人ファザーリング・ジャパン理事(会外)

次世代型リーダー像を提唱する川島氏

人口減少が続く日本において、労働人口の減少は中小企業にとって脅威です。私は、そんな中で共に働く社員のワークライフバランス(以下、WLB)を考え、人生を応援しながら、組織の業績も結果を出し、自らも仕事と私生活を楽しめる経営者「イクボス」を目指すという目標を掲げました。第9分科会では、WLBの推進を先導し、各メディアに「元祖イクボス」として特集される川島高之氏に報告いただき、未来のリーダー像について考えました。

社員が責務を果たすことを前提とし、「イクボス10か条」を常に意識すること。WLBには「私生活を死守しながら仕事の信頼を失わない」という厳しさがあること。黒字経営の体質、利益を出せる仕組み、計画の重要性や、個人をフォローできるチームワークの必要性。そして、イクボスという新しい言葉が実は同友会が綿々と言い続けている「労使見解」「人間尊重の経営」に深くつながることを実感できる分科会でした。

信濃工業(株)  江尻 春樹

第10分科会

なぜ障害者雇用に取り組んだか
~一人ひとりが存在価値を実感できる企業へ

志水 嘉津彦氏  進興金属工業(株)(豊田地区)

障害者雇用で変化した自身を語る志水氏

報告者の志水嘉津彦氏は、2歳下の弟である専務が難病を発症し、障害者の雇用を身近なこととして考えるようになりました。会社の将来への不安や社員の反応、専務と一緒にどう働くかを真剣に考える中、縁あって発達障害のA君を雇用します。

最初は不満もあった社員たちも、ほぼ全部署がA君と関わり、それまで気付かなかった色々なことが改善されていきました。人手不足からの障害者雇用が社員を成長させ、A君の存在により「生産性=時間や数字だけを追うのではない」と気付かされます。健常者、障害者の分け隔てなく一人ひとりの得意分野を見出すことが経営者の務めであり、「人を生かす」とはどういうことかを改めて問い直す機会になりました。

グループ討論では、障害者雇用から生まれる価値として、人間尊重の精神によって企業や経営者の器が大きくなり、引き出しを増やせることを教わりました。また、どうすれば会社を成長させられるのか、経営面からも踏み込んだ話し合いができました。

Le Lis  成田 百合

第11分科会

経営者の責任は、企業の維持・発展
~環境に左右されない会社づくり

加納 ひろみ氏  KIGURUMI.BIZ(株)(宮崎同友会)

自社での学びを報告する加納氏

非連続の経営環境における経営者の責任をテーマに、宮崎同友会の加納ひろみ氏に報告いただきました。

前半では激動の人生とともに培われた母として、また生活者としての視点に基づく内部環境整備について、社員との前向きで温かな取り組みが語られました。後半では外部環境、いわゆるご当地ゆるキャラブームに変化が生じた2014年夏「地方税の無駄遣い」と槍玉に挙げられたことがきっかけで、好調に生産能力を上げてきた同社は急転直下の大打撃を受けたこと。人件費削減を余儀なくされ、依願退職を募ることとなり、経営者の責任を問われます。その結果、発展は必ずしも規模のことだけではなく、会社のコンテンツが成長し続けることでもあるとし、(1)BtoBの強化、(2)海外展開、(3)技術を生かした新商品開拓、さらに自社の応援団結成の取り組みへと展開しています。

グループ討論では、同友会企業らしい責任の果たし方とは何かを考える議論が展開されました。

ヒューネクスト(株)  鈴木 世津

第12分科会

自社の本業を磨き、市場創造へ
~新しい市場(領域)で勝負

菅原 直樹氏  (株)菅原設備(名古屋第4青同)

人材と情報の獲得が市場創造の「命」

菅原直樹氏は2010年に同友会入会、10年で社員数を2倍の68名、売上を4倍の12億としました。20年後には売上100億というビジョンを掲げています。

菅原氏は、市場創造には(1)経営指針の成文化、(2)三位一体経営、(3)経営指針発表会による発信が必要といいます。これらをもとに海外子会社2社を設立、国内ではM&Aやパートナーシップにより4社をグループ化、国土交通省後援の職業訓練校の経営に参画するまでになりました。市場創造は簡単ではなく、自分の実力を知り、志高い仲間らと切磋琢磨することで、社員や会社や本業までもが磨かれ、その結果として今の自社の姿があると報告。海外子会社は社内ベンチャーでできたこと、職業訓練校運営のきっかけなども話されました。

グループ討論では報告から普遍的で一般化できそうな部分を探り、「どういう考え方・行動が市場創造に繋がるか」について討論しました。

(有)位田モータース  位田 幸司

第13分科会

知ろう! 取り組もう! SDGs
~同友会運動とSDGs

堀尾 速人氏  仲建設(株)(北第1地区)

本業を通して社会に貢献する

仲建設では、「誇りある仕事で、信頼される家づくりを通して日本の住まいの伝統工法を伝える」ことを経営理念としています。堀尾速人氏の報告では、SDGsを通して自社の取り組みを再定義し、紐付けすることから始まったことや、それが社内の意識改革に繋がったこと、さらには生産者からエンドユーザーまで幅広い人たちが森に関わる様々な価値観を共有し、共感者が増えていくことで、「手段としてのSDGs」から「目的としてのSDGs」へと変化していったことが語られ、SDGsの本質について学ぶことができました。

グループ討論ではSDGsの視点から、自社の仕事の仕方やあり方について、できていることや足りないことなどを見直すとともに、SDGsの達成目標である2030年に向けて、どのような経営のあり方が求められているかを議論しました。

SDGsが中小企業憲章と密接に結びつき、同友会の理念の延長線上に位置づけられていることを改めて確認するとともに、今後の企業変革についても考えることができました。

(株)対話計画  葛山 稔晃

第14分科会

令和の時代をどう生きる
~非連続の時代を連携で乗り越えろ

齋藤 大士氏  (有)アイナン産業(名古屋第1青同)

「テクノロジーの発展を産学連携で好機に」

養鶏業を営み、10件近くの産学連携の経験を持つ齋藤大士氏は、経営理念実現のため自社だけではできない課題を様々な「産学連携」によって解決しています。報告では、産学連携のきっかけや流れ、成功のポイントや失敗事例などが詳しく語られました。

齋藤氏にとって産学連携は、自社の「実現可能性」を大きく広げられる点、深い知識を得ることで「社会が求めていること」を正しく掴み、会社として「変化するもの」を見極められる点が役立っているとのことです。経営指針を成文化し、自社の経営課題を明確にすること。情熱を注げることを見つけること。失敗を恐れずチャレンジすること。この3つが大切と、報告をまとめました。

連携はハードルが高いと思っていましたが、身近なものであると気づかされたと同時に、自社の未来に向けて様々な連携の可能性を考え、情熱を持って実践していくことの大切さを学びました。

(有)名守保険サービス  谷口 充

第15分科会

10年後の循環型地域をめざして~
何をシフト(転換)しますか

井内 尚樹氏  名城大学経済学部・教授(会外)

バックキャスティングの必要性を述べる井内氏

中小企業家エネルギー宣言「エネルギーシフト」、この言葉を聞いたとき、一般的には環境問題に起因した脱原発、太陽光発電等の再生可能エネルギーへの変換等が思い浮かぶのではないでしょうか。本分科会では、このエネルギーシフトをキーワードに、名城大学経済学部教授の井内尚樹氏に報告いただきました。

人口減少などマイナスの要素を多く含む日本。コストの高い有限資源に頼り、低効率なエネルギーをつくる現在のエネルギー政策では、エネルギーにかかる費用は上昇するばかりです。徹底的な省エネに取り組むとともに、再生可能エネルギーによる地域内自給率を上げることでエネルギーをつくるコストを減らし、また地域の資源を有効活用することで新しい仕事や雇用を生み出していく。それこそが循環型地域であり、中小企業が目指すべき姿ではないかと提言されました。

エネルギーシフトは、持続可能で豊かな生活を送るための、経済の仕組みのシフト(転換)だといえます。次世代へ繋げるためにもバックキャストの思考でものを考え、経営実践していきます。

(株)ナカシマ  中島 圭

「第19回あいち経営フォーラム」ハイライト

「第19回あいち経営フォーラム」ハイライト

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第19回あいち経営フォーラムには総勢1092名が参加し、10年後を見据えて各社の課題に沿って学び合いました。2020年は青年経営者全国交流会を愛知で開催するため、次回のフォーラムは2021年11月17日(水)に開催予定です。是非ご参加ください。