三河支部「経営者の集い」
9月1日
同友会で学んだ『選ばれる』企業づくり
佐藤祐一氏(株)羽根田商会社長(名古屋支部副支部長)
会社概要
・創立1951年・資本金9700万円・年商40億円
・社員数68名
・事業内容外国産及国産品の機械
・工具の輸入・販売
「キラリと光る」存在に
今年の経営方針書の冒頭に「世界の中心が変わった」と書きました。今までは「中心に自社があって、周りにお客様がある」という意識でしたが、本当は「お客様が中心にあって、私たちはその周りを囲んでいる星だ」と思うようになったからです。お客様の周りにある無数の同業他社の中から羽根田商会を選んで頂くためには、いかに「キラリと光る」存在になれるかがポイントだと思いました。
私にとっての「経営」
私が会社を継ぐと決めたのは大学3年生の夏でした。それ以来、「商社は本当に必要なのか」という問いに対する明確な答えを見つけようと悩んで来ました。私自身がそうなのですから、社員が商社不要論を論破する理論を持ち、働く意義を見出せているわけがありません。私はまず、この点を明確にする必要があると考えました。また、創業者である先代の哲学が社内に浸透している中で、私が社長として社員を引っ張っていくためには、「自分の経営戦略と経営哲学の2つを早く確立しなければ」という、焦りにも近い思いがありました。そのような時に同友会に入会し、しばらくすると「例会で報告しなさい」と言われました。その時に「カッコイイ報告はできないが、今やっていることなら話せる」と思い、書き出しました。それはA4で1枚のものでした。この1枚の紙によって、自分がどうしてこういう考えを持つようになったのかを整理することができました。それは今も生きており、わが社の経営方針書のベースになっています。一度紙に書くと過去の自社の戦略も明確になり、新しい考えも色々と浮かんできました。翌年、松山で行われた青全交でも報告の機会を頂き、それから1年の内に、現在3つある戦略の柱が次々と固まりました。ここまで来ますと、自社の存在価値を社員に自信を持って語れるようになりますし、自分の経営に対する考え方も固まってきますので、新卒採用の時も、それに共感する学生の中から採用できるようになりました。
「ユニークな商品を」
わが社には3つの基本的な考え方があります。1つは商品戦略です。この柱は先代の時から特徴としていたことです。「商社としていかに面白い、ユニークな商品を持っているか」が決め手です。加えて、私が社長になってからは「売るのに手間がかかる商品」という定義もつけ加えました。カタログだけでは売れない、つまり、詳しく説明してデモンストレーションをして、何度も現場でテストをしてやっと注文が頂けるような、そういう仕事をいとわずにできるのが、わが社の強みです。それは「持って行きやすい商品」でもあります。買う・買わないは別にして、話は聞いてもらえます。「ウチはいらないけど、変わっていて面白いね」と言ってもらえた方が営業マンの精神衛生上もよいですし、それが切り口になって、本当のニーズが出てくることもあります。
「即納体制をとる」
2番目は物流に関する戦略で、「即納体制をとる」というものです。自動車部品業界では当たり前ですが、切削工具のような副資材の世界では1週間前後のは当たり前ですが、わが社は、注文の翌日に納めるようにしました。これは、他社との差別化を図る目的もありますが、在庫の負担も小さくなり、回転も速くなります。さらに注文数が「いつもより多い、少ない」ということが見えるようになり、原因を探ると機械の調子がおかしいとか、被削材が変わったとか、そういうお客様も気づかなかったような変化もわかり、それに対応する商品をすぐに提案できます。営業につながる物流戦略です。
「ITを使おう」
3つ目はIT戦略です。わが社では「潜在的なお客様に手を挙げていただくためにITを使おう」と考えました。今までの訪問に頼った営業では、既存のお客様でさえなかなか行けません。そこでメールマガジンを発行して、新しい情報はそれに載せてお客様に届け、コンタクトを取れるようにしました。また、ホームページから問合せいただいたお客様にもメールマガジンを送り、関係を継続しています。メールマガジンは一回で二千通くらい出しますが、約半数は全く顔を合わせたことのないお客様です。こうして、お客様から手を挙げてもらえれば、門前払いは絶対にないわけですから、飛び込み営業と違い、営業効率はよくなります。そうやって新規のお客様を増やすためにITを活用していきたいと考えています。
「お客様の喜ぶ顔を」
これらの3つの戦略は、わが社の目的である「お客様の喜ぶ顔を見る」というところにつながっています。これらを通して、わが社が少しでも「キラリと光る」ことができれば、お客様に選んでいただけますし、かゆいところに手が届くような動きができれば、リピーターも増えてきます。それは安定した売上が確保できるだけでなく、社員がやりがいを感じるようになります。それが、わが社の理念と戦略、そして目的の3つの関係です。これを、少しでもわかりやすく社員に示したいと思い、「仕事と社員の人生や会社の目的とが、どこでつながっているのか」ということを図で描いてみました。(参照)
人生の目的は「充実した人生をおくること」から始まり、大卒の新入社員が四十歳になった時に会社がないでは困りますから、「羽根田商会が存続する」ことが前提です。存続するためには「安定・成長」という要素があり、そのためには「お客様に選んで頂く」必要があります。その「選んでいただく理由」をつくることが、わが社の戦略なのだと表現しました。これからの課題は、社員一人一人が戦略を理解し、行動につなげることです。それには、経営者に対する信頼が不可欠で、社員との約束をきちんと果たすことはもちろん、ダメな場合でも正直に言うようにしています。昨年は経営計画の中で約束した数字を出せなかったので、素直に謝りました。さらに自分の人生と会社の目的・戦略がリンクしていることを社員がしっかり自覚できる、わかりやすい経営をしていくことをめざしています。