金融アセスだより
第4回
徹底した無駄の排除
地元の優良企業トヨタが営業利益2兆円を突破しています。自動車生産台数においても、トップのGMを射程園内に捉えており、その好調さが窺えます。このトヨタを支える生産方式は「徹底したムダの排除」を基本思想とし、後工程が前工程に「必要なときに、必要なものを、必要な量だけ取りに行く」、非常に合理的な方法です。これは、トヨタが長年にわたり「知恵と創意工夫」で築いてきた手法であり、他社がすぐに取り入れ、実施することは至難の業ですが、中小企業がそのDNAをくみ取り、模範とすることは十分可能なはずです。
経営指針により資金計画を定める
トヨタ生産方式を支える大きな柱に「ジャスト・イン・タイム」があります。これを資金調達面(銀行融資)から考察すると、「必要なときに、必要なお金を、必要な金額だけ」資金を調達するということです。この資金が「必要なとき」とは、自社の現状把握を行い、将来の「あるべき姿」を想定して、そのギャップ(差異)を埋め合わせる方策を実施するときだといえます。その「必要なとき」を見える形にしてくれるものが、同友会でその作成を推し進めている経営指針です。
資金使途を明確に
銀行に融資を申し出るとき、最初に聞かれることが「資金使途(お金の使い道)」です。意外に、資金使途が不明確な場合があると言われます。資金使途によって借り入れ方法も変わってきます。本当に必要な設備投資なのか。既往の設備で補うことができないか。設備改善でなく、作業改善で補えないかなど。運転資金なら、売掛金・在庫の状況はどうか。再度、自社の貸借対照表(B/S)の資産項目をみて検討する必要があります。
身の丈にあわせた借り入れ
銀行融資にあたり、借入担当者が重視するのは「返済能力」です。返済能力を簡易に判断する方法は、損益計算書(P/L)に当期純利益と減価償却費の合算額です。この合算額が、借入金の年間返済額を上回ることです。再度、自社のP/Lをみて、借入金が自社の身の丈にあった借入金か、作成した返済計画が妥当か、検討する必要があります。
トヨタの「自働化」に学ぶ
トヨタ生産方式を支えるもう一つの柱として、「自働化」があげられます。自働化とは、機械に人の判断力を加えて、異常や不良を検知して作業を止めることです。従来、機械は生産することが使命で、不良品であろうと作業者が停めるまで生産し続けるものです。これを金融面に置き換えると、銀行は貸すことが使命で、条件さえ揃えば、経営者が止めるまで貸し続けることを意味します。一方、経営者は時には融資を断ったり、設備投資を延期する勇気も必要になります。そして、安易な銀行借入れに頼らず、営業キャッシュフローを増加することです。また、キャッシュフロー計算書を作成して、資金計画を検討する事も重要です。お金は使えば無くなるばかりでなく、自社経営の根本的な問題をおおい隠してしまうからです。
融資のジャスト・イン・タイム
トヨタ生産方式が成功を収めた要因として、協力会社との良好なコミュニケーションがあげられます。これは、同友会の金融アセスメント法運動の成果として、金融機関が「リレーションシップ・バンキング」を実施していることにつながっています。これにより金融機関は、中小企業との良好なコミュニケーションを築き、適切な融資を実施する前向きな姿勢を示しつつあるといえます。したがって、中小企業と金融機関との良好なコミュニケーションを構築し、融資のジャストタイムを築き上げるチャンスです。それには、自社の情報(経営指針・財務諸表等)を整備して、金融機関に開示するという真摯な経営姿勢が経営者に求められているのです。
FMCオフィス 金原義彦