第46回定時総会
「情勢学習会」取り巻く環境と中小企業の課題
1月31日
遠州尋美氏 大阪経済大学教授
井内尚樹氏 名城大学助教授
経営の重点は人
愛知同友会では、新年度の準備が本格的に始まり、活動方針、組織体制などの検討が始まっています。新年度方針を検討するにあたり、取り巻く経営環境の実態と、会員企業の経営と同友会運動の課題を深めるため情勢学習会が開催され、理事・支部三役を中心に四十名が参加しました。冒頭、戦略会議座長の高坂氏より昨今の情勢課題として、深刻な人手不足・人件費の高騰・正規雇用から非正規雇用へのシフト・団塊世代の退職に伴う技術伝承など、企業経営の重点が「人」の問題に移っていること、社会保険料の増大、所得税・住民税の定率減税の廃止など、国民の可処分所得の減少による消費動向への影響が大きいことが紹介されました。
地域経済を考える
井内氏は、県内の豊かな自治体が格差是正に向けて努力すれば素晴らしい可能性が開けるとし、ものづくりの県として、日本一の労働権を整備する方向を国に働きかけることを提案しました。また、設楽ダム・セントレア関連事業・伊勢湾岸自動車道など大企業を優先した計画や、化学物質の排出量が日本一の愛知県の特徴を紹介。誰もが安心して生きられる地域社会には、福祉・医療・教育などの基本的な社会資本が重要であると言及しました。そして、「ものづくり」と「まちづくり」をつなぐ媒介を豊富に見出す事が重要で、墨田区が行っている「小さなものづくり博物館」の取り組みを通じた産業観光を紹介しました。このようなまちづくりを担えるのは中小企業であり、積極的な行政への会の参画について提起を行いました。
資源循環の仕組みを
遠州氏は、愛知の製造業の活況要因を、雇用調整ではなく、生産調整を行ってきたことによると分析。その反面、日本の産業地域が直面するもの作りの危機を指摘しました。まず、付加価値が源泉(商品の具体的有用性)を生み出す製造現場ではなく企画やサービス部門に取られてしまうこと、グローバル化による、社会的生産基盤のノウハウを持っていた元請大企業・商社・問屋の機能不全を紹介しました。欧州では行政の規制によって価格破壊がないこと、低価格競争の行き着く先を具体的事例を交え紹介。また地域全体で人々の生活を良くするものが開発されるように行政がコストを負担したり、価格ではなく安心できる商品が良いという宣伝と売る仕組みづくりに企業家の可能性など、今後、会方針に生かしていくべき問題を提起しました。