金融アセスだより
第10回
キャッシュフローを把握する
「中小企業の会計に関する指針」には「経営者自らが会社の経営実態を正確に把握するとともに、金融機関や取引先からの信頼性の向上を図るためにキャッシュフロー計算書を作成することが望ましい」と書いてあります。この中堅・大企業ではすでに常識のキャッシュフロー計算書ですが、中小企業には、あまり浸透していないのが現実のようです企業の家計簿であるキャッシュフロー計算書は、会社の資金の出入りを把握する重要な帳簿です。極論ですが、大赤字の会社でもお金さえ回っていれば企業は存続します。
お金の見える化
逆に利益が出ていても、資金がなければ会社は倒産してしまいます。商取引を行ううえでは、売上は現金で支払は翌月以降が理想ですが、現実はその逆がほとんどです。売上が多くても売掛金を翌月に回収できないと大変です。ましてや当月の仕入れの支払や固定費の支払は待ってはくれません。つまり、いかに多くの現金をもち、支払に当てることが出来るかが肝になり、利益=現金ではないということです。実は、会社のお金を上手に使っているかを「見える化」する手法が、キャッシュフロー計算書というわけです。
電子マネーの普及
今後注目されるのは、今飛躍的に伸びているエディ・NANACOなどといった電子マネーです。消費者には大変便利ですが、企業側は、クレジットカードと同様で入金は遅くなりますが、導入をためらうと機会損失が発生してしまいます。近い将来ほとんどの決済が電子マネーになるかもしれません。その流れに乗るためには、財務体質を改善して、資金調達が容易に出来るようにしなければいけません。財務体質を改善するためには何が必要でしょうか。それは月次の成績がすぐわかり、日々のお金の流れを把握し、入出金の計画を立て、次月以降の経営の中身を「見える化」することだといえます。
経営体質をクリアに
財務体質がわかる資料は「月次決算書(試算表)」や「資金繰り表」で、金融機関もこれらの書類を融資のための資料として重視しています。経営者と金融機関の間にある感覚的なズレも、そういった資料があれば同じ視点で話すことができ、会社の変化が一目瞭然でわかるので金融機関の見方も良い方向に変わります。このように、自社の課題解決のために、人・物・金・情報という経営資源を上手に使っているかを「見える化」することが、結果的に金融機関との関係を良好にします。資金調達が容易に出来れば、事業を円滑にしていくことが出来ます。業績が上がれば、社員・取引先といったステークホルダーとの関係をも良好にしていきます。自社の経営の成長や発展に役立つツールとして、経営資源の重要要素であるお金の流れの「見える化」=キャッシュフロー経営を活用しましょう。
イスクラアセットプランニング(有)二村 佐斗史