ヨーロッパ企業視察
実現可能な環境建築 〜アルザス(フランス)企業視察(3)
国立豊田高専准教授 鈴木 健次

街全体で環境にやさしいまちづくりを行う“環境首都”フライブルク(ドイツ)のボーバン地区(写真は環境建築群)

プラスエネルギー住宅

今回の視察では、日本で「環境先進都市」として知られたドイツのフライブルクも視察しました。

フライブルクでは、1992年から低エネルギー基準の建築を条例化し、プラスエネルギー住宅と呼ばれる省エネ効率の著しく高い住宅を実現させ、多くの文献で報告されていますが、実際に見た省エネ住宅の印象は意外なものでした。

住宅の仕様は、窓ガラスがLow−E三層と進んでいる点はあるものの、基本はパッシブソーラーハウスです。

断熱性能も日本の基準に比べれば高いのですが、日本でも将来の基準改正を踏まえてゼロエネルギー住宅に取り組む工務店では既に同等の断熱性能が見られます。

これらの低エネルギー住宅に太陽光発電等を装備し、収支をプラスにしているのがプラスエネルギー住宅です。

日本では気候が異なり、また厳しい耐震基準があるため構造的な配慮が必要ですが、適正なパッシブ手法や断熱技術を学んでいる工務店であれば、建物自体は大きなコスト増もなく十分実現可能な印象を受けました。

路面電車の再生

一方、フライブルクやフランスのストラスブールは、路面電車を軸とした公共交通主体の街づくりのモデルケースとしてもよく知られているようです。

クルマ依存社会から脱却し、徒歩・自転車・公共交通を中心としたまちづくりを目指して、公共交通ネットワークの整備・強化、自転車道の整備、郊外のパークアンドライドが実施され、都心は歩行者優先空間として、自動車を抑制しています。

日本でも少子高齢化や環境問題の深刻化に対し、公共交通を活用し都市機能を集約した「コンパクトシティ」実現のための路面電車導入が注目されています。

これらの人と環境にやさしいまちづくりに関しては、住民参加により成し遂げられた成果を強く感じます。フライブルクでは「学びながらの計画」という手法により、多くの住民参加を促し、行政を動かしました。

豊かな社会づくりのためには、優れた住民参加手法を学ぶ必要があることを強く感じました。