金融アセスだより(第50回)

安易な海外投資

中小企業の国際化について考えた時、真っ先に思い浮かんだのが、香港に拠点を置く投資会社を舞台に多くの日本人が海外投資詐欺にあったという事件です。これは何を意味しているのでしょう。

世界の経済は、新興国を中心に人口が増加、これに伴いエネルギーの大量消費と天然資源価値の上昇、情報・人材・金融のボーダレス化、企業のグローバル化といった様に変化の時を迎えています。それに比べて日本はどうでしょうか。

少子高齢化問題を抱え、社会保障制度は削減されています。また日本経済の沈下と外資企業の撤退が相次いでいます。そんな将来に対する不安感から手軽な不労所得づくりに走る。これこそが安易な海外投資に引っかかる構図を生んでいるのです。

投資環境の整備が必要

欧米では幼い頃から当たり前に投資教育を受け、そもそも生まれた時からボーダレスの環境にあります。一方、日本人は投資に対する考え方の教育を受けておらず、その環境も整っていません。

これは、中小企業の安易な海外進出思考にも共通しています。経営者は海外との取引を学んでおらず、その環境も整っていません。また、自社の資本政策や資金繰りを考える時も熟慮が必要です。

今までの海外進出は、元請会社からの強要や製造効率化といった人件費削減を求めることが、その主な理由でした。しかし、これからは日本製品の販路拡大やサービスの提供、さらに市場の創出が見込めるベトナム、インド、ロシア、ブラジルの可能性を探ることとなり、カントリーリスクによる生産地としての中国離れが加速すると思います。

正しい立ち位置を決める

現在、日本経済の全体や、私たちの生活すべてのことで国境がボーダレスになっています。コンビニに行けば店員のほとんどが中国人。家電量販店や、デパートに行けば韓国製品が並び、中国語が飛び交っています。実際の生活はもうすでに、国境などは存在しないのかもしれません。

私たち中小企業は、この現状にどう対処すべきか。中小企業の国際化とは何なのか。正しい情報を入手・理解し、早い変化に対応すること。自分の足できちんと立って、その立ち位置を決めること。そんなことが、国際化に向けて進む第一歩なのです。

 

山内税務会計事務所

山内 新人