「現代経済の本質を学ぶ」基礎講座 第11講座(2月7日)
イギリスの労使関係と企業経営

労使関係が与える企業経営への影響を学ぶ

イギリスと日本の労働組合のあり方

「現代経済の本質を学ぶ基礎講座」第11講座が名城大学の森川章教授を講師に迎え開催されました。

今回は労使関係が与える企業経営への影響を、イギリスと日本の対比から互いの違いを浮き彫りにする講義となりました。

両国の違いの特徴的な点はそれぞれの労働組合のあり方に表れています。

日本では、労働組合といえば個々の企業に属する企業別組合が連想されます。日本においても自動車、電機、鉄鋼など産業別の名称を持った組合組織は確かにあります。しかし、それらは連絡調整機関の域を出るものではなく、交渉権を持たない組織であるのが実情です。つまり、労働組合として基本的な権限を持っているのは、一般的な企業別組合です。

対してイギリスでは、職種別、産業別組合が組織され、企業の範囲を超えた全国組織が形成されています。そして、労働組合としての基本的な権限もこれらの組織が持ち合わせています。

結果、イギリスにおいては同一労働・同一賃金の原則が確立されるなど、日本とは異なる条件がスタンダードとなっています。

歴史的背景を知る

とはいえ、イギリスの労使交渉にも問題はあります。

1つ目は、労使交渉に産業レベルと職場レベルの2つの交渉が混在する「労使交渉の二重性」と呼ばれる問題です。2つ目は既得権重視の労働慣行(職場規制)の存在と、それに端を発する紛争。3つ目は、労働者の有産者に対する強固な敵対意識です。

このようにイギリスの労使関係は非常に複雑です。そして、そのために経営の改革・改善が困難になっている状況があるそうです。

こういった複雑さには、現代企業の出現以前に労働組合が確立されていたこと、イギリスが「世界の工場」であった時代に労働組合が確立したこと、政治の面において労働者党の政権が確立されたこと、という歴史的背景があります。

今回の講義では、労使関係と一括りに言っても国による差異が非常に大きく、その違いが生まれた歴史的背景を知ることで、これからの労使関係を考える良い機会となりました。