農業部会(3月23日)
TPPによる情勢と戦略−循環型経済の可能性

井内 尚樹氏  名城大学教授

ドイツ農家の自然エネルギー発電施設

「自然の恵み」を活用

農業部会が11名の参加で行われ、井内尚樹氏(名城大学経済学部教授)の報告で、TPP参加による国内農業情勢と経営環境の変化の見通しと戦略について学びました。

これまで日本が経済発展を遂げてきた背景に石油をはじめとする地下資源からの恩恵がありますが、資源問題と環境問題が問われるようになるにつれ、近年では循環資源である自然エネルギーを有効活用する取り組みが始まっています。

今後、TPP参加によって国内では経営環境の大きな変化と農業が危機的状況に陥ることが予見されます。そういったなか井内教授からは、農業経営者が活路を見出す手段の1つとして「自然の恵み」を最大に活用する循環型地域経済の構想が紹介されました。

小規模企業のメリット

先進的な事例としてドイツのフライアムトでは、畜産の糞尿を利用したバイオガス発電や、木質チップを利用した給湯設備・冷暖房といった農家の取り組みが中心となって地域経済を支えています。これらの農家はエネルギー自給率200%という実績をあげることに成功し、小規模な中小企業だからこそできるメリットを実証しました。日本では長野県飯田市などで、こうした循環型地域づくりが進められています。

また井内教授は、労働者や若者、そして子供が自然から切り離されている日本の現状を指摘。自然との交流を通じて他者との関わりを深めることは、豊かな人格形成を補助する役割があること。そして、これからは経営戦略だけでなく、人間の成長の場として「自然の恵み」を生かす意味からも、循環型地域経済の可能性と期待を述べました。