第52回定時総会特集(分科会、全体会)

【第1分科会】
同友会と企業経営は不離一体

〜厳しい環境だからこそ同友会理念を活かす
佐藤 邦男氏  アジアクリエイト(株) (東三河支部長、豊川・蒲郡地区)

佐藤 邦男氏

第1分科会では、同友会と企業経営の関係を再確認し、厳しい経営環境だからこそ同友会理念を自社に置き換えて実践することで乗り越えようという目的を掲げました。その実践報告を通し、同友会の学びと企業経営は車の両輪のように関連していることを確認し、明日からの企業経営に同友会理念を活かしていく足掛かりとしました。

同友会に入会し社員と向き合う

技術者出身の佐藤氏は東南アジアや中国などへ視察に行く中で、その生産ラインや多彩な設備を目の当たりにし、自社の限界を予感したといいます。仕事もあり忙しかった当時、まだ社内に危機感はありませんでした。

しかし、大手企業との大きな商談で、機械装置の製作での失敗から赤字を出してしまいます。社内の不満は佐藤氏に向かい、いよいよ限界だと思いましたが、派遣業の許可申請を取得し、技術屋の派遣事業でなんとかマイナスを取り返しました。

その頃、同友会と出合い、藁にもすがる思いで入会。そして社員と共に、就業規則と経営指針を作り上げます。経営理念も、社員に伝わりやすいよう平易な言葉に書き換えて、「みんなにとって良い会社」と発表しました。また、リーマンショック時には、社内の組織を変えることで危機を乗り越えました。

同友会の学びと企業経営は車の両輪だと確認する

社内一丸となり自社の成長を実感

社員が気持ちを1つにしていく中で、仕事が進まない社員がいた時には、「どうやったら、その社員が仕事に取り組めるようになるだろうか」と社員の成長も考えるようになりました。同友会で役員を受けて学ぶうちに、社員が生きがいや働きがいを感じられる企業づくりが企業の成長につながることに思い至り、実践してきたといいます。そうして社員と共に新製品を作り上げ、利益を出すことができ、社内一丸となった成果も出てきました。

また、他の会員のアドバイスも企業づくりに活きているといいます。企業展に出展した際、助言を受けてブースを改善し好評を得たこと、「人間性、社会性、科学性」を学び、共育を真剣に考えて経営指針に盛り込んだことなど、会の仲間の声に真摯に耳を傾ける姿勢が語られました。

これからは経営者として立ち止まらず、労災がない安全で安心して働きやすい職場づくりに努め、地域に対してもこれまで以上に加工部品を地元業者から仕入れ、地域貢献を続けていくという決意表明があり、報告のまとめとされました。

【第2分科会】
『労使見解』の今日的意義

〜人を生かす経営の総合実践

広浜 泰久氏  (株)ヒロハマ(中同協幹事長)

広浜 泰久氏

経営指針、採用、共育などの経営課題は、「労使見解」を要として相互に実践的に深めていくことが大切です。外部環境がますます厳しくなり雇用や生活や地域社会が大きく変化している中、労使見解の今日的意義と、人を生かす経営の総合実践を考え、同友会らしい黒字企業づくりで市場創造と活力ある社会づくりを展望する分科会でした。

人間尊重経営の3つの側面

中同協の広浜幹事長の報告は「人間尊重の3つの側面」を自主・民主・連帯の視点でどのように考えていけばよいか、という報告でした。

第1に、「個人の尊厳性」が掲げられており、「人間らしく生きる」とは「昨日より今日、今日より明日の成長を、自らの意思でできること」をあげていました。そのためには「決して自分を卑下せず、他者のせいにもしない」など、「自立自尊」の考え方や、その考え方に基づいたヒロハマでの社員の成長を促すための科学的な人事戦略が紹介されました。また、その根底には労使見解が決定的に重要であり、経営者として自分の取り組みの正しさを社員に理解してもらうことの大切さが強調されました。

第2に「生命の尊厳性」として、「かけがえのない相手を大切に思う心から報・連・相ができる」といい、相互の素晴らしさを発見できるような社内での取り組みが紹介されました。また、労働環境整備への取り組みも紹介され、人事考課は成長を促すのが目的で、「やるべき仕事」「給与」そして教育に連動していることが必要とされました。

「人間尊重」の3つの側面を自主・民主・連帯の視点で考える

適材適所で成果を増幅

第3の「人間の社会性」では、「あてにし、あてにされる関係」として「分業による成果の増幅」の事例が紹介されました。会社組織は多くの人の力を借りることで成果が増幅し、そこに関わる人が増えることで仕事の幅が広がります。そうなるためには、社員一人ひとりの能力が最も発揮されることが大切であり、障害などの制約を持った社員も適材適所で仕事を割り振っていると報告されました。

その3つは全て、「経営指針」に基づいており、経営指針には全ての課題を盛り込んで、経営者が信じて取り組み続けることが大切である、とまとめがされました。

人は、働くことで生きる喜びや社会との繋がりを感じることができます。仕事を通して繋がり、あてにされることで自信が持てるようになれば社員の自主性も発揮できるようになるとまとめました。

【第3分科会】
条例の活用

〜持続可能な地域づくりを模索

杉原 五郎氏  (株)地域計画建築研究所 (大阪同友会副代表理事)

杉原 五郎氏

愛知県中小企業振興基本条例が昨年10月に施行され、新たな課題が生まれました。私たち自身が条例をどう活かし力とするか。また各自治体での条例制定を進め、地域の隅々までその精神をいかに根付かせるかです。この分科会では大阪同友会が先駆的に取り組んできた「自社経営と地域づくりとの関わり」を考える実践報告を通して、豊かな地域づくりを考えました。

自社経営と地域づくり

杉原氏は2007年より憲章・条例の役員を担当し、大阪同友会の憲章・条例運動に深く関わってきました。2010年に憲章が閣議決定され、大阪でも大阪府と11市で条例が制定されるなど取り組みが進んでいます。しかし、憲章・条例運動とは制定がゴールではなく、その憲章・条例を活かした地域づくりをどう進めていくかで真価が問われると杉原氏はいいます。

大阪同友会では、まず自社経営の視点から地域づくりを考える取り組みを始めます。そこで明らかになってきたのは、自社経営にとって「地域」とは、中小企業が「企業活動を営む場」であり、市民が暮らしている「生活の場」であり、地域の発展なくして中小企業の明日はないということでした。

「企業づくり、地域づくり、同友会づくりを一体的に進める」と杉原氏

点・線・面の視点からの取り組み

今後は、中小企業を主軸として、豊かな地域づくりをどのように展開していくかが課題と杉原氏はいい、大阪同友会が取り組む点・線・面の視点からの地域づくりを紹介しました。

「点による地域づくり」とは個別企業による自主的な取り組みで、いずれの企業でも取り組めるものです。地域の人々の雇用、インターンシップの受け入れ、原材料の地元での調達、納税などがこれに当たります。

「線による地域づくり」とは、地域に根ざした中小企業が、他の企業や自治体、商店街、学校、諸団体などと協働して取り組むもので、企業間連携による仕事づくり、産学連携による研究開発・製品化・実証実験、キャリア支援などがあります。

「面による地域づくり」は同友会など地域の経済団体が基礎自治体、市民、関係諸団体と連携・協働し、地域資源を最大限に活用して地域の活性化を進めるものです。事例としては、まちなかバルに地域の商業者や自治体などと連携して取り組むことがあげられます。

杉原氏は、企業づくり、地域づくり、同友会づくりを一体的に進め、持続可能で豊かな地域づくりを模索していくとの決意と共に報告を締めくくりました。

【第4分科会】
時代のニーズに応える情報化戦略

〜現場の声を伝え、社会との関係づくりを

加藤 昌之氏  (株)加藤設計 (総務・情報担当副代表理事、千種地区)

加藤 昌之氏

第4分科会では、2013年度の情報関連部門方針「『情報創造』から『未来創造』へ」を深めました。中小企業の現場の声を効果的に伝える組織づくりを進め、同友会がめざす中小企業や地域・社会の未来像を展望し、組織的・創造的な広報活動でPR(パブリック・リレーション)、すなわち社会関係づくりを推進することを確認しました。

あるべき企業像・社会像を発信

加藤氏はまず、1995年阪神と2011年東日本の2つの大震災における、同友会の広報活動を紹介しました。現場の声をいち早く集約し、会内外のネットワークを生かして、震災直後の対応や復興支援に重要な役割を果たしたことを示しました。また憲章・条例運動で、会員自らが描いた「あるべき企業像・社会像」を発信し、行政と信頼関係を築いて展開してきた経緯を紹介。これらの事例から、「情報創造」と社会関係づくりの重要性を強調しました。 次に、愛知同友会50年史から組織づくりの歴史と特徴を読み解きました。数年後の「ビジョン」を描いて活動し、時代に適応して組織の形も柔軟に変えてきたこと。独自の景況調査で中小企業層の実情や課題を分析し、情報発信のカギとしてきたこと。

さらには、情報加工や発信の専門職として事務局を位置付け、育成してきたこと。そして会員による自主的・主体的活動と組織づくりが「あいどる」活用によって合理化された経緯を紹介しました。

PRは社会との関係づくりだと学ぶ

懇談や連携を通しキーマンを探す

これらを踏まえ、加藤氏は情報化戦略の要点として(1)会員は同友会のめざす企業づくりを実践しながら経営実態・現場の声を集約し、(2)事務局や外部協力者と連携して情報を分析し、(3)事務局を基地に効果的に発信することをあげました。普段からのPR(関係づくり)活動としては、マスコミ・行政との懇談や学校・他団体との連携を進め、キーマンを探して深く繋がることを提唱。これらは個々の会社経営においても日常的に必要な取り組みだと、自社実践を紹介しながら述べました。

最後に「情報創造」「未来創造」とは、同友会と会社経営を不離一体に取り組み、声を社会に発信して仲間を増やし、地域・国の発展をめざす運動であるとまとめました。

【全体会】
「同友会らしい」黒字企業づくり

〜危機感を共有して、チャンスづくりに

分科会のまとめ報告をする各座長(左から、佐藤祐一氏、岩田竹生氏、豊田弘氏、宇佐見孝氏)と加藤明彦代表理事

4つのテーマで深めた方針

全体会では、4つの分科会からの報告と方針の解説で、理解を深めました。

第1分科会「同友会と企業経営は不離一体」では、アジアクリエイトの佐藤邦男氏が報告。市場縮小の中、変化をとらえて自社ブランドを立ち上げ、社員が夢と誇りをもって働ける企業へと成長させてきた経営姿勢に学びました。

第2分科会「労使見解の今日的意義」では、ヒロハマの広浜泰久氏が報告。女性、高齢者、障害者も含めて人間尊重の3つの側面「自主・民主・連帯」を深め、すべての課題を経営指針に盛り込む重要性を確認しました。

第3分科会「条例の活用」では、地域計画建築研究所の杉原五郎氏が報告。地域づくりと企業づくりは表裏一体であり、中小企業振興基本条例を自社経営の力とし、激変の環境変化に備えることの重要性を共有しました。

第4分科会「時代のニーズに応える情報化戦略」では、加藤設計の加藤昌之氏が報告。状況を分析し発信する情報伝達、タイムリーに理念を浸透させる情報創造で中小企業の地位向上を推進する同友会の取り組みを、自社経営に照らして考えました。

方針を軸に人を生かす時代に

その後、加藤明彦代表理事が方針の解説をしました。まず、理事の役割図で愛知同友会の全体像をつかみ、方針を具体化した多彩な活動の場があることを紹介しました。

1社1人の採用でも、同友会の仲間が集い多くの新入社員と励まし合える入社式や社員研修、大学との産学連携による新しい仕事づくり、中小企業の魅力を広く社会に向けて発信する取り組み、同友会運動への理解を深める役員研修大学、入門から段階的に学べる経営指針講座、社員とのベクトルを合わせる企業変革支援プログラムの活用など、自社の経営課題にあったテーマで能動的に学べるのが同友会の特長です。加藤氏の自社実践を織り交ぜた報告で、方針がより身近で鮮明なものになりました。

最後に、総会実行委員長の高瀬喜照氏より、「厳しい環境にあるときほど中小企業の果たす役割は大きい。中小企業から成長戦略を発信し、人を生かす時代創造に向け、方針を軸に活動しよう」と呼びかけがあり、締めくくりとなりました。