
二十一世紀到来を目前にした年を迎え
会長佐々木正喜
消費不況、雇用不安の中で
昨年の年明けには、「今年は穏やかではあるが、桜の花の咲く頃には景気の回復が見られる」と大いに期待していたのですが、期待は完膚なきにまで打ちのめされてしまいました。消費はいっこうに伸びず売上は各社とも減少し、余剰人員を抱えた企業ではリストラという人員整理が進んでいます。このことが将来に対する大きな不安を呼んで、消費を更に減退させています。雇用情勢も厳しく、失業率も戦後の混乱期を除けば、過去最悪の数値になっています。企業の存続のためには、リストラも不可避かも知れませんが、職を失った多くの中高年者の生活の存続が危うくなっています。
金融機関の姿勢が問われる
一昨年の春頃から始まったといわれる金融機関の貸し渋りについては、会ではこの一年間で三回にわたるアンケート調査を行い、会員の皆さまにお知らせしてきました。結果,その実情は改善されている気配は感じられず、むしろ増加傾向にあります。そんな中で国の緊急措置として、昨年十月から信用保証の枠が拡大されました。貸し渋りを受けた企業であるという認定を受ける手続きのために徹夜組まで出たということですが、少し救われたという感じがします。しかし、やっとの思いで手にいれた信用保証付の資金を取引金融機関から直接融資を受けた分の返済に回される、いわゆる「借り替え」を迫られたという話を聞きます。ほんの一部の金融関係者だと思いますが、なりふり構わぬ行動に怒りを感じています。
自立の前提は自律の精神
こういう極めて悪い経営環境であるにもかかわらず、増収増益を成し遂げている企業も少なからずあります。羨望の眼で見るばかりでなく、その企業のトップの姿勢を謙虚に学ぶことが大切だと思います。運もあったかも知れませんが、将来の予測と変化への迅速対応さが優れていたからではないでしょうか。会内では二十一世紀に向かっての「同友会ビジョン」の検討が各支部・地区で積み重ねられてきました。このビジョンでは未曾有の不況を克服し、来世紀にも、生き生きと活動していくための考え方を挙げています。自立型企業を標榜しているのもそのことの表れです。しかし、自立型企業をまっとうするには、「自律型企業」でもなければならないと考えます。ご承知のように消えていった多くの有名企業は、自らの行いを省みて律することなく破綻していったのです。「モラルハザード」という言葉はすべての企業に注意を促していると、私達はぜひとも肝に銘じておきたいと思います。
どうゆうき
▼ロシアの極東地域にあるウラジオストックとハバロフスクに昨年九月、行ってきました。南・東海地区が二年に一回行う地区会員有志の海外視察研修に参加したのです。新潟空港よりアエロフロート機で約一時間四十分、あっという間にウラジオストック空港に到着しました。▼到着してまず驚いたのは空港の建物が古く、しかも補修されていないことです。建物内部の照明は蛍光灯ですが、その半分は切れているのか光を放っていません。後で解ったことですが,ウラジオストックでは停電が時々あるようで、電力事情は相当悪いようです。▼まあそれはよいとして、入国審査と税関の遅いことといったらひどいものです。私達全員が通過するのになんと二時間を費やしたのです。ロシア人の官僚体質は帝政ロシアから共産党独裁を経ていっそう磨かれており、自由主義経済に転換してもまったく改善されていません。まだまだ「観光」という概念が定着していないのです。入国時の第一印象が悪いとついついすべてが悪く見えてしまいますが、ロシア人一人一人は能力も高く、体格も良く、若い女性はスタイルもよく、美人ぞろいです。(ある年令以上になるとビア樽タイプになりますが)▼市街の道路は日本製の中古車が溢れていて、交差点には信号がないし、警察官はほとんどいないので、いたる所で大渋滞です。新しい秩序ができるまでの胎動期というところです。米国と並ぶ超大国でしたが、今やハイパーインフレでルーブルは紙屑と化し、一からのやり直しを強いられ、苦悩している姿の一担を垣間見ることができました。
代表理事 鋤柄修