中小企業だからこそ見えた仕事の役割、自分の役割
「勉強と就職活動に興味が湧いて来た」
99愛知同友会インターンシップ(8月30日〜9月10日)
初日と最終日は全員で集合研修

愛知同友会の「99インターンシップ」は、8月30日から9月10日までの2週間(10日間)にわたり、会員企業31社と事務局で行われ、56名が研修を受けました。第1日目(8月30日)と最終日(9月10日)には集合研修が設けられ、最初の講座で鋤柄代表理事が「中小企業経営の魅力」と題して講演。その後、参加学生は10グループに分かれて「インターンシップで何を学ぶか?」を討論しあいました。また、最終日には「研修を通じて何を学んだか」を各社の研修生1名が代表して発表、最後に佐々木正喜会長から一人づつ、「終了証」が手渡されました。
中小企業の良さを再認識した感が
仕事を通じて「『企業づくりの基本は人』という社長の言葉に人の大切さを実感し、体験できた」「デパートとは違い地域密着型のお店はお客様と仲良しだ」「企業では一人ひとりに責任が求められるのと同時にチャンスも与えられている」等の感想も出されました。(以下、感想レポートから一部を紹介します)
インターンシップで私が学んだこと
大企業ではなく中小企業が作っているなんて
村上かおりさん・名城大学大学院
東海EC(株)にて(自動制御装置製造)
研修開始当初は、東海ECで作られている自動制御装置が何であるか、どこで使われているのかなど、知らないことばかりでした。しかし、研修を通して理解を深めるにつれて、自動倉庫や自動車の製造ラインを制御するのに不可欠な装置であることを知り、大変驚きました。そのような重要なものが、大企業ではなくて中小企業で作られているとは予想もしていなかったからです。何も知らなかった私にとって、2週間の研修は発見と驚きの毎日でした。研修では見積り作業や受注時の書類作成、部品の管理・発注・製作、経理課での書類の処理など一連の業務を体験し、以下のように感じました。まず、企業において非常に多くの同時並行で処理しなくてはならない注文を、品質・コスト・納期に関して確実にこなすことが必要であり、さらにその中で、生き残っていくことを考えて行動することも要求されているということです。次に、業務の一つ一つが細かくて、地道なものであり、かつ企業全体の流れで見たときに、不可欠で大切なものであると感じました。このような、大学での講義や本を通してでは具体的には知りえないことを、体験を通して知ることができました。また、勉強を通して得た経営に関する知識も、全ての企業に適応できるものなのではないことも知りました。企業の規模や業種によって性格も異なってくるため、社会では正しい唯一の答えではなく、何が一番良いことであるかを常に自分の頭で考えていかなくてはならず、そのために日々努力することが、何よりも重要なことだと思いました。

自動車関連産業の末広がり構造を実感
藤島香さん・金城学院大学
カネコ産業(株)にて(プラスチック部品製造)
カネコ産業は主に自動車関連のパーツの製造・加工をしており、作業はすべて「かんばん方式」によって進行していました。加工作業場でウレタンを貼る作業をしてみて、どうやったら短時間で上手く貼ることができるのかを試行錯誤しながら、自分なりに頑張ってみて、どの作業をするにしても無駄な動きをなくし、スムーズに行うことが大切であると思いました。得意先を訪問し、自動車関連の工場は末広がり構造をしており、強い信頼関係によって結びついているのであり、また普段何気なく乗っている車も完成品となるまでには、多くの工場と多くの人々が携わっているということをあらためて実感しました。この業界は設備と技術を基盤とする実力主義であり、経営者はしっかりとした経営方針を持つと同時に、従業員によりよい環境を提供する努力が必要であるということを学びました。また、異業種の会社を訪問する機会を与えていただき、うれしく思います。

抵抗から一番の興味へ楽しかった製造ラインの仕事
鈴木雅彦さん・日本福祉大学
豊栄工業(株)にて(包装機械設計製作)
私がお世話になった豊栄工業は包装機械の設計・製作をやっている会社で、おもに食料品の包装機械の部品加工や組み立てをやっている会社でした。私はインターンシップに行く前は、「どうせラインの一部となって、毎日同じ仕事をするのだなあ」と思い、正直言って「将来製造業に就くことはまずないし、朝も早いし(毎日始発)やめようかな」とも考える時もありました。しかし実際にインターンシップが始まると、製造業といっても営業部・技術部・管理部など、本当に多くの仕事、そして多くの人で成り立っているのが分かり、研修では、生産するだけではなく営業、管理などいろいろな仕事をじっくり体験させてもらいました。しかし今回、私が一番抵抗があった生産という仕事が、今回の研修の中で一番興味が湧き、最も楽しかった仕事であったのです。私がイメージしていた流れ作業の一部ではなく、まるでプラモデルでも作るように図面を見て、その場で作っていくのです。ただの鉄板やネジが、だんだん機械になっていく時は、とても驚きました。そして、その機械がものすごい速さで動き、商品を包装しているのを見た時の感動は、忘れることのできないものでした。最後に、私がインターンシップの中で一番印象に残っているのは、豊栄工業のある社員の人が言った「仕事を愛している」という言葉です。一人の女性すら愛すことのできない自分にとって、この言葉は本当にかっこいいなと思いました。将来就職し、自分が一人前になった時、絶対に「仕事を愛している」とまではいきませんが、「仕事が好きだ」ぐらいは言えるようになりたいと思います。

どうゆうき
▼今年もインターンシップが無事終りました。同友会として2回目ともなれば、かなり要領よく運営することができたのではないかと思います。わずか2週間ですが、企業側も、学生側もこの日程が現在のところ限度ではないかと思います。昨年以上に就職戦線はきびしく、それなりに学生も目的・目標をもって臨んでいたように感じられました。ただ、この制度も日本ではまだ緒についたばかりで、とても欧米とは比べものになりません。半年、一年とプロ意識をもって研修している欧米の学生達と世界のきびしいマーケットで戦ってゆくには、あまりにも心もとないような気がします▼ところで、やっと日本でも通産省や文部省内で日本経済に活力を呼び戻すため、子供たちに起業家精神を持ってもらおうと、小・中学校に取り入れる構想が急浮上しております。リスクに挑む鋭い経営感覚を身につけた人材を育成するには、少年教育から改革しなければという発想です。小学生向けにはゲーム感覚で経済の基礎を学び、中学生向けでは投資や企業経営の実務過程を新設したり。また高校・大学向けには、ベンチャー企業の経営者を教師として派遣したり、学生の企業内研修の制度も検討しているともいいます▼若いうちに経済の現実を肌で知る機会を与え、行政への依存体質や大企業志向をなくし、独立精神の豊富な人材を育てようというのが狙いです。日本の教育もやっと画一的な基礎教育だけではなく、自立的な個性教育をやらねばと、気が付始めたようです。そうした改革こそ本物の経済大国に蘇るのではないかと思います。
副会長 竹内郁雄