活動報告

第58回定時総会 基調講演(後編)4月23日

中同協50年の歴史と愛知同友会が果たした先駆的な役割

国吉 昌晴氏  中同協顧問(中同協50年史編纂委員)

4月23日に第58回定時総会が開催され、基調講演として中同協顧問の国吉昌晴氏に、時代を創造し牽引する同友会運動の歴史と理念について報告いただきました。前編に引き続き、報告概要をご紹介します。

3000名会員で第47回定時総会を迎える愛知同友会(2008年4月22日)

経営環境改善の活動を展開
~80年代、一気に3万名を突破

50年史編纂に携わった中同協顧問の国吉昌晴氏

1980年代初めは第2次オイルショックの影響もあり、日本の経済成長率は低下しました。後半はバブル経済を迎えます。そのような状況で同友会は、1980年に全国会員数1万名を達成し、1986年には3万名を達成しました。(1993年には4万名を突破)

その要因として、各同友会が地域ごとの特色を活かした多彩な活動を行ったこと、中同協三大行事(全国総会・青年経営者全国交流会・中小企業問題全国研究集会(以下、全研))と呼ばれる全国行事が盛んになり、全国交流が深まったことが挙げられます。

そして、各専門委員会や連絡会も確立されたことで、様々な分野での運動展開がなされ、同友会らしい「学び合う」活動が定着しました。

また、1980年代には日本の財政再建が問題となり、税制改革が政策課題となりました。同友会は創立以来、税制の改革に取り組んできましたので、大型間接税の導入に対して他団体とも協力し、会をあげての反対運動を行いました。

しかし、売上税は廃止されましたが、消費税と名前を変えて、1989年に導入が決定されてしまいました。この大型間接税反対運動は戦後最大の中小企業運動であり、他団体と連携し、自主的な連絡組織まで誕生させたことは、中小企業の運動史上、画期的なことでした。

同友会理念の明確化と「21世紀型企業づくり」

1990年の第22回全国総会(香川開催)では、同友会理念が採択されました。同友会理念とは、「同友会の3つの目的」「自主・民主・連帯の精神」「国民や地域と共に歩む中小企業」、以上の3つをあわせたものです。

同友会組織が広がるにつれて、中小企業と地域の関わりが深まり、地域に責任を持つ同友会運動が注目されました。その原点に立ち返り、運動の方向性を再確認したことには大きな意義があります。

1993年の第25回全国総会(北海道開催)では、「21世紀型企業づくり」が宣言されます。

(1)自社の存在意義を改めて問い直すとともに、社会的使命感に燃えて事業活動を行い、国民と地域社会からの信頼や期待に高い水準で応えられる企業。

(2)社員の創意や自主性が十分に発揮できる社風と理念が確立され、労使が共に育ち合い、高まりあいの意欲に燃え、活力に満ちた豊かな人間集団としての企業。

つまり、自社が地域や業界から「なくてはならない」と思われるような企業となり、社員が誇りを持って働ける企業を目指すという、新しい時代が求める企業像です。

1990年代は、長期不況によって大企業の企業としてのあり方が問われる中で、中小企業が改めて注目され、中小企業として果たすべき役割が大きくなったと自覚した時代だといえます。

多様な活動を展開 ~転換期の1990年代

同友会を「学べる会」にしようということで、1990年代には活動の原点への立ち返りが行われました。

まず挙げられるのは「例会の充実」です。月例会は会員の経営体験を報告し、グループ討論で互いの経営課題を出し合い、学び合える場です。愛知ではワンゲスト運動と併せて着実な会員増強へつなげていきました。

次に「経営指針づくり活動の集約と普及」です。労使見解をベースとし、特定の流派ではなく、同友会の目指す企業づくりにふさわしい学び方・つくり方・実践の仕方を定時総会や全研で学び合うことが確認されました。

最後に「共同求人活動と社員教育活動」の中身を深めることです。共同求人では、単なる採用活動ではなく、地域からあてにされる企業づくりに取り組むこと、学校とも協力してインターンシップなどの地域に人を残す活動に取り組みました。

また、求人活動に取り組む中で、社内体制の整備だけでなく、社員教育への取り組みにも注力するようになりました。この社員教育では、「新しい時代にふさわしい労使の信頼関係をつくることが、社員教育の基本」の精神が生かされています。

1990年代に同友会理念の再確認と、活動の見直しが行われたことで、同友会の歴史と理念形成について学ぶ機運が広がったのです。

金融アセスメント法制定めざして街頭署名を行う愛知同友会(2001年10月27日)

「怒りを智恵に」 ~金融アセスメント法制定運動

21世紀に入りグローバル化が進展したことで、産業構造の大転換が起こりました。特に1990年代から21世紀にかけて、バブル崩壊に伴う不良債権処理問題をめぐって金融機関の再編が相次ぎ、中小企業に対する「貸し渋り」「貸し剥がし」が大きな社会問題となったのです。

同友会は地域と中小企業への円滑な資金供給を可能にし、それに努力する金融機関との共存・共栄を目指す「金融アセスメント法」の実現に向けた大運動を展開しました。

愛知同友会では全国に先駆けて、1997・98年と金融機関の実態を解明するためにアンケート調査を実施しました。その結果から、(1)金融機関が持つ公共性の徹底、(2)著しく不利な金融機関との取引慣行の改善、(3)利用者参加型金融行政への転換などを問題点としてまとめました。

そして、愛知同友会の調査結果や政策提言を受けて、全国の同友会で金融アセスメント法制定運動が2000年より始まり、署名数が全国103万(愛知13万)、また意見書採択が千議会を超えるまでになり、国会でも取り上げられるようになります。

残念ながら金融アセスメント法の制定には至っていませんが、リレーションシップバンキングや「金融仲介機能のベンチマーク」、第三者保証の原則禁止や「経営者保証に関するガイドライン」などが政策として政府より打ち出されるなど、その後の金融行政に指針的影響を与えるようになっています。

この運動を通じて私たちが学んだことは、金融機関との信頼関係を強める上で経営指針づくりが不可欠であること、中小企業家の声を高めることで国の政策を変えることは可能であることです。そして、金融アセスメント法制定運動を進めることは、国民生活を守る運動であるとの確信が深まり、中小企業憲章制定運動へと発展する要因となりました。

「中小企業は社会の主役」 ~中小企業憲章と条例

ヨーロッパでは、21世紀の地域発展と雇用の担い手は中小企業にあるとの認識に立ち、「EU小企業憲章」が2000年に制定されました。さっそく愛知同友会とその外郭団体の愛知県中小企業研究財団では2002年9月に「欧州中小企業政策視察」を行い、日本においても中小企業を国民経済発展の中核に位置付ける中小企業憲章の制定が必要との認識を得ました。

それを受け、2003年の第35回定時総会(福岡開催)において分科会が設けられ、中小企業憲章・中小企業振興基本条例制定運動が始まりました。

中同協では全国の会員経営者の声を集めた「中小企業憲章草案」を策定して独自に取り組むなどし、その内容が多数反映され、2010年の6月に閣議決定がされました。

「3つの目的」の総合実践であるこの運動は、同友会の社会的使命感を高め、会組織を拡大するエネルギーともなったのです。

憲章の制定運動とともに条例制定運動が全国で展開され、46都道府県、407市区町村(2019年1月時点)で制定されました。愛知県では2012年に愛知県中小企業振興基本条例が制定され、各市町においても取り組みが進められています。

愛知同友会では2002年9月にEU視察団を派遣、欧州小企業憲章を学ぶ~中小企業憲章制定運動のきっかけとなる

私たちの使命とは ~愛知同友会への期待

愛知同友会は同友会運動において、先駆的な役割を果たしてきました。第1に挙げられるのは、企業づくりです。1976年の経営指針作成の提起をはじめ、あらゆる環境変化に負けない強靭な体質の企業づくりの事例が提示されています。

次に地域づくりです。金融アセスメント法制定運動の提起と署名活動の先陣を切り、13万名を超える署名を集めました。問題の調査や充分な学習を行った上で運動を推進したことに特徴があります。

最後に同友会づくりです。組織づくりの着実な前進・小グループ活動の典型を構築し、全国の模範となっています。また、会員増強においては青年同友会の活動が活性化しており、増強活動の原動力です。

そして、中同協「e.doyu」(組織活動支援システム)の先駆けである「あいどる」の開発と活用・展開で、ITを駆使する経営者団体ともなっていることです。

愛知同友会は21世紀に入りずっと増勢を続け、現在4200名を超え、全国で2番目に多い会勢となっています。同友会理念を語るだけでなく、実践することで、私たち自身の「生き様」としなければなりません。同友会運動の輪を広げ、アジア・世界へと同友会運動を展開していきましょう。

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21世紀に入り、2000名から4000名に18年間連続して会勢を伸ばす(愛知同友会)

【文責:事務局 佐藤】