活動報告

中小企業憲章・条例推進本部
中小企業家の視点でつくる“総合的”政策提言

愛知同友会の政策提言活動は、「99ビジョン」において「地域社会と共に歩む中小企業」を掲げたことをきっかけに、2001年よりその取り組みがスタートしました。以後20年近く継続して取り組まれ、現在では県下でも唯一の、中小企業と地域を巡る諸問題を総合的に扱ったものとなっています。

今年度の政策提言は、比較的短期的かつ、中小企業経営が直面している具体的課題を扱った「重点要望項目」と、同友会運動全体における中長期的課題を扱った「重点提言項目」から成り、全体で281項目(昨年度対比27項目増)で構成されています。

今年度の特徴

今年度の政策提言では、「中小企業の採用・人材育成、若者雇用の問題」を昨年度に引き続き取り扱いを大きくするとともに、「中小企業の事業承継支援の強化」を独立した中項目の1つとして新設。その他、エネルギーシフトに基づく、「持続可能な経済社会システムの構築」について、新規項目を複数盛り込んでいることや、「公正な市場ルールの確立」と「ビジネスと人権に関する国連指導原則」、「持続可能な開発目標(SDGs)」とを関連付けて推進することなど、国際的政策動向と中小企業を取り巻く経営環境改善の課題を結び付けた政策提起を行っている点が特徴です。

課題と対応策の提起

中小企業の深刻な採用難については、正しい中小企業観の醸成に改めて言及しつつ、インターンシップと就職を直結させる動きに対する同友会運動としての考え方を提起。また、近年社会問題となっている学生の奨学金負担についての提案、若年無業者、就職活動の早期化が懸念されるなかで、学生の学ぶ機会をいかに保障するか等の課題を取り扱っています。

持続可能な社会システムの構築に関しては、地域のエネルギー問題のみならず、プラスチック等の資源循環の高効率化の仕組みづくりや基本戦略の立案を提起しています。

その他「公正な市場ルール」に関しては、不当廉売取り締まりの厳格化などの身近な課題から、人権とビジネスあるいは、経済連携協定に関して、今後の国際的ルールメイキングのあり方についてまで、幅広く提起するとともに、この問題を、中小企業の職場環境や、労働環境の改善につながるものに位置付け、誰もが豊かに暮らし、働き続けることのできる社会づくりを提起しています。

1年間の主な政策実現事項(全国的課題も含む)

  • あいちサービス大賞の創設
  • 審査請求料、特許料の軽減
  • 愛知県における中小企業部の設置
  • 外国人留学生の就職可能業種の限定撤廃
  • 就職氷河期世代支援プログラムの策定・実施
  • ビジネスと人権に関する国連指導原則に基づく政府行動計画策定への中小企業の参画
  • あいち子育て女性再就職サポートセンター「ママたちの井戸端会議」対応枠の拡充

●「2020年度愛知県への政策提言」の本文
2020年度 愛知県の中小企業政策に関する中小企業家からの要望と提言(PDFファイル)

寄稿 政策提言を取りまとめて

浅井 勇詞
 中小企業憲章・条例推進本部長
 アサイウッドマテリア(株)代表取締役

浅井 勇詞氏

私たちを取り巻く経営の問題は、仕事量の増減に始まり、雇用、社会保障、教育、金融、税制など多岐にわたり、その内容も情勢により刻々と変化しています。業種・業態・業容の違いによる異なりも大きいため、適切な中小企業施策を行政だけで実施していくことは容易ではありません。そのため、より実効性のある施策を実現するには、私たち中小企業経営者自身が課題を語り、行政に届ける必要があります。その方法の1つが政策提言です。

政策提言の作成で何よりも欠かせないものが、会員の生の声です。毎年、5月末景況調査では全会員を対象に特別調査を実施し、今年は608名の方から回答をいただきました。また、会内の各組織で議論されている最新の経営課題なども提言内容に盛り込んでいます。これからも、愛知同友会の政策提言は、会員の総意による提言というスタンスにこだわって進めていきたいと考えています。

ついに今年、愛知県も人口減に転じました。将来が見通し難い時代だからこそ、中小企業の力を、将来の豊かな地域づくりに結び付けることが重要です。そのためにも中小企業施策の充実、実効性の向上が必要です。私たちの政策提言も、更に高度化が求められます。アンケートへの回答や委員会からの提言など、さらに活発な政策活動への関わりをお願いします。