第7分科会・第30回中小企業問題全国研究集会(京都)2月17・18日
限られた市場に人的能力開発で挑戦

森部克明氏豊栄工業(株)・社長
〈企業プロフィール〉
・創業1968年・社員数70名・資本金3000万円・年商13億6000万円・事業内容 自動包装機械、自動省力化機械、各種専用機械の製作
「第二創業」で自社の再構築を
当社は1969年に親会社の組立工場として父が創業した会社です。創立20周年の1990年、私が会社を受け継いだ時点で「第二創業」を宣言し、第1次3カ年計画をたてました。経営指針の見直しと社員への明示組識の明確化やQC活動、五Sの勉強会などを行い、「社員のベクトルあわせ」を行ないました。この後の第2次3カ年計画では「県のモデル工場認定」を目標に掲げ、技能検定の勉強会を行い、ここで職務資格制度を導入しました。そして九四年に一般産業機械の部で県のモデル工場の認定を受けることができました。第3次の3カ年計画では、製造業として何としてもISO9002、そしてISO14001の取得に挑戦するという目標を立て、95年8月に9002、1998年10に14001の認証を受けることができました。

ISO9000で業務改善
社内資格を整備して
当社は技能士取得に力を入れており、生産現場に携わるものは必ず技能の資格を持つようにしています。現在、機械加工と組立仕上で2級が16名、機械の組立仕上で1級が2名、計18名います。また、社員のスキル管理をしており、例えば機械の組立作業では「複合」「要素」「基礎」の各段階で、それぞれに求められる作業が明示されています。そして複合作業の中の調整作業ができ、なおかつ技能士1級の資格を併せもっている者を「認定検査員」と呼んでいます。この認定検査員が、出荷前に必ず機械のチェックをしています。こうした技能資格とスキル管理を組み合わせて、認定検査員という「独自の社内資格」を整備しています。ISOでは自分達で自分達を監査することが義務づけられており、こうした内部監査のシステムを構築しています。さらに「気付いた問題提案シート」をつくり、全員がメモ用紙を持って何でも気づいたことは書き、その中で社内クレームになるものは「異常発生処理」という形で取上げています。さらに各セクションのリーダーが集まって改善のための「品質会議」も行っています。
1人1人の仕事を明確にしながら
ISOでは業務分掌をつくらなければなりません。例えば当社の生産部の業務分掌は、方針と計画、業務の標準化等の様々な項目がありますが、業務内容と責任と権限を明らかにし、職能資格制度を取り入れています。職務資格制度の中では例えば上級職ですと、(1)上司の方針に基づき業務計画を達成する、(2)かつ下級者を指導する、(3)日程計画や改善提案努力、(4)ISOに関する知識、(5)技能士は1級程度を要する、といったように、職務資格要件を決めています。さらに毎年の経営計画作成では「今年はこんなことをやろう」という個人目標も立てさせています。こうしたISOに基づく業務分掌と職務用件、そして目標管理の3つが一体になることが、大事だと思います。しかし、現場の社員を見ると、やはり資格要件とのギャップがあります。「自分の仕事がどういうことなのか」「何をやったらいいのか」「どういう能力が必要なのか」ということがわからないのです。そこで、「一般職・総合職」「監督・指導・専門職」「管理職」「全体」に職階をわけ、具体的な教育訓練の方針と計画を出しています。
行政や大学,施策など外部の力も借りながら
外部の力も借りて
当社では地元大学の先生に来ていただいて、品質管理の勉強をしたり、また工場管理あるいは工程管理もコンサルタントを入れて勉強しています。また、「工場管理者研修」という品質管理のための各種技法や「品質保証管理」といった外部研修へ社員派遣を行っています。その他、コンピュータ・パソコンの勉強もコンサルタントに来ていただき、勉強しました。現在、人材育成のために6名ほどのコンサルタントを頼み、様々な勉強をしていますが、当社ほどの社員数では人事部がないので、こうした社員育成に専任者がありません。私どもの力だけではできないことは、行政や大学などの外部の力も借りながら行っています。
企業支援施策を積極的に利用して
コンサルティングや研修には当然費用がかかりますが、これらは国の補助金を活用しています。例えば「中小企業人材高度化能力開発給付金」というのがあり、いまこれで500万円申請し、頂けることになっています。中小企業基本法が改正され、中小企業に対して色々な面で変化が来ています。しかし、一方では色々な施策が出来ていきます。そうした情報をチェックしながらうまく使っていくということも、これからは大事ではないかと思います。当社の規模では年間何千万という教育費は非常に痛いことですが、国の補助金などを有効に利用することで実現できています。
信頼し,信頼される企業をめざして
21世紀型エンジニア企業を構築する
第1次・2次・3次の3カ年計画を経て、現在は「豊栄工業の将来ビジョン」を作成し、実現に取り組んでいます。ここではまず「21世紀型のエンジニア企業の構築」という目標を立てました。これは早い話が、自分たちでも商品開発をできる会社にしていきたいということです。2番目に「グローバルスタンダードに基づく社会的に存在意義のある企業」です。やはり中小企業といえども国際化ということを視野に入れなければいけません。ISOもそうした面でも取りました。これからの経営資源は、従来の「人・もの・金」に「時間」と「情報」と「環境」を加えていかなければいけないと思っています。今のIT(情報技術)というのは非常に発達していますが、そうした意味でもグローバルスタンダードへの対応を考えています。
新卒社員が自社商品を開発
今まで技能の勉強とか、管理者教育とかはやってきましたが、やはり当社はものづくりですので、自社商品を持ちたいのです。現在、プロジェクトを組んで、商品開発に取り組んでいます。成果として、水を電気分解し、水素と酸素の混合ガスをつくり、従来のプロパン等のかわりに燃料にして鉄板を切ったり、溶接をしたりする機械をつくりました。燃料のもとが水ですので、CO2も出ませんし、ランニングコストも非常に安くなります。おかげで非常に引き合いが来ており、現在までに7台ほど売れました。このプロジェクトのうち6名は、同友会の共同求人で去年4月に入社した社員です。
自分たちでつくり、自分たちで販売する
この6名の工学部出身の若手の技術者と管理者、営業マン、そして技術士のプロジェクトは、毎月2回、名古屋の技術インキュベータ施設を利用して、「年に1つは何とか商品開発しよう、開発だけでなくマーケティングまでやろう」とがんばっています。現在は10名ほどで1つのチームですが、将来的にはいくつかのチームがコンテストを開いてお互いに競い合う中で、さらに技術の勉強が進むことを期待しています。「自分たちで商品をつくり、自分たちで販売していく」ことを通じて、社員のやりがいがさらに発揮できればと考えています。
【文責事務局・多田】
第17分科会シンポジウム
「地域金融機関との新しい関係づくり〜地域経済の再生と金融機関・中小企業の役割」
山田政策委員長(愛知)がパネリストとして登場

今回の第30回全研では、同じく愛知同友会から山田正平政策委員長((株)飛球商会・社長)が、第17分科会でパネリストの1人として登場しています。この分科会は、地域経済再生のために果たす地域金融機関と中小企業の役割を確認し、持続可能な地域づくりのために金融機関と中小企業のより良い関係のあり方を検討したものです。もう1人のパネリストとして(株)京都総合経済研究所・所長の服部敬道氏、コーディネ−ターとして協同金融研究会・事務局長の平石裕一氏が務めています。