第32回中同協総会(7月13・14日−兵庫)
第1分科会
同友会理念の形成とその今日的意義を学ぶ〜企業経営と同友会づくりにどう生かされているか〜
鋤柄修氏愛知同友会・代表理事((株)エステム・社長)
第一分科会は中同協三十年の歴史の中での(一)理念(二)活動(三)組織という三つの点での到達点を踏まえ、「中同協三十年の歴史を力に新世紀を切りひらく」分科会として設けられました。パネリストに愛知同友会代表理事の鋤柄修氏((株)エステム社長)と岡山同友会代表理事の土井章弘氏((財)操風会・岡山旭東病院院長)そして中同協会長の赤石義博氏((株)森山塗工会長)が、コーディネータとして三重同友会代表理事の宮崎由至氏((株)宮崎本店社長)が務めました。これまでの愛知同友会の活動の到達を考える意味で、鋤柄代表理事の発言部分のみを掲載させていただきます。他のパネリストやコーディネータからも今後の同友会運動において非常に示唆に富む発言がなされています。十月中旬に出版される「中同協誌No.六五」(第三十二回総会特集号・定価千五百円)を購入し、一読されることをお勧めします。(編集部)
●企業づくりと経営者としての成長
「志願兵」として入会
私の会社は今から三十年前、一九七〇年の創業です。十年経ったときに特別な利益が出て、その利益の分配を発端として労働組合ができるという事件が起きました。経営者としては大変なショックでしたが、冷静になって考えてみると、経営者の勉強を何にもやっていないことに気づきました。同友会に入って、後から分かりましたが、「経営責任って何だ」と問われたときに理論的に説明ができないんですね。もちろん、経営指針も経営計画もありません。ですから、その事件によって目が覚めたといえます。そうしたとき、たまたま地元紙である中日新聞の片隅に「愛知同友会は経営指針づくりをやっている。これからは中小企業といえども指針づくりをやりなさい」という小さな記事がありました。私は藁をもすがる気持ちで同友会にすぐに電話をし、即入会となりました。まさに志願兵です。同友会が最後の頼みの綱という気持ちで飛び込みました。
指針・求人・共育すなおに実践して
そして先輩方から言われたことを、そのとおりにやってきました。その一つは経営指針づくりです。これは自ら必要だと思い入会したわけですから、まずこれに取り組みました。それから人材育成です。愛知で中小企業問題全国研究集会を開催したとき、ある先輩から「鋤柄君、同友会の『共に育つ』ということを会社でやらなければ駄目だ。会社の会議はテーブルでバズセッションをして、一人ずつ代表にまとめさせて、話し合える雰囲気を会社でつくりなさい」と言われ、私はこれを真に受けて、会社ですぐにやり始めました。これが「共に育つ」という社員教育の一つのやり方を学ぶきっかけです。もうひとつは、ある先輩に「どんなに苦しくても毎年一人ずつ社員を定期採用しなさい」と言われたこと、これが共同求人です。毎年定期採用をし、共に育つ人材育成をし、そしてもちろんその前には経営指針があるのですが、これを愛知では三位一体活動といいます。この三つが確立されれば必ず会社は良くなるからと先輩に言われ、私は自社で実践してきました。これが入会の動機と、同友会で学んだことを自社にどうやって取り入れたかという三点です。

●理念を会づくりにどう生かしているか
六年前にスタート愛知の活動改善
今、宮崎さんより「同友会理念を大きな組織でどうやって組織運営に生かしているのか」という質問をいただきました。愛知では約六年前から活動改善をスタートさせました。同友会の目的と組織のあり方を明確にし、役割をきちんとしようということから取り組みました。他同友会に比べて、愛知同友会が劇的に行なったことは、まず理事の定数削減です。ピーク時には百名を超える理事がいましたが、まずこれを半分にしました。というのは、愛知は今二千二百名を少し越える会員数ですから、企業でいいますと大会社なんですね。ところが、理事の名前をもらったけど、理事のように発言もできないし、行動もできない、ましてや同友会の理念を自社で本当に実践しているかといえば、疑わしい人もいたのです。これでは駄目だということで、理事に理事としての自覚を持っていただくために数を減らし、最終的には常任理事会と理事会の二本建を統合し、理事会一本にしました。現在の理事の数は三十五名で、理事会の出席率は約九〇%となっています。人数も少なくなったので、理事会で発言する機会も増えましたし、いろんな議論もできるようになりました。理事がまず模範になろう、同友会のいろんな理念を自社で実践してお手本になろうということで始めたものです。
新たな実験事務局の活動改善
それから事務局の活動改善です。これは今、スタートしたばかりです。やはり事務局は同友会運動のパートナーですので、パートナーらしい事務局員になってもらいたいし、それには一度事務局の活動を整理しようということで、機能別に整理しました。日常活動を支援する機能と自立型企業づくりを支援する機能、そして将来の愛知同友会をどうするかという企画をする機能という三つに分け、事務局の人たちを三つの機能別に配置しました。まだまだ思ったように動いていませんが、こんな実験をやっています。
●新世紀に向けた企業づくり、同友会づくりの課題は
「自立」と「地域」新世紀のキーワード
愛知も三千名を目標として十年くらい経ちますが、なかなか実現をしていません。しかし言いだした以上は、できるまでやろうといってがんばっています。愛知では「九十九同友会ビジョン」を昨年四月つくりました。二十一世紀型企業づくりをもう少し進めて、「自社をまず自立型企業にしよう」というビジョンをつくりました。もう一つは「地域社会と共に歩む」同友会。やはり地域問題からかけ離れて、自分の会社のことだけ考えたら駄目だと反省しました。「三つの目的」の一番目、二番目の目的は自分のことですから考えやすいのです。しかし企業というのは、その地域に根ざして活動する。もしくはその地域から存在を認められる企業にならないといけないと思います。
●(Q)同友会理念を自社に浸透させるには?(質疑応答より)
自社と同友会同じ言葉を使う私は、同友会で言ったことを会社でやらなければ駄目だと、常に言い続けています。私の会社は今、社員数が二百五十名から二百八十名を行ったり来たりしていますが、ちょうど同友会で掲げた人数の十分の一です。だから自社が三百名の会社になるにはどうしたらいいか、そして地域で認められるにはどうしたらいいか。自立した会社になるにはどうしたらいいのか…。同友会と会社と、まったく同じ言葉をあえて使っているんです。そうしますと、車の両輪になってくるんですね。すると、同友会の会合に行って会社に戻ってきても、同じ言葉を使いますから誠に都合がいいですね。同友会で掲げたビジョンに沿って、わが社もそのビジョンの実現をめざす。そうやって、同友会の役員として、皆さんと一緒に同友会の運動を進めていきたいと思っています。同友会で使う言葉と会社で使う言葉とを共通語にする、これは社長だからできるんですね。愛知では今「自立型企業をめざそう」というのを旗印に掲げていますので、当然、わが社の基本方針は「自立型企業になろう」です。では自立型とは何か、例えば自立型企業は自立型社員がつくるというように置き換えています。では自立型社員、自立した経営者とは何かということを、同友会と会社で考えてみます。理事の皆さんには、自立した理事は同友会の理事会に来れば100%同友会のことを考えてください、愛知全体のことを考えて発言してくださいと言っています。そして会社では役員や社員に対して、自立した役員、自立した社員の発言はどうだと、こう落とし込んでいきます。そうすると経営指針や会社の規範、最終的には理念について、深く考え、理解するようになります。
●今すぐに実践(感想として)
宮崎さんが言われた「知っていることと実践することは、天と地ほどの差がある」という言葉、私も好きな言葉です。この分科会を通じて、皆さんにはいろんな気づきや学習の効果があったと思います。これを各地同友会で、また各社で実践されることが重要です。今日、感心して帰っても、明日になればすっかり忘れてしまいますので、ぜひ「これだけは実践するぞ」と二重丸を付けてお帰りください。私自身も赤石会長から二十一世紀の宿題をいただいたような気がしていますので、心して帰りたいなと思います。