第10回障害者問題全国交流会−大分(10月26・27日)
創ろう、企業と障害者の共生社会
第10回障害者問題全国交流会(主催・中小企業家同友会全国協議会)が、10月26・27日大分市で開かれました。メインテーマは「創(つく)ろう、企業と障害者の共生社会」で、1日目は5つの分科会、2日目は記念講演が行なわれ、全国23同友会250名が参加、愛知同友会からは7名が参加しました。
●第3分科会「中途障害者雇用」〜人の存在感を認めあう企業づくり
江尻富吉氏信濃工業(株)
障害者と向き合い、共生という言葉を真に実行し、社会貢献と同時に自社の発展に真剣に取り組んでいる全国の会員にお会いし、感動と、自分へのムチを入れる良い機会を頂きました。報告者の平松敏啓氏(京都熱学(株)社長)は会社規模や創業時期、年齢など、まったく私と一致するところが多いことに親しみを感じながら、お話を聞くことができました。会社の中では、「社員を心から怒る。好きになる」を徹底している、また会社全体で心のバリアをなくすよう務めているなど、人への思いやりと社員に対する感情は、私よりはるかに上でした。会社が大きく変わったのは、社員が社内で大怪我をし、障害を持つ身になってしまったことです。この時、給料保証、ボーナス、昇給を変えず、一般社員と同じにし、仕事はその人のできるようにと一部門をつくってしまったのです。社内環境の中では、エレベーター・手すりの設置を行ったところ、彼にとって快適な職場が他の社員にとっても快適であり、能率アップに繋がります。社員一丸の協力体制ができ、新しく一人の障害者を雇用するようになります。最後に平松氏は、「企業や人生はイメージであり、社長は絶えずイメージトレーニングをする必要がある。人は、苦の大きさで感動が大きくなるので、苦を感動を得るための通過点と思うと、非常に楽しくなる」と締めくくられました。
●第4分科会「太陽の家」見学会〜保護より機会を〜
田中誠(有)進工舎
別府・大分国際マラソン(障害者のマラソンとして国際的に定着している)のコースを快走し(バスで)、左に別府温泉の湯けむりをやりすごし、少しまどろみかけた頃、「太陽の家」についた。「保護より機会を」。創立者、中村祐氏の基本理念だ。障害者を保護するのではなく、働く機会をつくり出すことが大切であり、働く事のできるチャンスは障害者にとっては人生のチャンスであるという。福祉の場での様々な訓練も必要だが、実際の企業での生きた実習が、障害者本人にとって大切なのはいうまでもない。なんとか理解してくれる社長はいないかと体当たりでこぎつけたのがオムロン太陽(株)の設立であり、一般企業と福祉施設の融合だ。これが太陽の家の始まりで、共同出資のメンバーはその後、ホンダ・三菱商事・富士通・ソニーと続き、ISO認定取得など、まさに先端を突っ走る企業イメージそのものだ。今まで見学してきた福祉施設とは、どこか違う。洗練された職場、車椅子を除けば誰が健常者で、誰が障害者なのかまるでわからない。そんなことはどうでも良く思えてくる。外に出れば車椅子の人々が行きかい、スーパーも銀行もスポーツ施設も、ハンディを持った人達のために、それぞれ工夫されている。それらの施設で働く人達の何割かは障害者なのだ。もちろん、地域の人達もそれらの施設を利用する。まさに、共生の言葉にふさわしい桃源郷に見えてきた。見学後のグループ討議でより鮮明に見えてきたことがある。それは、働くこと(人生)のチャンスをつくる。その決断をするのは、経営者自身なのだということ。私たちにかかっているということだ。グループ発表で、私はそうまとめてみた。しかし、35年前、中村祐氏はこうも言っていた。「太陽の家のような施設がなくなることが望ましい」と。