私たちの力で変化を起こそう
「金融アセスメント法」制定に向け福岡の署名実践を学ぶ
21回の学習会にのべ600名が参加
愛知同友会では2月の理事会で「金融アセスメント法」制定の推進母胎として「金融アセスメント推進プロジェクト」が発足し、会内での学習会の講師派遣や「金融アセスメント法とは」のパンフレットが作成されました。最近では「報道関係者との懇談会」(5月30日)や参議院選挙を控え7政党への金融問題等での公開質問状などを行ってきました。現在までに地区会などで学習会が21回開催され、のべ約600名の会員が参加、124名の「金融アセスメント推進協力員」が生まれています。6月1日の中同協第4回幹事会での全国請願署名の推進を受け、6月21日の第2回理事会では愛知同友会として署名活動を行うことを決議、さらに7月18日の第3回理事会では署名目標を10万、期間を今年末とすることを確認しました。
動中工夫は静中工夫の百・千倍
これらを受け、「金融アセスメント法」制定の経営者署名を行った福岡同友会より中村代表理事を招いての講演会を6月26日に開催しました。福岡同友会がなぜこの運動に立ち上がってきたのか、また会内での変化、さらに経営者署名を進める中で、どのように会員自身が変わってきたかを具体的に語っていただきました。中村代表理事は、運動の発端となった99年の県役員研修会から話をはじめ、この運動は「私達自身の変化を起こす」ことであり、「中小企業家の人間の尊厳性・誇りの復活」でもあることを強調しました。さらに、福岡同友会の「1万名署名」達成のドラマや今後の取り組みを語り、最後に、「動中工夫は静中工夫の百・千倍であり、動きながら工夫し、『金融アセスメント法』実現の運動に共に取りくみましょう」と締めくくりました。愛知同友会では6月末に全国署名用紙とQ&A、なぜ同友会が金融アセスメントに取り組むか等のチラシが全会員に発送されました。また金融アセスメントについて独自のホームページの立ち上げや一層の学習会の開催等、全国の中小企業家と手を携えて、今、制定運動に取り組んでいます。
「金融アセスメント法」制定をめざし(6月26日)
経営者1万名より署名を集めて
中村高明氏(株)紀之国屋・社長(福岡同友会・代表理事)
●中小企業家の人間としての尊厳性・誇りを回復しよう
私たちの力で変化を起こそう
福岡では99年3月に県の役員研修会で、立教大学の山口義行助教授(当時)から、金融アセスメント法案の話を聞きました。その時に、中小企業家であるわれわれのために物的担保と連帯保証の問題を解消したいという想いを持ち、一人で駆けずりまわっていることを初めて知りました。役員会の中で、「学者が一人で動いているのに、中小企業家であるわれわれが傍観していていいのか」との論議になりました。『変化に気がついた時にはもうそれは遅い』と言われます。しかし、変化を100%推測することはできません。『変化は自らで作り出せばよい』という松下幸之助氏の言葉があります。われわれも変化を中小企業家自身の手でつくり出していこうという想いからスタートしました。「やっても一緒。自分の企業さえ大事にしとけばいい」と諦めるのではなく、金融アセスメント法制定の運動は、「中小企業家の人間としての尊厳性・誇りの復活」として位置づけています。
地域金融システムを守る運動
金融アセスメント法案の考え方は、地域金融システムを守る運動としてアメリカのCRA(地域再投資法)を参考にしています。今、日本の金融機関は4大グループに統合されてきました。かつてアメリカも大きな銀行に統合されていき、中小企業に対する金融が逼迫化した時期があったそうです。4大銀行だけになれば、東京にお金が集中し、われわれの方にはお金は来ないし、これでは困ります。だから地方銀行を守らなければならない。信用金庫・信用組合を守らなければいけないわけです。今のうちにわれわれの手で解決すべきことはしないと、息子や若い社員など、次の世代の生活を守ることは絶対にできないと思います。
学習会を重ねる中で
福岡同友会では、「金融アセスメント法推進委員会」を2年前の8月に設置し、会員の方々に理解していただくために、アセスメント委員が各地区にまわり、「移動アセスメント委員会」を開いていきました。その中でペイオフ解禁問題と金融検査マニュアルの問題、そして金融アセスメント法案を勉強しました。ペイオフに関して中同協を通じて「定期預金と借入金の相殺を」と主張しました。その結果、住友銀行が初めて「相殺をします」と発表、他行も同調するようになりました。また、金融検査マニュアルには、「自己資本比率8%」があります。国際的に取引すると銀行は8%、しかし国内だけであれば4%でいいわけです。8%は外国から言われてそうせざるを得なくなったと言われています。8%という数字には問題があり、2期連続赤字を出せば要注意、資本を食い潰した場合は破綻懸念先。だから銀行は15%貸し倒れを、要注意先の場合は15%、末端の破綻懸念先は75%の引当金を積み上げていきます。そうすると8%の自己資本比率が達成できなくなるので、それで分母である数値を小さくするために貸出を圧縮するわけです。だから「貸し渋り」「貸し剥がし」が起こってくるわけです。
●アセスと経営指針は車の両輪
一方では経営指針確立の運動を
勉強を進めていく中で、国を動かすためには何が必要かと考えて、「署名運動しかない」という声が会員から出てきたのです。ところが署名運動を知って銀行がどう反応するのか、署名活動をしたら、銀行は「あの社長はヤバいから融資はお断わり」とならないかと心配する人も出てきました。それならまず銀行と懇談をしようと、福岡の地方銀行と個別の懇談会をやりました。ある信用金庫は、金融検査マニュアルについて、「われわれは中小企業の方に融資しているのに、あの基準で言われたら貸出先がなくて、どうやって信用金庫が生きていったらいいかわからない。だけど監督官庁である金融庁に言えない」と言いました。ある銀行の頭取は、「バランスシートと損益計算書を見てもわからないというような経営者に、連帯保証も物的担保も取らずに金は貸せませんよ」とも言いました。そこにいたアセスメント委員全員が、「経営指針書を成文化していて、バランスシートも損益計算書も質問に対して全部説明できますよ」と迫ると、「そこまできっちりやるなら、貸します」との回答が返ってきました。つまりこの運動は、一面ではわれわれにお金を融資してくれということであり、他方では、今度は借りる側の経営が経営指針書を成文化して、バランスシートや損益計算書を読んで的確に答えられるかどうか、勉強しているかどうかという運動なのです。
山が動き始める
そうした経過を経て、いよいよ昨年の11月に署名活動に突入しました。目標は単純に1万名と決めましたが、1社1名の経営者の署名ですから、なかなか大変です。4月20日の段階であとわずかになり、1カ月だけ延ばして5月20日1万名署名を達成しました。今、1万500名まで来ています。アセスメント法案を説明するために、特に役員の方から勉強が始まり、どの支部でも勉強会が開かれるようになりました。そこで「金融アセスメント法案を実現しよう」という共通の御旗が芽生えていったわけです。ある会員は、クリーニング屋さんに資材を入れていますからクリーニング屋さんをまわって、自社の売り込みと同時に署名をもらいました。特に物的担保と連帯保証の是正については、ほとんどの経営者の共感を呼び、署名がどんどん集まってきました。
全国の企業家と手を携えて
国会では現在、地域金融の円滑化に関する法律案が上程される運びになっています。現実には、廃案になるでしょう。内容を読むと、われわれとしては不満もあります。しかし、山は動き始めました。中小企業家は今まで黙っていて何も主張しない。このままでは「中小企業家は羊だから、勝手に利用すればいい」と見られるのではないでしょうか。昔から「動中工夫は静中工夫の百・千倍」と言われます。経営も、同友会運動も一緒で、動きながら工夫する以外にありません。「金融アセスメント法案を充分に理解しない限りは動かない」のではなく、動いて、相手の方からいろんな話があったら、また勉強して、また説明する。それでどんどん利口になる。だから『動中工夫は静中工夫の百・千倍』と先人が言っているのだと思います。この金融アセスメント法案が実現するためには、福岡だけの1万名の署名だけではダメです。東京と大阪と名古屋と広島と、皆が頑張らなければダメです。力を合わせて中小企業家発、中小企業家の手による、日本始まって以来の法案を通していきましょう。
【文責事務局・内輪】