愛知同友会・第40回定時総会〈第1分科会〉
自立型企業づくり〜実践から学ぶ〜独自戦略で差別化を図る
佐藤祐一氏(株)羽根田商会・社長
会社概要
●設立1951年2月
●資本金9700万円
●社員数68人
●年商48億円
●事業内容:機械工具等卸
多品種少量の納入を可能にして
羽根田商会は生産財の専門商社ですが、その販売方法を一言で言えば、「高付加価値の商品を一流のお客様へ、手間をかけて販売する」ということです。カタログだけで売れるような商品は、当社はほとんど扱っていません。当社はメーカーとユーザーの間にあります。その特徴点は、直接仕入れ、直接売るということです。トヨタなどの「かんばん」への対応で、多品種少量納入を可能にしています。営業担当者は商品のカテゴリーごとに専業になっており、メーカー営業の代行のようになっています。また、感覚としては卸と言うより、小売に近いイメージでやっています。
30%のコストダウンの要請
次に問題点ですが、一番は『中抜き』という、商社を飛ばしていく発想が大きくなっていることです。私達のような中間業者の存在そのものが許されなくなってきているのです。このことをユーザーサイドから見てみると、コストダウンがポイントになります。トヨタが数年前から言い出した『世界最適調達』やマツダの『集中購買』、日産の『リバイバルプラン』もすべてコスト削減が目的です。トヨタは2003年までに30%コストを削減すると言っており、事実当社にはすでに昨年30%のコストダウン要請がありました。「ついて来られなければ、それでも構いません」、つまり「それならば、取引はしませんよ」ということです。実際に、当社が取り扱っているメーカーで対応することができないところもあり、購買の選抜からもれていった所もあります。
「中抜き」に対する明確な答えを
私達中間業者は、ユーザーだけではなく、メーカー(仕入先)からも選ばれる存在でなければなりません。しかしメーカーの本音は、「できれば直販したい」「自分で売ればもっと売れる」「昔は世話になったが…」というものです。30%のコスト低減と言われると、仕入れと売りの差益を中間業者に提供する余裕がなくなり、「そこをどいてくれ」という傾向が強くなってきています。これが現状です。私達中間業者は「中抜き」という事に対して、どう答えるのか、明確な答えが求められています。「何のために、ここ(中間)にいるのか?」「どこで役に立っているのか?」という事がはっきりと答えられなければ、存在し続けることはできないのです。そこでこの問いに対し、羽根田商会は次の3つの戦略を掲げています。
手間をかけて販売する
戦略の1つ目は、新商品を手間をかけて販売することです。私どもの社是は「お客様のコストダウンをお手伝いする」であり、次々に新しい商品を提案していかないと、お客様の要望には応えられません。「はじめにニーズありき」ということをまともに受けて、まず最初にニーズを探すということは、現実には非常に難しいことです。それよりは、まず商品を提案し、お客様を刺激することにより、本当のニーズを聞き出せれば、それでいいと考えています。そのためには、お客様の興味を引くに値する「よい商品」を持っていることが重要です。ユニークな商品を提案し、お客様の問題意識を刺激することにより、初めて本当のニーズを聞き出すことができると思うのです。営業においては何事もメーカー任せにせず、最後までお客様に寄り添い、テストにも立ち会い、「商品を手間をかけて販売する」。これが当社の強みだと考えています。当社は海外製品の直輸入を増やす方向でいますが、独占販売権に固執しません。スピードが重要視される中で、時間のかかる独占販売権の交渉よりも、早く契約し、早く販売を開始することの方が大切だと考えるからです。特に、海外のメーカーにとって、私達の「手間をかける売り方」と「スピード」は魅力的だと考えるからです。次に顧客としては、「大手顧客ねらい」を徹底しています。これは中小には売らないということではなく、どうせ売るなら、1つ売れればその後に何百個も控えている大手の方が後が楽ですし、社員のやりがいにもつながると考えるからです。
今日の注文を明日に納品
戦略の2つ目は、「物流を取りこむ、磨きこむ」ということです。「即納」「無理が利く」、つまり「安心」ということはお客様にとって大きな価値だと思います。「羽根田商会に頼んでおけば安心」、だからこそ買っていただけるのだと思います。現在は「即納」をキーワードに、物流の磨き込みに取り組んでいます。具体的には、すべてのものを「今日注文を頂けば、明日納品する」というもので、現在2社のお得意先で始めています。たとえ、お客様からの納期指定が5日後でも、注文翌日に納品します。それで怒るようなお客様はいません。その上、翌日納品が確立すると発注ロットが少なくなり、在庫も少なくなります。このサービスのおかげで売上も増えており、「即納」というのは強力な武器になると感じています。重要なことは、そのための意識改革と後方支援体制をいかにつくるかということです。次に「物流の取り込み」ですが、これは「メーカーにとって不可欠な存在になる」ということです。メーカーの物流の一部を取り込み、メーカーとユーザーが直取引をしたくても、弊社を使った方がコスト面、手間の面において有利だという状況をつくり出し、「はずそうと思っても、はずせない状況」をつくり出そうと考えています。戦略の3つ目は、「新しいマーケティングを展開する」ということです。弊社の営業で、最もコストがかかるのが、「見込み客を発見する」というプロセスです。ここをいかに効率良く行うかが課題です。現在では展示会やDM、ITなど道具を上手に組み合わせて使うことにより、できるだけ有望なお客様を手間をかけずに見つけることを考えています。
新しい収入源を開発
さて最後になりますが、「この業態は10年後には無くなるのではないか」と思っています。それを前提に将来を考える必要があります。まずは、現在のプロセスを合理化、コストダウンすることにより、既存の商品で固定費をカバーできるようにしたいと考えます。利益は新商品や直輸入品から得られるようにしたいと考えています。また、「買う側の論理」で会社の仕組みをつくり直すことも課題です。「お客様の心理」をもっと研究し、その視点ですべての仕組みをつくり直したいと考えています。さらに、現在の活動を自分達のノウハウとして確立し、コンサルテーションのできる人材を育てたいと思います。私達の経験をノウハウとしてまとめ、手数料として稼げるフィービジネスへ移行することをめざしたいと思っています。今後は、現状のビジネスをしっかり磨き込み、土台を固めつつ、「売りと買いとの差益」だけでなく、別の新しい収益源の開発にも取り組みたいと考えています。
【文責事務局・山田】