11月末景況調査結果を読んで〜各業界の動向を探る〜自立型企業支援室(事務局)
今回の調査結果の「概況」を踏まえ、事務局の「自立型企業支援室」では、さらに各業界の景気動向を聞き取り調査で行いました。
【概況】(要約)
景気下降続く〜製造業危機ラインに近づく〜
(1)景気下降が続く(底入れの目途が立たない状況が続く。業況が「よい」と回答した企業から「悪い」と回答した企業を差し引いた業況判断DI(今月の状況)は△33となり、前回調査に比べ1ポイント悪化、4期連続の悪化)
(2)製造業は危機的状況に近づきつつある(最大の要因はIT関連投資の失速)
(3)設備投資の鈍化に加え、内外需の縮小が景気に暗い影を(個人消費が大きな落ち込みを示し始める)(4)米国の景気後退も大きな懸念材料(同時多発テロを契機に個人消費の落ち込みへの連動、上昇し始めた失業率)
(5)小泉政権のさらなるデフレ政策
(6)金融面からのデフレ政策の深刻な影響(中小企業の金融環境の悪化)
(7)将来への不安を払拭するような政策措置を日本政府に求めていく必要性。
☆建設業〜季節要因の結果として
今回の調査結果では、他業種がほとんど下降しているにもかかわらず、建設業だけが「今月の状況」が「経常利益」「売上高」共に上昇しています。その理由は何か数社の会員から聞き取り調査を行いました。「思わぬ公共工事が入り今も忙しい」(電気工事)がある一方で、「忙しいのは、大きな工事が少なくなり、これまでと同じ売上を確保するには3倍以上の件数を取らなければならないから。社員の人たちは本当に忙しく夜遅くまで働いているが利益は少ない。11月が特にどうという事は思い当たらない」(総合建設)という話もあります。以下列記します。
●「11月というのは、年末までに終わらせるという工事が多い。これは毎年のパターンだが、それまでが悪かったから、余計に良いと感じたのではないか」(塗装)
●「確かに暮れまでは忙しかった。年末を控えての仮儒のようなものではなかったか。年を越えてからはパタッと仕事がない」(住宅設備)
●「10・11月は年末までという仕事を抱え忙しかった。それは年内に引越しをし、新しい家で新年をというお客様が多いため昔から完工は年末まで。着工は節分明けてからと言われている」(建設)
以上のように、昨年の11月に業界全体にかかわるような特別の材料があったという話を聞くことはできませんでした。業界特有の季節要因の結果だと判断します。【山田】
(2)製造業〜今までの努力が実りそう
明るい材料はなにも見当たりません。業況も経常利益もダウン予測をしながら、次期見通し(3カ月先)の売上高予測DIだけが6ポイントのアップを予想しています。現場での製造業経営者の声から背景を探ってみましょう。
●「仕事量が減ってきてから、新規取引先を開拓してきました。従来の取引先にも定期的に営業に周り、細かい仕事も確実に拾って歩いています」(鉄工業)
●「数社の協力で新製品・新技術の開発に取り組んでいた物に、一定の見通しが出てきました。しかも補助金が下りそうです」(部品組立加工)
●「取引先が、縮小方針だけでは生き残れないと、活路を検討していたのが形になりつつあり、受注できそうです」(機械部品)
●「個人から中国までの同業者の中で、当社の規模が狙える範囲を時間・量・単価・技術で設定しました。最近は、地区の仲間の協力で、物を持ってこなくても設計図をもらえれば、形にして塗装が済んだ状態で渡せる強みもできてきました」(塗装)
●「EUと中国が、環境問題(害虫の侵入防止)の観点で、荷物用のパレットはすべて熱処理が済んでいる合板と決めた為、輸出関連から思いがけない受注が来ています」(合板加工)しかしこれらの取り組みが利益という形にむすびつかなければ、新年度の後半には、人件費にも手をつけざるをえないと背水の陣をひいているところも、半数近くにのぼっているのが現状です。【服部】
(3)サービス〜狂牛病が猛威をふるう
サービス業ではDI値(今月の状況)が一昨年5月の6からやや変動はありながらも下がり、11月調査では△10になりました。12月始めの声をひろってみました。
●「個人消費も厳しいものがあります。売上がこれからの会社が多く、次の土・日がお歳暮の山か」(食品小売)
●「とても雰囲気が悪く年末の売上も余り期待できないと感じています。2月の様子は多分悪いと思います」(生花小売)
●「一部の事態で好調の業績もあるが、全体には厳しい。特に狂牛病による牛肉をあつかっている業種は(やきにく屋、ステーキ屋、牛丼、ハンバーグ、ハンバーガー等)は軒並み悪い。9月時点の動向は営業店全体で、売上△5.7、単価△1.8、実数△4です。悪いところでは、ファーストフードの売上△8.4、ディナーレストラン△6.2、ファミリーレストラン△5.6など、狂牛病は外食全般に悪影響を及ぼしているように思う。個々別にはたいへん好調なところもあり、実力差がどんどん開いている」(外食産業)以上のように狂牛病の影響で飲食関係の売り上げが大きく落ちています。ある焼肉レストランでは赤字覚悟で客を呼ぶために安売りを行っていたり、また売上減で同友会を退会する会員のケースも生まれています。次期見通し(3カ月先)のDI値が△34と大きく落ち込んでおり、一層の消費低迷が予想されます。【内輪】