02年2月末愛知景況調査を読んで製造業の実態を会員企業に聞く
服部朝子(事務局・自立型企業支援室)
2月末の愛知同友会の景況調査報告【概況】では、以下のように述べています。「建設業、流通業、サービス業の業況が依然として悪化し続けるなか、全業種で見た業況が若干の改善を記録したのは、製造業の業況改善が大幅であった(△54↓△19、35ポイント)ためです。35ポイントという改善幅は、いわゆるITブームの影響から大幅な改善を記録した99年11月期調査以来のことです。『売上高』『経常利益』についても他業種が悪化し続ける中、製造業のみが改善を記録しています」製造業の会員企業から現状を聞きました。
製造業の会員の声
(1)A社(省略化設備)海外進出した自動車関連で、進出先での設備投資に伴い、年が明けてからの受注が順調に推移している。
(2)B社(樹脂部品)東南アジアの現地法人から、設計への協力が要請されている。海外進出した日本の自動車会社が設計を含めて発注している。
(3)C社(樹脂成型)車がヒットするとフル稼働しても追いつかないほど大量の引き合いが来るが、単価は安く納期は短い。単発の仕事で終り、あとが続かない
(4)D社(電気設備部品)年明けからの3カ月は、年末の3カ月間の半分の受注しかない。電力会社は不況で投資を押さえていた。安全を期して年に一度は取り替えていた部品もあるが、それさえも修理して使うようになった。
自動車関連企業は
調査報告では、製造業に改善の兆しが見られるのは、「自動車産業(トヨタ)の海外設備投資、モデルチェンジ期が到来したためではないか」と指摘しています。自動車会社の系列が崩れ、部品の共有化が進行する中で「愛知だからトヨタ関連」という図式は成り立たなくなっています。トヨタで鍛えられた技術力がものを言って、他メーカーの仕事が取れるようにもなっていると言えます。しかし、大方は好調な自動車関連各社も、今後の内需についてはいずれも、『下降含みの横ばい』と答えています。好調なのは海外関連部門だけで、国内で部品供給に携わるところではより厳しさが増しています。
その他の製造業は
E社(醸造業)業界組合430社のうち、昨年24社、今期も25社が転廃業等で脱退。業界として立ち行かない。F社(縫製)この4年間で大量生産をしていた企業の3分の2が消え、残る3分の1も縮小・転業などで、元の姿がどんなだったかも分らない状態。G社(塗装業)官庁関係やホテルなどで修理を手控えていた備品や調度品が、修理しないと使えなくなってきた。まとめて修理に出るので、単価が安くても大きな仕事になる。これらの声にもあるように、すでに話が聞けなくなった業界組合もあり、日本の製造業は構造改革の真っ只中にあります。今から更に投資を押さえる業界がある一方、塗装業に見られるように、バブルがはじけて以降の節約が限度にきいます。それがまとまった仕事に結びつくとの話も生まれています。今まさに「企業倒産多発のなかで景気の正念場」を迎えています。