第34回全国総会・第19分科会
地域住民・消費者にとって「商店街」とは!?
商店街づくりの中でわかった理念の大切さ
牧秀和氏(株)マルマキ・社長一宮市本町通二丁目商店街(振)・理事
一宮本町通商店街、および130万人以上の観光客が訪れるという七夕祭りを紹介するビデオを鑑賞した後、本町通商店街の見学、そして「真清田神社」に会場を移し報告等が行われました。
まちづくりの主体は?
本町通商店街のアーケードは早い時期からつくられました。初代は1965年に、2代目は1971年に完成しました。その頃はまだ活気があり、商店街の皆が前向きで、素晴らしい建造物ができたわけです。当時、500メートルのアーケードは珍しく全国各地からの見学が相つぎました。しかし地場産業である繊維産業の衰退とともに、一宮も衰退し、現在では「陸の孤島」です。駅と真清田神社と中心商店街は大きな国道でぐるっと囲まれ、これはまちづくりをしていく上で、非常に不利な条件となっています。それでもこれまではバスターミナルがあったり、百貨店があったりと良かったのですが、それが1つ減り2つ減り、また交通体系も変化したりと、街としての形が大きく崩れてしまったわけです。過去に行政主体のまちづくりで失敗例がありますが、その責任は。行政主導でないと物事を進められない私達にもあるのだと思います。
新アーケードを建設する中で
当社はインテリアの販売が本業なのですが、商売柄景気が下がっていることを他社よりも早く実感していました。この時期にアーケード建て直しの話が起こりました。「景気の良いうちにやろう」ということでしたが、なかなか盛り上がらない状況でした。アーケードの下には150軒の店舗が集まっています。年商100円の店もあれば、家族だけで経営している店もあります。規模の差はあってもみんな経営者で、簡単には意見がまとまりません。費用面では共有財産という位置づけでの連帯責任の問題、完成までに何年も工事にかけていたのではお客様が逃げてしまうという問題などがありました。結果、やるという側とやらないという側に分かれました。すったもんだの末、アーケードは完成しましたが、私は完成後の方が心配でした。いったん逃げたお客様、一度狂ってしまった街の人の流れを取り戻すことの方が難しいからです。結果として、経営環境は一層悪くなってきました。
同友会で学んだ理念の大切さ
街の周辺には街を生き返らせようという人の集まりがたくさん生まれてきました。考えや発想は、全くバラバラですが、「一宮が好きだ」という人々が実はたくさんいたわけです。そういう人たちが空店舗を利用して何かできないかとやっているわけです。しかし、このような試みで商店街が本当に変わったかというと、残念ながら変わっていません。私たちに必要なのは意識の改革です。一宮が大好きでどうぞ来て下さいという気持ちにならないと駄目です。一宮に来てくれて、一宮にお金を落としてくれる、そうして一宮が発展していくという図式をめざします。先日、同友会の女性部会の会合に参加し、我が社のビジョンを聞かれましたが、言葉が出てきませんでした。本町商店街自体も、そういう状況なのかもしれません。明確なビジョンがなく、ビジョンを持って動くことが必要であることを学びました。再出発の為にも、商店街のビジョン・理念といったものを構築していくのが、自分達の仕事だと認識しています。
●中小企業家としてまちづくりにどう関わるか
井内尚樹氏名城大学経済学部・助教授(助言)
愛知県下の商業は凄まじい勢いで衰退
一宮本町通商店街を考えていく上で、まず愛知県は少し特殊であるということを指摘しておきたいと思います。全国どこの地方都市へ行っても、駅前の商店街は衰退しています。国としても「中心市街地活性化法」をつくり、街の中心部をもう一度活性化させようと考えています。今年3月末では460市町村が指定されていますが、愛知は22市町村で全国一番多いのです。いかに愛知県下の地域において、まちの中心部が活性化していないかの表れでもあるのです。愛知県やその他の地方都市の商店街は、京都や大阪に比べ、凄まじい勢いで衰退しています。地域産業であるモノづくりも商業もすべて衰退し、商店街もダメになっていますが、これは全国的な共通の問題です。
地域のビジョンとネットワークを
なぜ商店街がダメになったのかということを皆さんに聞きますと、自分の経営努力が足らなかったからであるという様なことを真正面から言う人はいません。しかし、どのように地域に関わってこようとしてきたのか、その地域をどのように守ろうとしてきたのか、どういうビジョン・理念を持っているのか教えて下さいというと、ほとんど何もないのです。中小企業家の皆さんがどのようなビジョンを持っているのかということが大切だと思います。まちづくりの主体者として、中小企業家がどのような関わりをもつのかということが大切な視点となってきます。こういった厳しい情勢の中で、アーケードに対する設備投資を行うかどうかという問題は、地域社会の共有財産という発想で取り組んでいけるかどうかです。自社の経営に責任を持つのは当然ですが、地域にも責任を持つことは大切です。そのためには地域でのネットワークをつくっていくこと、商店街という異業種ネットワークを組んでいく必要があるわけです。このように地域住民と共に活動していくことが大切だと思います。
●座長のまとめ
「学び方を学ぶ」これが同友会
福谷正男氏(資)豆福商店・社長
この分科会では、どこにでもある商店街のアーケード建設のプロセスから、経営者として大切なものは何だったのかを学びました。同友会活動の中では、いつでも誰からでも学ぶことができるということが確認できたと思います。また、以下のことが共通認識になったと思います。(1)まちづくり、地域経済の主体者は商店街、中小企業、地域住民であること。(2)会内外でネットワークづくりをすすめ、市場創造に挑戦するということ。(3)明確なビジョンを持つためには、その地域が好きであるということ。そこで商売していることを誇りに思うことが大切であること。(4)同友会の学びは「学び方を学ぶ」ということ。
【文責事務局・内輪】