「経営指針作成の手引き」発刊に寄せて〜社員との信頼関係構築がカギ
赤石義博(中小企業家同友会全国協議会・会長)
中同協では経営指針を確立する運動を進める中で、『実践的な経営指針の確立と成文化の手引き』を発行・普及してきました。昨年11月、時代の変化と経営指針運動の発展段階にふさわしい手引き書とするため、装いも新たに全面的に内容を改め、『21世紀型企業づくりの決め手〜経営指針作成の手引き』(A5判、64ページ、頒価400円、事務局まで)を発行しました。この内容や意義について中同協・赤石会長よりコメントを頂きました。
急激な時代変化の中で
私はこの数年、各地の経営指針セミナーに招かれ、各同友会の皆さんと一緒に学ぶ機会が増えてきました。そこで感じるのは、急激な時代変化の中で、経営指針を確立する、あるいは見直しをしようとの気運が急速に高まっていることです。企業そのものの存立基盤が根こそぎ崩壊しかねない状況にあるとの危機意識を持ち、改めて「わが社の存在価値はどこにあるのか」「どんな企業にすべきなのか」といった経営理念の根本部分を原点に立ち返って問い直すことが今、求められています。そして自社の商品・サービスが時代のニーズに合っているかを科学的に裏付け、企業の方向を定める経営戦略を再構築していくこと、これがまさしく緊急の課題にもなってきているのです。
「労使見解」に学ぶ
このたび中同協では、従来の経営指針パンフを全面的に改訂し、『経営指針作成の手引き』を刊行しました。このパンフは、時代の変化と経営指針づくり運動の発展にふさわしい内容となるよう議論を重ねながら作成されました。経営指針の3つの構成部分である経営理念・方針(ビジョン)・計画をそれぞれ分かりやすく解説し、作成に着手しやすい内容です。書き込み部分は拡大コピーして使える工夫もこらしてあります。とりわけ、経営指針づくりの基底をなす要素として『労使見解』に学ぶことを強調していることが特色です。これは、どんなに立派な経営指針を作成しても、その実践主体である社員との間に信頼関係がないと成果が現れないことが、経験上明白であるからです。労使間の信頼関係を確立する上で大切なことは、経営者の経営姿勢です。経営者の責任を明確にし、企業の未来像に社員の未来像を重ね合わせることができるような企業づくりにまい進する経営者の姿に社員は共鳴し、全力を発揮します。また新たに加えられた第5章の「経営計画の実践とフォロー」は、実践上の教訓に満ちています。愛知同友会は、70年代から経営理念の確立運動を全国に先駆けて提唱してきました。経営指針の確立と実践活動においても、全国の先導役となりますことを期待しています。