名古屋支部Cブロック(熱田、瑞穂、港、名古屋第3青同)合同地区例会11月13日
勝ち残る企業の条件〜混沌とする経済状況の中、生き残れる中小企業とは!

遠山昌夫氏菊水化学工業(株)・会長(愛知同友会・顧問、初代代表理事)
・・講師プロフィール・・
遠山昌夫氏1930年神戸市生。1959年菊水化学工業(株)の前身である菊水商事(有)を設立、2001年6月より代表取締役会長となる。
また1962年愛知同友会創立とともに初代代表理事に就任、以降理事長、副会長、会長の要職を歴任、1987年より会顧問となる。
・・会社概要・・
菊水化学工業(株)建築用塗料等の製造メーカ、創業1959年資本金13億9140万円、年商131億円、社員数380名創業以来から時代に先駆けて、水系塗料などの環境型商品を開発し、「社会性・科学性・人間性」を重視した一貫した経営姿勢を貫く。
1988年11月名古屋証券取引所第2部上場する。
●世の中の流れをどのように見るか
大変な不況です。この2〜3年、中小企業は相当腹をくくった経営が必要です。今、アメリカにどんどんお金が流れています。政府はフル生産で1万円札を刷っていますが、片方で「ペイオフやるぞ」と言ってからトータル70兆円程がアメリカに流れています。アメリカの株価は日本の金でやっと持っているようなものです。「ワールドコム」も計画的に潰れたという見方があります。日本やヨーロッパのお金ででき上がったワールドコムの設備は、アメリカに残されたわけです。アメリカは長期戦略といえます。物事を見る時は目先の問題ではなく、大きく見る必要があるということです。
●意を決し、越えた人が残る
弱者は必ず強者になります。キーワードは、(1)不易(変わらないもの・理念・人間性・歴史観)、(2)流行(環境適応・広い発想・法則・世界観)、(3)ソシオ(社会性)の3つだと思います。世の中は物凄い変化で、情報に振りまわされ、まわりの会社も潰れたり、ウロウロしていると、あっという間に自分の人生が終わってしまいます。人生は砂時計です。皆さんは何のために商売していますか?儲けるため?お金のため?しかし、お金よりもっと大事なことがあるはずです。私たち経営者は毎日猛然な勢いで人間的な勉強をしています。これからの不況を乗り切るには生きている間に何をするのか。そういうトコトンの開き直りが必要です。どのように命を使うか、自らの命を決して越えた人、そういう覚悟のある戦いでなけければ、上手に時代を突っきることはできません。私自身の体験ですが、28才で10万円から商売を始め、塗装スプレーの開発が当たり、調子にのって大赤字を出し、99%倒産しかかりました。同友会では威勢よく「やるぞ!」と大声を出していました。死ぬ苦しみが3年程続きました。その時は講演を聞いても上の空です。タコツボに入った状態で、自分のことしか考えていないのです。しかし、話の中にヒントがあるわけで、爪を立てても這い上がらなければなりません。高度成長期に入っても、ゴルフもせず、ひたすら研究開発をして、自分のポジションを徹底的に追及してきました。30年も経てば、何とかなるものです。船がいかりを下ろすように絶対に動かず、深く掘って掘って…、そうすれば必ず温泉は出ます。諦めたらおしまいです。
●ものの考えを広く持つこと
わが社では、アメリカの会社と協同開発した水系速乾塗料のウルトラドライや、貼る塗材のモダンアートは売れています。しかし他が売れず、ここ10年ぐらい売上は上がったり下がったりです。なぜか?最近ハッと気づきました。消費者サイドに多くの情報があり、買う、買わないという意志はそこにあるということです。そこですべてのカタログや売り方、仕組みを変え、新しいビジネスモデルをつくりました。スウェーデンではカルチャーショックを受けました。中心街のど真ん中、名古屋で言えば栄のルイヴィトンのあたりで、塗料店がスカッとした格好で営業しているのです。例えば看板屋さん。文句でなく、イメージ看板で美しい街づくりをするというモデルも考えられます。港区の中古車屋では、ゴミのようなパーツがどんどん売れて、たった三人で1億5000円の経常利益を上げています。車検はとっくになくなっての商売なのです。
●世の中で困っていることを真険に考えて
今、環境産業が注目されていますが、私は37年程前に、廃棄タイルを何とかしようと考え、リサイクルし、塗料原料にしました。また火力発電の残灰が風で飛んで知多の海苔が大変だというので、一緒に考えて、この残灰を塗料原料にしました。廃材は高くつくのですが、40年間これを使っています。また、グレープフルーツの種と皮を使った発砲スチロールを溶かす液体をアメリカで製造し、日本のスーパーなどに出しています。フルーツなのでまったく公害になりません。落書き消しや、アメリカでは機械の油洗いにも使われ、きれいに落ちます。時代に応じたことを早く考えて勉強し、仕事にすること(ソシオカンパニー)が大切です。早く手を打つことです。ほとんどのビジネスにあてはまると思います。用がなくても東京やパリに行ってみましょう。中国人やロシア人がお金をどんどん使っています。高価なルイヴィトンが売れ、億ションがキャンセル待ちになっています。なぜ、あんな高いものが売れて、皆さん方の良い商品が売れないのでしょうか?工夫が足りないと思うのです。もっともっと本気になって考えて、広く見渡し、理念を持って、思いつめなければなりません。「わしゃ負けんぞ!」、そういう時代だと思います。
●弱者は必ず強者になれる
この2〜3年はまず生き残ることです。潰れないようにすることが第一義です。では、何をしたら良いか。次の三つだと思います。第1はキャッシュフローです。多少金利が高くても、地域銀行から長期借入(短期ではなく)をして、資金と営業姿勢に余裕をつくることです。営業マンの足がビビッたら、売上は伸びません。多少のことは心しておくことです。第2にはキャッシュフローの範囲内で商売を組み立てることです。10億のお金があったら、その中で商売をすれば、絶対潰れません。そうすれば、お客さんと余裕を持った価格交渉ができます。最後は主要得意先の囲い込みで、リピーターを掴むことです。30%くらいの主要客先の売上が全体の80%をこえていたりするものです。弱者は寝ても覚めても徹底的に繰り返し考えます。「臥薪嘗胆」です。強者にはどこか油断があり、これがあるから入れ替わるのです。変えてはいけない理念を深く深く掘り下げ、広く広く世界と時代を見据えて、どんどん自分を変化させていく。そのことが未来を切り開いていくのだと思います。「『士魂商才』魂を売るな。わしゃ負けんぞ!」と、逆境の時こそ成長するのだと思います。
【文責事務局・加藤】