「外形標準課税」とは?(連載第3回)
与党税調で外形標準課税導入決定〜2004年4月から資本金1億円超の会社に
三林新栄三林総合会計事務所(緑地区)政策委員会「外形標準課税研究会」
2002年12月13日、与党税調は2003年度(平成15年度)の税制改正大綱を発表し、愛知同友会をはじめとする産業界からの強い反対運動の中、外形標準課税の導入を決定した。適用対象企業は資本金1億円をこえる企業に限定し、外形基準の割合も当初の4分の1となったが、地方財政を安定化させたいという総務省(旧自治省)の執念が、適用範囲を限定してでも導入に持ち込んだ結果といえよう。
今回の外形標準課税の概要
(1)適用対象企業資本金1億円超の法人(公益法人等を除く)
(2)課税標準課税標準(課税対象となるもの)は、従来の法人所得(所得割)に加え、法人の付加価値額(付加価値割)と資本金額(資本割)が取り込まれた。(イ)所得割所得の算定方法は現行通り(法人税法上の所得)(ロ)付加価値割付加価値=報酬給与額+純支払利子額+純支払賃借料+単年度損益の算式で計算されるが、報酬給与額には派遣労働者の派遣料の七五%も加えなければならず、また単年度損益は欠損金の繰越控除を考慮しない金額となっている。なお、報酬給与額の大きい一定の企業には控除額(雇用安定控除)が用意されている。(ハ)資本割資本等=資本金+資本積立金(いずれも各事業年度終了日現在。資本等が1000億円超の法人には特例あり)
(3)税率(別表参照)
(4)申告納付確定申告、中間申告は現行通
(5)適用期日2004年(平成16年)4月1日以降開始する事業年度から適用
将来的には中小企業も対象に
今回の導入では事業税の総税収は変わらないとされているが、黒字法人には減税、赤字法人には税負担増という構図となっている。大部分の中小企業は資本金1億円以下なので今回の導入は免れるものの、愛知同友会会員企業の約四十社が適用対象となり、減資等の対策をとる動きも出てこよう。また、今回の税制改正における消費税法改正により、免税業者や簡易課税制度といった中小企業向けの特例適用事業者の範囲が大幅に縮小された。(2004年4月以降適用)このことからも推測されるとおり、将来的には外形標準課税の適用対象企業に多くの中小企業が取り込まれる可能性が非常に高いと考えて良いものと思う。
黒字体質の企業づくりを
さらに、これまで税務調査といえば所轄税務署または国税局の調査であったのが、外形標準課税適用対象企業には今後は新たに県税事務所の税務調査も別に入ってくる可能性が高く、企業の時間的・精神的負担も増えるものと思われる。また今後の経済状況や地方の財政状態によって、外形標準課税の適用企業の範囲が一気に拡大することは十分考えられる。今後も息の長い反対運動を続けていくことが大切なことはもちろん、一方で、黒字体質をめざした「自立型企業づくり」が求められている。