名古屋支部1月27日「新春賀詞交歓会」に450名
「人から出発する企業」とは
1月27日、名駅の「名古屋マリオットアソシアホテル」で今年3回目となる名古屋支部「新春賀詞交歓会」が開催され、33名の会外経営者を含め450名が参加しました。冒頭、加藤明彦名古屋支部長は、「厳しい経済環境の中、同友会運動と企業経営を一体化し、企業体質を高めていく活動をしています。支部では経営指針の発表会を年一回、各社で開催しようと呼びかけています。飴会長のお話はこの経営指針を実践し、すばらしい業績をあげられています。しっかり学んでください」と挨拶しました。記念講演では「人から出発する企業」をテーマに、コーセル(株)(2000年五月東証・名証1部上場、本社・富山市)の飴久晴会長にお話いただきました。飴氏は「何が自社の強みと弱みか明確になっていますか」から、「問題点を洗い出してそれを潰していくことにより、無駄をなくし利益が出てきます。真の原因に当たらなければ、問題点の解決はできません」と語りました。また「成功のカギはヒューマン・スキル(対人関係技術)の部分に力を入れた人材育成です」と話されました。講演後の賀詞交歓会では、ジャズの生演奏もあり、出席者は和やかに歓談し、当日はその場で6名の方が入会されました。

「人から出発する企業」飴久晴氏コーセル(株)取締役会長

講師プロフィール
飴久晴氏
コーセル(株)取締役会長1942年生まれ。富山県立高岡工芸高校卒業。69年エルコー(株)(現コーセル(株))を設立する。94年株式店頭公開、99年東証・名証第2部に、2000年5月に東証・名証第1部に上場する。
●従業員数331名
●資本金20億5500万円
●年商144億
●事業内容直流電源装置の製造
●本社富山市
自社の問題点は何か?
当社は直流電源装置の製造・販売をしている会社です。当初、商社的な仕事をしていましたが、第1次オイルショック後の不況の中、お客さんから「得意技は何か」と聞かれ、何も答えられませんでした。これをきっかけに、徹底的に焦点を絞り込み、経営資源を集中して「得意技」を持つことと、自社製品を持つことに真剣に取り組み始めました。また学歴や血縁に関係ない、能力のある人間が、いい仕事をできる会社づくりをめざしてきました。今、企業の70%が赤字企業だと言われます。赤字会社も努力をすれば黒字にすることはできますし、黒字の会社も今よりもっと利益を出すこともできます。そのためには、まず自社の強みと弱みを掴むことです。問題点のない企業などこの世にありません。自社の強みや弱みは明確になっているでしょうか。問題点を洗い出し、それを潰し、無駄をなくしていくと、利益も出てきます。真の原因にぶち当たらなければ、問題点の解決はできません。結果管理でなく、プロセスを管理することで解決策が出てくるのです。
全社で目標を共有
目標を全社で共有し、社員全員に数字を公開しているでしょうか。会社の在りたい姿は提示されているでしょうか。「店頭公開したい」「上場がしたい」ということをトップが思わなかったら、その会社は絶対にそうにはなりません。5年後、10年後にこうなりたいという目標を明確にすることで、社員はその目標に向かって提案してくるのです。大きなビジョンや夢を描き、それに具体的な計画をたてていきます。見える部分と、見えないが到達したいワンランク上の部分を分けて、この2つをうまく組み合わせると、社員のものの見方も変わってきます。
経営者の仕事とは
社員が2、30名の会社というのは、トップから社員一人一人が直接よく見えますので、つい、「ああせい、こうせい」と口を出してしまいます。すると、部下は『指示待ち族』になってしまいます。「言われた事しかやらない」と社長は不満を持ちますが、社員が言われた事しかやれないような環境を、社長自身がつくっているのです。社員は自らが「こうしたい」と選んだことは、どんな事をしても良い結果を出そうと努力し行動しますが、社長が口を出し過ぎると、部下は育ちません。企業というものは、トップを乗り越えてくるぐらい部下が育ってこないと、発展していかないのです。

利益の上がる会社づくりとは
企業の原点は、「入るを計って、出ずるを制す」ということです。新製品を売り出したいという時は、広告宣伝費や出張旅費をかけて販売活動を展開しますが、逆に売れないとなると、広告費を抑え、交際費などを抑えます。時々の経営環境でどちらに軸足を置くかは経営者の判断で、入ってくるお金よりも、出て行くお金が多ければ赤字になります。こんな小学1年生の引き算がまともにできないような経営者が、100人中70人もいるわけです。赤字企業が70%あるということは、そういうことです。わが社は、一昨年5月に売上高経常利益29%を計上しました。昨年はITバブルがはじけた影響で16%、今年は23%ぐらいです。私の理想の会社は、社員(パート含め)400名で売上200億、売上高経常利益は30%です。400人で売上200億をやるには、1人あたりで売上5000万です。この判りやすい数字で部下に語りかけていく、社内に繰り返し、繰り返し語りかけて行く。とにかく、判りやすい言葉が一番です。不必要な横文字を使わず、部下の誰もが絶対間違えずに、理解できる言葉で語ることです。
人材育成への取り組み
いかに人を育てるか、これは任せることです。私が社長を辞めたのも、後任者を選ばなかったのも、立場が人を創ると思ったからです。任せるということは、がまんすることです。途中で口を出してはいけません。口を出すくらいなら、最初から「任せる」と言ってはいけません。人を育てるには、10年という単位で考えてください。高い費用の掛かるセミナーに出しても無駄です。TQM(TQC)や統計解析手法の勉強、QCサークル等を繰り返し、繰り返しやる。わが社では新入社員が入ってきたら必ずやっています。TQCがブームだから会社が取り入れようとしているのではないんだと気づき、自分達が仕事をするツールとしてベーシックなんだと思い込んだら、真面目に勉強します。トップの堅い決意がなかったら、社員はいいかげんになってしまいます。
ヒューマン・スキル
わが社では技術を高める研修と、対人関係技術(ヒューマンスキル)を高める研修を17年ほど続けています。組織というのはつくったその日が一番新しく、翌日からはどんどん古くなっていきます。組織が部門の壁が人を縛り、人の能力をどんどん押さえ込んでしまいます。ほとんどの仕事では、対人関係技術が必要です。他人も自分も認めあえる部分をどんどん拡大していくことで、集団での仕事が非常にしやすくなります。当社での例を1つご紹介します。研究開発部門を例にしますと、その部門が必要とする業務内容(スキル)を20〜30項目洗い出し、部員とスキルのマトリックス表を作ります。そのマトリックスに「○、△、×」で部員とスキルのレベルを書き込んで、スキルマップを作成し、課内なり部内に振り出します。そのマトリックスによって部員一人一人が、現在の自分の能力と不足しているスキルが何か良く判ります。その他に、スキルに必要な知識や情報を知識マップとして作っています。これは部員の能力を可視化する事によって、自分の不足技能を明確化し、いつまでに、どのスキルを向上させるかが個人の目標となります。上司が部下に頑張れ頑張れだけでは、掛声倒れになってしまいます。
コスト・リダクション
さて、コストには2つあります。1つは原価。もう1つは固定費。その2つをどのように減らして行くか。考え方も2つあります。1つはゼロリセットです。無くそう、やめようと云うことです。たとえば約150人の従業員に1日3回お茶を出すと16時間掛かっていることが判り、これを止めました。C・R運動を始めたころ340人の社員から、約600件の提案が寄せられ、このうち、100件が100万円以上の効果提案でしたので、約3年かけて16億ほど減らしました。今まで業況が良かった時でも、17%が最高だった売上高経常利益率が29%まで増えました。もう一例を申しあげますと、「社長、副社長、専務が会社の車で通勤している。これを個人の車で通勤したら、100万円以上会社が儲かるはず」という提案がありました。「来たか」と思いましたが、私はそういう意見を出せる雰囲気をつくれたことを、とても嬉しく思いました。さっそく実行し、100万円をはるかに超えました。こうして徹底的にやると、意外と企業には無駄があるものです。これは無駄ではなく、会社の問題点です。問題点の多い会社ほど大きく変身できるということです。問題点は宝の山なのです。

中小企業が日本を救う
日本は資源のない国です。真面目でレベルの高い労働力が、外貨を稼ぐ唯一の財産のはずです。にもかかわらず今、学生達の就職先がありません。今後がとても心配です。これからの日本が蘇るとしたら、その主役は中小企業でしかありません。大企業ではできない雇用の拡大が中小企業ならできます。これからは中小企業の時代です。同友会の皆さん方の中から、良い会社がどんどん出てくることを願います。