愛知県中小企業研究財団創立十周年のつどい3月27日
9・11と「アメリカの自由」有賀夏紀氏(埼玉大学教授)
3月27日、「研究財団創立10周年記念のつどい」が行われました。この財団は、中小企業経営の長期戦略に役立つ研究を行う目的で93年3月18日に設立、これまでに海外視察2回、国内視察1回、書籍の出版7冊、その他研究会活動などを展開しています。今回はいまイラク問題で最も注目を集めているアメリカについて、その歴史を研究しておられる埼玉大学教授の有賀夏紀氏に「アメリカを考える〜9・11と『アメリカの自由』、愛国心」と題してお話ししていただきました。
「大衆消費文明を享受する自由」
20世紀初頭のアメリカは、自国の文化を世界に広めようとしていた。その文化は何かというと、民主主義と資本主義が一体となって推進する大衆消費社会であり、弱肉強食は悪ではなく、むしろ合理性のあるものとして社会進化論と言われていた。人種問題では、黒人と白人を分離してもそれは平等であるとされ、白人・中産階級・男性が主導する社会であった。しかし1960年代以降、ベトナム戦争、女性解放運動、黒人開放運動などの影響で、価値観は大きく変化し、保守派も認めざるを得ない状況になった。9・11事件が起こった時、ブッシュ大統領は「アメリカの自由が攻撃された」と言ったが、ではその自由とは何か?それは日本人が考える『言論の自由』とか『結社の自由』という精神的なものだけではなく、『大衆消費文明を享受する自由』という物理的物質的自由である。その意味で、グローバル化した世界資本主義の象徴として「世界貿易センター」が攻撃されたということである。今イラク戦争に賛成する側も反対する側も、『愛国心』と騒ぎ立てるが、この愛国心がどこから生まれてくるかを考えると、アメリカは唯一大きな戦争で本土が被害にあっていない国であることをしっかり見ておく必要がある。