第31回青全交・第3分科会9月12・13日(青森)
始まりは経営指針づくり、そして人づくり
〜太田電工社スピリットと「喜働経営(きどうけいえい)」〜
太田厚氏(株)太田電工社・社長(名古屋第1青同、2代目経営者)
9月12〜13日、青森市で第31回青年経営者全国交流会が開かれ、全国42同友会から704名、愛知同友会からは青年同友会を中心に65名が参加しました。また第3分科会では愛知同友会の太田厚氏(名古屋第1青同)が報告しました。
同世代の仲間に刺激を受けて
大学卒業後、大手家電会社に就職し、5年後に太田電工社の2代目として入社しました。当時、社員数5名の家族経営でしたが、現在では社員11名となり、電気工事とネットワーク工事の両方ができる会社として、お客様に喜んでいただいています。家業ゆえの情報量不足で、業界情報や人育てについて、教えてくれる人が欲しいと思っていた折、取引先と友人の2人から「自分と同年代・同業の人が頑張っている」という話を聞き、入会を決意しました。しかし、最初はひねくれた見方をしていました。そんな自分を「それではいけない」と親身になって指摘してくれる仲間との出会いがあり、同友会が好きになっていきました。
経営指針研究会に参加
同友会で出会った経営者から、何度も「経営指針」の話を聞くようになりましたが、自分のような小さな会社では必要ないと思っていました。その頃「経営指針研究会」が立ち上がり、周りの勧めもあって参加しました。最初の頃の経営理念づくりは「良い言葉を選ぼう」と言葉ばかりをいじくっていました。そんな時、工事を行っていたある取引先ビルの清掃員の部屋に、「お客様の環境をいつも清潔にすることで、全ての方に喜んでいただけるように努力いたします」という理念と、当たり前だけど分かりやすい行動目標が掲げてありました。本当にやりがいをもってやっていることが、清掃員から自然と伝わってきました。「ああ、こういうことでいいんだ」と思いました。本気で経営指針を成文化しようと思った瞬間です。
「小さな仕事を断わるな」
先代の社長とあらためて自社について語り合い、先代が大事にしている「大きな仕事を断っても、小さな仕事を断るな」という考え方について話をつめていきました。これが太田電工社の「心」なんだなと思い、「太田電工社スピリット!」ということで、経営指針書に盛り込みました。社員からも「小さな仕事を断らない意味がわかった」と言われ、文章化する大切さに気づきました。また経理の勉強もしたり、優れた経営者からのアドバイスで自分に足りないものを気づかされたり、素直な自分が出せるようになってきました。周りからも、「お前、変わったな」と言われるようになりました。
社員が、会社が、「報連相」で変わった
自分自身は変わりましたが、人をどう育てたらいいかは分かりませんでした。そんな時、やはり会員から「報連相研究会」を勧められ、幹部社員といっしょに参加しました。そこで自分はあえて彼に何も指示せず、任せるということにしました。中間発表では真っ白になってしまった彼も、最後には堂々と全員の前で発表できるようになり、「自分を変えられた」とも言ってくれるようになりました。社内での取り組みも変わってきました。ホワイトボードの設置や工事の仕様書を全社で公開することで情報を共有化し、お互いの行動がつかめるようにしました。社員が自主的に大変な現場へサポートに行くという風土もできてきました。また、それまで自分を介してやっていた取引を社員が直接お客様と行うようにして、やりがいと責任感、存在価値を社員が感じてくれるようになりました。「報連相」というキーワードによって、こうした環境が自然につくられ、自社の強みになってきたと思います。
経営指針は企業の道しるべ
当社の経営理念は「人から求められ続ける会社」です。社員の個性を伸ばし、それが会社の目標達成につながっていく、その道しるべが経営指針なのです。「できない」と否定していたこと、これは自分の作っていた「壁」でした。これを取りはらうことで、さまざまな成果が生まれてきます。同友会での仲間との出あいやアドバイスが本当に大きな影響を与えてくれました。今、社員は「会社が本当に楽しい」と言ってくれていますし、お客様からも評価を頂いていおり、私自身も今、本当に楽しいのです。
【文責 事務局・政廣】