広報部10月23日
経営と文化を考える
李末竜氏グラススタジオバルト・社長(瀬戸地区、「楽創会」会長)
経営能力プラス豊かな感性を
「経営者は総合的な能力を持とう」と言われていますが、この総合的とは「経営能力プラス豊かな感性」だと思います。そのためにも文化や芸術に目を向けることで、今まで見えてこなかったものが見え、新たな経営戦略や各自の人間力アップになると考え、李末竜氏に「経営と文化」について語っていただきました。李氏は県立瀬戸窯業高校卒業後、ガラス工場で技術を習得し、愛知県で初めてガラス工房を開きます。作家活動の傍ら英国美大ガラス科へも留学、その後も多くの展覧会に入選。98年同友会に入会します。現在作家活動で培った美的センスで、街おこしや古民家の再生、更に店舗企画アドバイザーとしても活躍されており、会社も吹きガラスやジュエリーの体験型企業として進化を続けています。これらの仕事は工房運営力を向上させるため、同友会活動で学んだと言います。「受身の姿勢から仕掛ける企業に、個々の持つイメージを形にすることこそ自身の才能を発揮するエリアだ」との想いで、イメージを形にする体験型教室や再生企画など、新たな事業も展開しています。なお「スタジオバルト」の名前の由来は、北欧バルト3国のバルトで、これらの国では特に代々ガラス道具を大切に使うということを意味しているそうです。
「夢中力」を蘇らせよ!
一人一人が自分だけのものを持ち、少々値が張っても気に入ったものを大切に長くという人が増えてきています。中小企業が量産品で勝負する時代から、丁寧に仕上げた良いものを消費者に供給する企業に変化していく過渡期です。私たちの生み出していく商品は個性的で夢のあるもので、エンドユーザーに愛着を持って扱われる必要があります。経営者は社員と共に、常日頃から絵画や音楽といった文化に接し、豊かな感性を磨いていかなければ、エンドユーザーの気持がわからなくなっていきます。足元の野の花や街角の古びた木製の看板など、日頃気にとめないものにも目をこらしてみてはどうでしょう。きっと今まで気づかなかった発見が、忘れかけていた少年時代の「夢中力」が蘇ってくるはずです。これが豊かな発想に繋がり、新たな自社の創造へとつながります。
茶の湯の心得なくして商人にあらず
安土桃山時代の経営者といえば堺の商人で、「茶の湯の心得なくして商人にあらず」と言われていました。お金は儲けても文化が理解できない商人は、一人前の商人と認められませんでした。ここから建築、造園、陶芸や書画、懐石料理など多くの個性的な日本文化が発展し、今なおその真髄が追及されています。ホンダの本田宗一郎氏、ソニーの井深大氏や盛田昭夫氏、ナショナルの松下幸之助氏のように、文化・芸術を理解し、自身の夢(ロマン)をも実現された「今商人」がいます。私たちも先人の偉業を教訓に、豊かな感性を養いましょう。また、文化は人が生きていくためのビタミンです。広報部は同友会活動の円滑な運営を促す情報発信基地として、同友会のビタミンとなるための生きた情報を、「同友Aichi」を通じ発信していって欲しいと思います。
感想(グループ討論)
☆主人が素人芸術で展覧会に出展するようになり、内面的にも変わってきた。☆常に意識してアンテナを張ることが大切で、どう生かすかもセンスである。☆自分は時代がたった構築物や道具が好きで、建築作品にも生かしている。☆今まで同友会の例会は、ややマニュアル的に傾いていたが、李氏の話を聞いて、自分を見つめなおすことが必要だと気づいた。
(有)庭よし柴田義博