「わが社の『未来』は、同友会でつかんだ」
平沼辰雄氏潟潟oイブ・代表取締役(愛知同友会・副代表理事)
11月17日には尾張支部、19日には東三河支部設立準備会が今年2回目となる「経営者の集い」(増強講演会)を開催し、ともに増強推進委員長の平沼氏((株)リバイブ社長)が、「わが社の『未来』は同友会でつかんだ!」のテーマで報告しました。
なんとかしなければ…
私は大学を卒業して、父親の経営する会社に就職しました。当時は、土木の下請け工事をやっていました。経営者の息子という立場でしたが、朝から晩まで現場ばかりやっていました。土木工事は雨が降れば休みですし、下請けですから、元請けから下りてこないと仕事もないわけです。それでも長いこと続けて来ますと、「何とかしなければ」ということを少しずつ考えるようになりました。しかし、何をどうしていいのか分からないまま、毎日を過ごしていました。そんな時、1つ下の後輩から誘われて、同友会に入会しました。最初は経営指針だとか、理念だとか言われても理解できず、「この会は俺には合わないかな」と思うようになり、自然に足も遠のきました。ところが、私はこういう体格で元気もあるし、「一度まな板に乗って、例会で報告をしなさい」と地区会長から言われて、入会して4年目で初めて経営体験の報告をしました。その時は「仕事をやっても面白くない、近隣からはクレームばかりで、汚いし、元請けさんからは値下げの要請ばかりだし、やってられない」という報告内容でした。
あなたの会社の存在意義は?
その時、ある会員の方から「クレームがあるんだったら、クレームを無くすことを考えろ」「他社と一緒のことをやっていれば安い方が当然いいのだから、発注先に仕事を買わせろ」などの率直なアドバイスを頂きました。頂けば当然、問題意識が芽生えます。その問題をどう解決したら良いか、ということで、経営指針成文化グループに参加しました。最初のオリエンテーションで「あなたの会社の存在意義は何ですか」と言われた時、私は答えられなかったんです。自分の会社が何のために存在するか答えられなかった。そんな状態でしたので、またまた強い衝撃を受けることになりました。そんなことを経験しながら5年ほどかかって、経営計画と戦略ができました。「できた」ということで、喜び勇んで社員に発表しましたら、反応が冷たい。後ろを向いている感覚なんです。何かが足なかったんです。これは、後で分かったんですけど、社員の意見を全然聞いていなかったんです。目標を達成できたときにはどうなるか、会社の将来はどうやって作るのか、そういう話もしていない。ただ経営指針という「形」だけをつくったんです。ですから、誰も聞いてくれなかったんです。
若い社員と会社の未来を
そうこうしながらも、当社の体制も徐々に整って参りました。それまでは、現場上がりの人間や中途採用の人間を入れてやっておりましたが、「私たちと考え方を共有し、会社の将来を担う人間が欲しい」ということで、同友会の共同求人活動で新卒第1号を採用しました。当社もまだ未熟ですから、入っても辞めていく者もいますが、順次採って来ました。そういう中で、新卒を中心に「21世紀を見すえて、これから会社をどうして行こうか」ということを話をして来ました。その1つが社名変更です。今の「リバイブ」という名前には「回復する、復元する」という意味があります。今、自然はかなり壊れています。それを「自然環境の回復・復元に挑戦し、全循環型社会の実現を目指します」という言葉で、当社の存在意義をあらわしました。それから、強靭な経営体質づくり。当社も10年前は私の妹が経理をやっておりまして、極端に言えば、ドンブリ勘定の経営をやっていたわけなんです。それで、今の経理部長をスカウトしました。その時に「公私混同をせず、税金を納めて残りを内部留保としてきちんと残して、強い会社にしたい」ということで、身内を経理から外して、二人三脚で進めてきました。10年経って、当社の自己資本比率は60%を超えました。
地域から信頼される業界に
私は今、同業者に同友会を勧めます。各社が良い会社にしながら、良い人材を入れて、社会から認められる会社にし、業界全体が変わらないと、私たちの位置づけも変わらないんです。世間から見ると、解体屋とかゴミ屋とか言われ、「さん」もつかないのです。これではダメでしょう。「業界全体のイメージを良くするためにこの同友会に入って、一緒に勉強しよう」ということをよく言っております。今、新しい処理プラントを作るために、住民に説明会を開いています。どんな仕事をするにしても、地域から信頼されなければ、「あそこは何やっとるかわからん」と言われるような企業ではダメなんです。私たちの会社の考え方を、実践していく姿を地域に見せなければ信頼していただけません。ですから、地域の一斉清掃日には一緒に掃除をしたり、地域のお祭りがあれば寄付金を出したり、そうしながら地域とコミュニケーションを進めていく中で、やっと少し前進がありました。新しい施設を作るために住民の同意が必要ですが、その時に、地域住民に「皆さんの同意を100%得られるように頑張ります。当社の理念に反することはしません」と腹をくくってのぞみ、「皆さんに一〇〇%理解していただいて施設をつくりたい」と説明しました。反対者は絶対にいると思いますが、おかげさまで自治会長6名の連名で、区長も含めて同意を頂きました。「100%じゃないけれど、リバイブがやることは理解したよ」ということです。ようやく一歩前進しました。こういう長い時間をかけて「あの人たちはうるさいな」と思うのではなく、私たちがどう地域の人たちの声を聞き、どういうスタンスでそれに応えるかということをやらなければ、地域では認めてもらえないということなのです。私はいつも夢を見ます。自主的で、民主的で、連帯感を持った組織ができれば、素晴らしい組織、素晴らしい会社になる。そう思いながら、今後も同友会でも頑張っていきたいと思います。
【文責事務局・井上一馬】