第34回全国研究集会(静岡)
2月13・14日
第14分科会
エントロピー豊明の産学連携、商品開発〜自主・民主・連帯の精神を生かして〜
石井正己氏東海EC(株)・社長(豊明地区)
●設立一九五六年
●資本金一億円
●社員数百五十名
●年商三十一億円
●業務内容自動制御装置設計製作、電気設備工事、電装工事
新しいビジネスモデルの創造
「エントロピー豊明」は、1995年に10社で立ち上げた同友会会員による異業種メンバーのグループで、現在30社が参加し、共同開発を行っています。このグループを運営していくにあたって、「開発型異業種交流の成功例をつくる」「活動を通じてメンバーがコーディネーターとしての資質を身につける」、さらに「この交流グループをネズミ算式に増殖させる」などの目的を掲げてきました。96年の発足当初は、「ひとつのテーマをみんなで考えていく」という方式で、「鉄筋加工組立の省略化製品」や「ダイオキシンの出ない完全燃焼する焼却炉」などの開発を行ってきました。99年からは同時並行でいくつかのテーマに取り組むようにもなり、大学などの研究機関も巻き込むようになりました。そして、国立豊田工業専門学校と共同開発したのが、『パワーガード』です。この製品は東南海大地震が予測される中で、木造住宅の耐震補強用具として生まれたもので、安全と安心をキーワードにしています。仲間である3社が製造メーカー、技術サポート、総販売元をそれぞれ担当し、資金的、時間的な問題を分担してスタートしました。今後の事業展開としては、新しいビジネスモデルの創造として、「キチン・キレイ・テイネイ」という本物志向のネットワークづくりをすすめていこうとしています。行政からは「中小企業経営革新支援法」の認定を受け、助成金を受けられるまでなりました。金融機関も大変関心を持ち、この事業に限り、別枠で支援すると言ってくれるようにもなりました。
「共に創る」がテーマ
今なぜ、産学連携なのでしょうか。情報や技術、資本がインターネットを通じて、世界中を瞬時に駆け巡り、学問的に充分裏づけられた技術が、中小企業でも要求されるようになりました。高度な専門化という産業界のニーズ、環境や利便性といった社会のニーズ、先進工業国を維持させるという国家のニーズが相まって、産学官連携をせざるを得ない状況になってきたのです。98年に大学等技術移転促進法が、国の積極的な働きかけで制定されました。これによって大学等の動きがかなり変わりました。私たちにはできない「科学」の研究ができ、企業側はマネジメントや戦略的な知恵を出せばよく、そのことにより資金面でも展望が開けてきました。しかし、各研究機関の敷居が低くなったといっても、各大学ごとには相当の温度差があります。エントロピー豊明では、地元で近くの大同工業大学内にラボ(研究室)を借りています。開放的で開発費も安いのです。豊田高専自身も地域拠点をめざして、「地域共同テクノセンター」を設置しており、私たちもその共同開発の仲間として、いろいろな機会に招かれています。企業としては、大学と連携により、優秀な人材確保につながる事もありますし、開発の相談もしやすくなるというメリットも生まれます。
互いに成長できる信頼関係づくり
同友会理念で結ばれた信頼関係は、お互いに顔が見える関係なので、もたれ合いになりがちです。そこで、はっきりすべき事ははっきりしておく必要があります。具体的には資金的な問題、パテント関係や契約関係などを馴れ合いにしないことです。お互いの目的に沿った形にしながら、時代に適合する経営スタイルに革新していくということです。本音での話し合いができる人間関係で、お互いに成長しながら自己責任で相互に契約し、しかも自主と連携の最適化を図りたいと思っています。また約束事や運営問題をルール化することで、逆により信頼関係が確かなものにもなります。「入りを計り」「出を制す」ということは私達経営者が常に考えていることです。「春よ来い!」と春を待っているだけの「春待ち症候群」では、「出を制す」ばかりで、「入りの戦略」がありません。例え景気が良くなり春が来ても、景色は決して一様ではないと思います。私達は新しいビジネスモデルを追求していますが、このモデルの中に「楽しさ」というものを入れない限り、共同開発は成功しないと思います。
【文責事務局・山田】
◎本分科会の詳細は、5月下旬に発刊される「中同協誌bV2号」(中同協第34回全研特集号)に掲載されます。ぜひ、ご覧下さい。